爆心地です
ミコトたちは個性的である。
自由人と言わしめるにふさわしい個性である。
ゆえにその友人の個性も爆発しているというのは必然であろう。
いや、話してみればかの友人五名は比較的常識的ではあったのだ。各々自立した考えを持っており、大別すれば魔族に分類されるであろうけれども魔王を王に頂いてはいないというだけである。
人間だって一枚岩というわけではないし小国も多い。どの国にも属さぬ冒険者などもそれなりの数、存在する。
つまりは彼らの一族や彼ら個人としては王を必要としない考えであるということでそれは別に否定すべきものではなくそういう考えも存在する、という中の一つである。
結論として彼らが自由人と同類であるというには少々弱い。
彼らはひたすらにミコト至上主義で少々わがままなだけだ。
いうなればちょっと愛が重くて面倒臭い支配者階級と言ったところか。
彼らはそれぞれ一族の中では頂点と言える立ち位置にいるようであるし、まあ簡単に言うなら魔大陸の中にも小国があってその中にそれぞれ王が存在するようなものなのだろう。
そしてその小国の王がアリだったりオリだったりハベリだったりイマだったりソカリだったりするわけだ。なお、ハベリなどは唯一無二の存在で国民と言えるべき同族が存在しない、などの細かいことは置いておく。
ともかく、そんな感じで中身は常識が比較的通じるのだ、中身は。
外見と本性に個性が爆発しているだけだ。
むしろ狙って極めたのかもしれない。
なぜならばゴリマッチョがお二人ほどいらっしゃる時点でここはあたかも圧迫面接会場のようです。そしてゴリマッチョが二人もいるにもかかわらず霞まない異彩を放つお三方にくわえその状況でなぜか最も存在感をもって鎮座しているミコトさん。
胃薬をください。
いや、おいしいご飯はそれでもおいしかったから完食したけれど。
ともあれ。
彼らの個性は個性だとしか言いようがないし否定する権利を騎士団長たちは持たない。
欠片も疑問をいだいていないミコトさんに倣うのみである。
王女・リリアーナとしては鑑賞するが如き世界樹の化身・ハベリの視線が若干の恐怖であったけどこのゴリマッチョ(着衣)は装飾品の類を好んでいると会話の中から判明しているので王女の身に着ける身分相応の装いを文字通り鑑賞しているだけであろう。
その鑑賞は度が過ぎていないあたりに良識が感じられるため許容範囲であると判断した四人だ。
ちなみにこれがミコトだったりスラギだったりした場合、興味を惹かれればむしり取ってでも観察したであろう。
自由人とそうでない者の差である。
形の上で一言かけるかもしれないが許可されなくても実行する、それが自由人である。
いっそ清々しいほどに自分本位なのだ。
まあミコトの興味は薬草や料理、スラギやアマネの興味はミコトや狩り、ヤシロの興味はミコトや経済効果などに向けられているのでその点被害はない。
これからも全力で興味をひかないよう努力する所存である。
話を聞いてもらうための自己主張とのバランスが難しいところだ。難儀な話である。
ともかく。
そんなこんなでこれまでの話は客人たちの種族であったり騎士団長たちのこれまでの旅路であったりが主であった。
しかしそれも大体一段落した。
なので、ここらで一つ、もう一歩踏み込んだ質問を投げてみたいと思う。
度胸がついたものだ。
なんであれ。
「あの、ですね。ちょっとお聞きしたいのですが」
口火を切ったのはもはやユースウェル王国四人組の交渉役といえる騎士団長である。
一斉に、視線が集まるのも慣れてきたのは誇っていいと思う。
で。
「皆さんが魔王陛下に、その。お会いしないのには、理由が?」
婉曲に投げてみた。
「こいつらがヤシロを嫌いな理由か」
ミコトに直球に直された。
何てことするの。
騎士団長たちはヒヤリとして魔王城重鎮三名を盗み見た。
「まあ、これだけ拒否しておられますからの、気になりますでしょう」
宰相・ガイゼウスが普通に言った。それに不快さはなくほっと息をつく。
が、だがしかしなぜちょっと楽しそうなのか宰相よ。
一応仮にも嫌われているのはあなたの主君ではないのか。それでいいのかガイゼウス。
「しかたないでしょうな、我にもアリ殿方のお気持ちはわかります」
わかってしまうのか近衛隊長。
「諦めるか嫌いになるかしかないでありますからね」
選択肢に救いがないですアスタロトさん。
ていうかだ。
ヤシロよ、いったい、何をした。