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実益の伴わない趣味です


 騎士団長たちの困惑が伝わったのかどうかはわからない。

 しかし答えはそっと、背後から。


「……彼らの名前を付けたのは、スラギ殿でありますよ」


 側近幼女・アスタロトの言葉であった。


 たいへん納得した。


 ミーちゃんの衝撃に比べればましなんですね解ります。

 様々なものをうっかり神より与えられたと思しきスラギであるが常識と共にネーミングセンスも受け取ることを忘れた様である。

 それともあれだ、ネーミングセンスというものは常識と結びついているものであったのかもしれない。


 ならば仕方がない、諦めるべきだ。


 ……あれ、でも待とうか、ミコトの名前もスラギ命名だって話を随分前に感じるけど実際ほんの一、二か月前に伺ったような気がする。

 たいへん黒髪の麗人にお似合いの御名前である。


 どうしたことだ。おかしい、『ミコト』が偶然の産物かその他が何も考えていないだけか。

 ……うん、何も考えていないんだろう、分り切った愚問であった。


 騎士団長たちは顔を見合わせ、数秒の間に全員同じ結論に辿り着いた。

 積み重ねた経験から来る思考の一致である。

 そしてそれに伴う以心伝心も慣れたもの。


 出来ればぜひ違う方向から習得したかった技能であった。


 いや、言ったところで後の祭りだ。

 それよりも。


 答えを親切にも与えてくれたアスタロトには感謝をせねばなるまい。思って、客人たちに失礼にならぬ程度に頭を下げて感謝を表した。受けた幼女は長い睫毛を上下させてすっと下がる。

 音もない見事な動きである。


 そう言えばさっきの今ではあるが、彼女はいつのまに騎士団長たちの足元にいらっしゃっていたのでしょうか気付きませんでした。これでも騎士団長ジーノ・騎士イリュート共にユースウェル王国ではその腕を認められた騎士であるはずなのだがまったく気配がよめなかった。


 体躯に見合わぬバッドを主君に向って振りかぶるホームラン王はだてではないという事であろう。


 ともかく。


 改めて目の前のカラフルな者たち――アリ、オリ、ハベリ、イマ、ソカリに視線を戻す。

 ちなみに現在長椅子に向かい合って座るという体勢に落ち着いている。

 向こう側の長椅子にゆたりと客人五人が、こちら側の長椅子に狭苦しく七人が、いわゆる『お誕生日席』とでもいえる配置にミコトが一人長い脚を組んで優雅に座っている。


 なお、客人五人が座る長椅子が八人掛けで騎士団長たち七人が詰め込まれている長椅子は五人掛けであると告げておこう。


 力関係が微妙にうかがえる配置である。

 魔王たるヤシロを嫌いだと公言していることといい、ヤシロの配下への扱いと言い、彼ら客人たちは『ヤシロに仕える者』ではないのだろう。


 それはわかる。


 なおかつミコトが大好きなんだろう。


 それも分かる。


 でもどうしてもわからないことがあったので、騎士団長はそっと、上品に、しかししっかりと挙手をした。

 ちなみに席に着く前に、今度は宰相・ガイゼウスより『礼儀や作法などは考えるだけ時間の無駄ですぞ』とありがたい助言をいただいている。

 なので、葛藤は振り切った。


 自由人とかかわるには度胸がなくては振り回されて古い雑巾の如く精神が引き千切れてしまうのだからこの程度の所業は割と、できた。

 知らないうちに着々と調教されている気がしたが見なかったことにした。


 ともかく。


「なぜスラギが名前を考えるという暴挙を許してしまったのですか」


 聞いてみた。

 注目された。

 視線はそらさなかった。

 野生動物と対峙する時と同じである。


 すると。


「吾輩たちは皆、もとは名無しであったのでござる」

「前はよかったが、今は名前がないと不便なのだ」

「だからあ、ミコトちゃんに頼んだのよお」

「名前ほしいーっ、て!」

「妾たち五人、出会いが近かったゆえ、共にの」


 それぞれの言葉が紡がれ、そして視線はミコトに向かう。

 見られたミコトは。


「その頃名づけにはまっていたスラギが横から言ってきたからそれを名付けただけだ」


 おっしゃったんだけど、うん。



 そこで中継プレーは駄目だと思います。




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