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潜在能力は全てにおいて高い可能性を提示します


 ガイゼウス達の救世主はミコト。

 揺るぎない事実である。

 しかしここで疑問がわいてくるのは致し方ないであろう。


「なんで、ミコトさんがいたんですか?」

「そして、なぜ、ミコトさんは貴方がたのお願いを聞き届けてくださったんですの?」


 騎士団長と王女、双方の発問であった。


 そう、なぜこんな遠く離れた魔王城にミコトがいて、しかもガイゼウス達の願いを聞き届けたのか。それこそ面倒臭いの一言で切り捨てられそうな事柄であるというのに、どうやってかの最恐の自由人を操縦したというのだろう、不可解である。


 視線はガイゼウス・ファルシオ・アスタロトを順にとらえて離さない。

 で。


「ミコト様は薬草の受け渡しのためにいらっしゃっていたのですよ」


 ファルシオの苦笑とともにもたらされた第一の答えだった。


「「「「へ~……」」」」


 死んだ目をした騎士団長たちの相槌はこれだった。


 そう言えば『転移』とかいう反則業をお持ちだったな、ミコトさん。

 ちょいちょい魔王城来てるんだったな、ミコトさん。

 ヤシロに会いに来てるのかと思ってたけど薬草の取引してたんだね、ミコトさん。


 うん、尋ねてきたスラギを締め出した挙句最終的に川に投げ捨てた、ファーストインパクトを騎士団長は思い出した。


 久し振りだったのかは疑問が多々あるが、尋ねてきた親友へのそんな鬼畜の所業を平然と行うミコトさんが、ほかに何の目的も付随せずにわざわざヤシロに会うためだけに魔大陸までくるわけがなかった。


 会いたいならば魔王・ヤシロが会いに来る、もちろんそうなのでしょう。


 そんな黒髪の麗人は、それでも肩書き上はごくごく一般人でいらっしゃいます。


 ともかく。


「ミコト殿にお願いしたのではないのですよ」


 虚ろな気持ちを切り替えた頃を見計らったように、ガイゼウスが切り出したので耳を傾ける。

 お願いしていない、ならば何をしたのだろうか。


「ミコト様と陛下の前で、同じ話をしただけであります」


 ……。


「「「「ん?」」」」


 もう一回言ってほしい、アスタロトさん。


「ミコト様と陛下の前で、同じ話をしただけであります」


 ……。


「それだけですか?」

「それだけですね」


 なんでそれで話が通じたんだヤシロよ。


「ミコト殿はおっしゃったのですよ、『そうか、人間と話すのか』と」


 ガイゼウスは瞳を潤ませる。


 んだけど、ミコトよその発言は同じ人間として微妙だと思う。

 その日その時現在進行形で魔王・ヤシロは人間・ミコトとおしゃべりしていたのではないだろうか?

 さりげなくミコトさんの中で自身は『人間』という枠組みに入っていないのだろうか?


「その場にはスラギ殿もいらっしゃったので、『珍しいね~。初めてじゃない~?』という発言もいただいております」


 深く頷いたファルシオの言葉だった。


 まさかのスラギも同席していたという事実がさらりと発覚したけどまあとりあえず置いといて、やっぱりその発言も微妙じゃないかな?

 初めてじゃないよね? ミコトとスラギという前例がいるよね? 多分アマネも来て、話したことあるよね?

 やっぱりスラギの中でも自分たちは一般大衆から若干逸脱しているという自覚が存在していたのだろうか。


 びっくりである。


「そしてそんなお二方に陛下は返されたであります。『うむ、だが少しふざけているな。仮にも友達になりたいと主張するならそれなりの使者寄越せというもの。怠惰か? あと、来るにしても行列で寄越すとかやめてほしいものだな、超うざい』、と。それを私が文章にしたのがあの返書であります」


 ……。

 うん、何で発言をほぼそのまま文書に起こした? というところはもういいとして。


「こちらの文の内容を話したのは宰相殿ですよね」

「いかにも」

「ミコトさんとスラギは質問しただけですよね」

「まさしく」

「それでどうして魔王陛下は返事が出来たんですか?」


 意味が分からなかった。


 が。



「「「ミコト様たちの問いかけに答えるためです」」」



 三人の声は自信に満ち溢れていた。


 自由人は言語読解能力さえも自在に操る存在であったようだ。






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