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 さて、進言したかったけれどももちろんそのような愚かかつ無駄な行為に余計な酸素を使う気はない騎士団長たちである。

 なのでミコトとは「そういうもの」だと、魔王城重鎮三人組の助言を素直に受け入れて思考を放棄しあきらめた。


 そして完全に切り替えた騎士団長、次なる質問に気持ちを向ける。

 慣れである。

 ともかく。


「じゃあ、もう一つ教えてくれ。俺たちに用って、いったいなんだ?」


 たとえミコトが心を読めたとして、懇願が届いていたとして、そして純粋に助けてくれようとしたとして。

 ミコトは「用があるから来い」と言ったのだ。

 そして彼はたかが騎士団長たちを連れ出すためだけにそのような方便は使わない。


 すなわち、本当にミコトは騎士団長たちに対して用があるのであろうという結論に達するのは難しいことではない。


 だからこその質問であった。

 が。


「つけばわかる」

「心の準備期間をいただきたい」


 六文字で済まそうとした黒髪の麗人に間髪入れずに返した騎士団長であった。


 こくこくこくこくと高速でうなずくのは背後の同行者六名。

 しかしそんな彼らにミコトは胡乱な瞳を向けてくる。


 殴ってもいいだろうか。


 いやそりゃつけばわかるだろう。それはそうだ。わざわざ向かっているということは「用」の本体はそちらにあるのであろう、疑うべくもない。


 だがしかしそれでは遅い。遅すぎるのだ。


 なぜならミコトは自由人である。筆頭である。

 自由人の自発的な行動はすべからく常識を逸脱しているというのが共通認識であるからして心の準備は必要だ。


 ご理解いただけないだろうか。


 そのようなことを騎士団長は遠まわしに伝えてみた。

 駄目なものを見るがごとく眉間に皺を寄せられた。


 デコピンしてもいいだろうか。


 いやしないけど。

 ともかく。


 そんな過程を経てミコトはどうやら話してくれる気にはなったらしいから良しとしよう。しなければ話が済まないうちについてしまう。

 で。


「客と話していたらお前らと話したいと駄々をこねたからだ」


 ようやくいただいた答えはこれだった。

 お客さんがいらっしゃっていたらしい。

 初耳である。

 宰相・ガイゼウスも近衛隊長・ファルシオも側近・アスタロトも初耳であったらしい。

 もちろん先ほどまで騎士団長たちと行動を共にしていて現在絶賛厄災遭遇中である魔王・ヤシロも知っているはずがない。


 つまりはそんな「報連相」が皆無な状態なのに魔大陸・魔都カンナギ・魔王城にて魔王・ヤシロではなく形式の上ではごく一般人・ミコトに対して個人的な客が許可なくやってきていると解釈してもいいだろうか。


 聞いてみた。


「それがどうした」


 ミコトの答えはこれだった。


 おかしい、もしかして魔王城の真の主はミコトであったのだろうか、否定できる要素が見つからない。


「いや……うん、まあいいや」


 騎士団長は諦めた。

 それよりも。


「じゃあ、ほら、魔王陛下はなんで来てはいけなかったんだ?」


『邪魔だ来るな』とヤシロを絶望の底にたたき落としたのは記憶に新しい。

 これに対しミコトは平然と。


「客があいつを嫌っているからだ」


 答えた。


 ヤシロさんはミコトのお客様に嫌われていらっしゃるそうです。

 訪問先の最高権力者に対して何と手厳しい客であろうか。というかヤシロよ何をした。


 騎士団長たちは胡乱な顔になった。


 が、しかし。それとは対照的にすぐ後ろ、魔王城重鎮三人組は納得したような声をあげたからばっと振り返ったのは仕方がないだろう。


 どうやら彼ら、主君を嫌う訪問者に心当たりがあるようである。ぜひとも情報共有をお願いしたい。


 騎士団長は尋ねるために息を吸い込んだ。

 ――が。


「ついたぞ」


 時間切れだった。





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