人は生長する生き物でした
嘘だろどういうことだ。
スラギの言葉に、選択肢をもらえることが普通であることを理解していながらまずはそう思った自分は自由人に対する認識が固まっているのだと思う。
いや、だって。
だって。
ミコトだ。
彼の言葉にしたことは決定事項、これが覆らない真実であったはず。
同意や好悪の表明を求められたことくらいはないこともないが、明確な行動の意見を求められたことは確実にない。聞いたとしても自由人の中で答えは既に決まってる。
自由人ってもうそういう生き物だと思ってた。
その都度抵抗はしないこともないけど、そういう生き物だからそういうものなんだろうと思っていた。
それはミコトも例に漏れない。
なのに、スラギの言葉が正しいとするのであれば、それは。
……先ほどまでの、「選ばれた」「決定事項」で「拒否権はない」という実に自由人らしい傍若無人なそれとは正反対の。
騎士団長の意思を尊重するという事だ。
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…………………………………………………え?
明日は、……あれか。空から岩石が落ちてくるどころかむしろ大陸ごと浮き上がって空中分解するのだろうか。
滅亡の危機なのだろうか。
ミコトならきっと指先ひとつで出来ると思う。
動揺のあまりの無表情で、騎士団長はミコトを見た。しかし。
「ねえ、ミコト。そうでしょ?」
スラギが重ねて聞く、それに。
「……阿呆」
眉を寄せたまま、ミコトは。
「当り前だろうが。嫌がるやつを傍に置く趣味は俺にはない」
心底嫌そうに、そう言ったものだから騎士団長は。
感動に口元を覆った。
成長である。
まさかの、成長しないと思っていた自由人筆頭の、成長である。
他人には意志がある、その認識ができた事がこれほどに喜ばしいとは果たして人として大丈夫なのだろうかと一抹の不安がよぎるが、そう言えばスラギたち曰くミコトは人じゃなかった。
だからこれは喜んでいい案件である。
ミコト二十六歳。
にじゅうろくさい。
騎士団長の三か月の無駄な努力は無駄な努力に終わらなかったのかもしれないという感動の結果である。
「ほら、やっぱり~。でも、団長は欲しかったでしょ」
「それが、どうした。来るか来ないか、俺たちが決めることじゃないだろうが。……なぜ、話した?」
そんな勝手は許されないことくらい、分っていただろうとミコトは言った。
騎士団長が感涙をこらえている間になんだか真面目な話になっていた。
慌てて涙腺を引き締めた。
けれど、
「だって」
スラギは口を尖らせた。拗ねてるみたいに。
「……ほしくなっちゃったんだもん、俺も」
……。
「は?」
ぱかりと口を開けた騎士団長。
「大体、魔王城に行くって言われた時にミコトとなら行くって言ったのだって、団長とミコト会わせようと思ったからだし~」
「は?」
「絶対ミコトも気に入ると思ったし~」
「はあ!?」
「アマネとかヤシロも、団長なら大丈夫って思ったし~」
「はああ!!?」
「気に入ったでしょ~?」
「「「まあな」」」
「ちょ、待てええええええええ!!?」
騎士団長は、叫んだ。