003
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「それにしても、ルビアナ嬢は驚かれすぎではないですか?」
クスクスと笑いながら続ける公爵様。それはそうでしょう!こんなパッとしない伯爵家にいきなり公爵様のご登場ですよ?さすがの私も驚きます。…というか、先ほど聞き捨てならないことが聞こえたような。
「あの…未来の奥方…とは、私のことでしょうか?」
「他にどなたが?」
うわっ、100点満点すぎるキラキラ笑顔を向けてお答えになる公爵様。方やひきつった愛想笑いの私と、怒りでブルブル震えるお姉様。あらら、お怒りです…でも、結婚相手がどんな人なのかという重要なことを伝えてなかったお姉様も悪いのでは?などと考えていると、
「ちゃんと前々から絵姿を渡しておきましたけど?」
エスパーですか…?じろっと睨みつけながら耳打ちされました。あ、そういえば、絵姿をいただいた後に後で見ればいいよねと思い、机の引き出しの奥に突っ込んだのでした。完璧に忘れておりました。
「ルビアナ嬢。改めて婚約者として(・・・・・・)、よろしくお願いいたしますね。」
にこっ。眩しくて目に悪いです、いやいい意味なんですけどね。
私の記憶が正しければ、公爵様と私は初対面のはずなんですが、もう婚約者だなんて早すぎやしません?まあでも貴族の政略結婚なんてこんなもんですよね。うんうんと、一人で納得していると、
「では、行きましょうか?」
「…は?」
おっといけない、素が出てしまいました。
「あ、いえ。公爵様、どちらかお出かけでもされるんですか?」
お急ぎなのでしょうか?まあ公爵家の嫡男たるもの、いろいろ予定がおありなのでしょう。
「ルビアナ嬢と(・・・・・・)、少しそのあたりを散歩しながらお話してみたいと思いまして。よろしでしょうか、カーネリア様?」
「はい、もうぜひ!ルビアナ、くれぐれも粗相がないようにね!」
え、ちょっと待ってよ!なぜ当事者の私ではなく、お姉様に許可を取るんですか?勝手に話を進めないでくださいよ、なんて言えるはずもなく…。渋々公爵様のお手を取り、ついていくのでした。
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20分ほど庭園を歩いて、会話ゼロです。気分は刑務官に連行される犯罪者なのですが。お話してみたいと仰ってましたが、こんなところで何を話すことがあるのでしょう。
「ルビアナ嬢、あなたはこの結婚について、どうお考えですか?」
唐突ですね、でもどうと言われても…。
「この世界ではありふれた、政略結婚でしょう?特に何も考えていません。強いて言えば、うちと婚姻を介して関係を結んだところで、ラズリークス家に何のメリットがあるのだろうということくらいですかね。」
あれ、公爵様のお顔が少し曇ったような…あ、すぐ元に戻られました。気のせいだったみたいです。
「そうですね、確かにレッドライト家には何かに秀でた産業があるわけではありません。ですが、私はこの結婚で素晴らしいものを自分の手に治めることができるのです。」
「というと?」
「まあ、それはおいおい。」
なんだそれは。めちゃくちゃ気になるところで終わらせましたね。まあいずれ分かるなら、今ここで追及するのはめんd…よくないですよね。
公爵様の仰る通り、レッドライト家は良くも悪くもごく普通の家門です。今までの歴史上で、何か大きな功績を挙げたわけでも、商業や農業で莫大な利益を築き上げたわけでもありません。ごく普通に領民たちに接し、ごく普通に暮らしを営んできただけです。大して、ラズリークス家は、このジュエロン王国唯一の公爵家で、名門中の名門です。商業も農業も、どちらにおいても数多の富を築いていらっしゃるようです。また、ラズリークス公爵夫人は現国王陛下の妹君でお若い頃は社交界の華と謳われたそうです。公爵様自身もとんでもない美青年だったらしく、お似合いのおしどり夫婦だと聞いたことがあります。なので、本当にこの婚姻によるメリットが思いつかないのです。実はうちには隠された秘宝があるとか!?…ないか。
「とりあえず一か月後に婚約式、半年後に結婚式という風に考えているのですが、よろしいでしょうか?」
それ、私に否定という選択肢はあるのでしょうか。ありませんよね。とても、私には公爵夫人は務まらないと思いますが、決まってるものは仕方ないですよね…。
「はい、問題ないです。よろしくお願いいたします、公爵様。」
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