オマケ
「ねえねえ、ちょっと考えたゲーム…ゲーム?まあとにかく、考えたのがあるんだけど聞いてくれない?」
庭先で毛布を干していると、元気のいい子が来た。好奇心の塊、サウィンである。
「あなたの魔導書と棚を見て思いついたの。題名は思いつかなかったので、置いといて…」
どうも名前は重要ではないらしい。
「ゲームの説明をするわ。プレイヤーは召喚者となります。召喚されるものたちは魔導書に記されている。その他にカードを持っていて、その両方を使います。プレイヤーはそれぞれ自分のダンジョンを持っています。ダンジョンの効果は、そこに保管した持ち金を増やし、アイテムのグレードを上げることです。それには時間がかかります。また、ダンジョンの外から金やアイテムを求めて敵がやってきます。そこであなたは、ダンジョンにモンスターを配置し、カードを駆使して戦うのです。また、こちらから相手のダンジョンに踏み入って金やアイテムを奪い取りにかかることもできます。あとゲーム内通貨はリアルマネーで買えます。概略はこんなところ」
「長く置いておけばリターンが増すがリスクも高まるということか」
「そうそう、重要なのはプレイヤーがゲームに参加中でも退席中でも時間が進むということ。参加中にできることは、MPを消費してクリーチャーの召喚と配置、カードを引くことね。カードについては20枚のデッキに初期手札5枚、最大6枚まで持つことが出来ます。戦闘に入ったモンスターに手札の強化カードを使用させて戦わせることができます。手札は使えば減るものの、参加中であれば補充可能です。退席中は自動で最適な手札を使うものの、補充ができません。それと、退席中はMPとデッキが回復していきます」
「必ず危険にさらさないといけないわけか…」
「しかしお金を払ってMP回復薬を買うこともできます。デッキも復活させるアイテムがあります。なお、お金もアイテムの一部も新しいクリーチャーやカードを買うのに使えます。…何が入っているか分からないランダムのパックをね。ダンジョンから出ればパック購入やデッキ構築が出来ます。ダンジョンは一時的に立ち入り禁止となるけど、何か置いたままじゃないと出られない条件があります」
「運試しか…、まあ、それくらいが盛り上がるかもな」
「モンスターの特徴だけど、攻め込みにくい能力を持ったものもいます。例えば、戦闘終了時に何か効果があるもの…受けたダメージに応じた金が手に入ったり、相手の手札を破壊したり、ステータスが成長したりと仕留めそこなうと困る能力です。戦闘時に相手が手札から装備カードを使って生き残らせてしまうと…と思うと迂闊には攻められないので、迂回して別ルートに行く選択肢も出ます。もちろん、読み合いを制して突破することも。他にはステータスが不安定で、確殺にはこっちも攻め札を使わないといけないとか、物理攻撃が通らないので魔法攻撃を付与しないといけないとか、そういうものもいます。これらを駆使して守ったり奪ったりの戦いを繰り広げるのです」
「相手が参加中か退席中か分からないのか?」
「もちろん。分かっていたら、今は攻めるのやめよう、今は攻め込もうとなって面白くないでしょう?どちらか分からないから冒険心をくすぐると思うわ」
「ふーん、このゲーム一番重要なところは何?」
「継続的にプレイさせるところかな?」
攻略に関する方かと思ったら運営の方の答えが来た。
「娯楽って目移りするでしょう?続ける責任だって無い。だからこそ、客を得るには継続的にやってもらうことが大切。毎日のプレゼントをダンジョンの中に、それと退席中のMP回復で定期的にやってもらう。そして何より、退席中に攻め込まれてないか不安になってまた戻って来ようとするでしょう?金やアイテムはシステム上増えていくけど、パック購入で減っていくのでどこか終わりがあるわけでもない、続けようと思えば続けられる」
「……」
「話したら満足しちゃった。術式組もうと思ったけどいいや。また何か思い浮かんだら聞いてもらうかも。ライドも何か思いついたら聞かせて」
「思いついたらな」
「それじゃバイバイ、またね」
え?期待されているのか?それとも喋りたかっただけか?…後者だな、思いついたことをアウトプットしないと新しいものが思いつけない、だから唐突に聞こえるが、彼女の中では唐突じゃない。そういうタイプだろう。