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精神と物理の相乗効果が見込めます


 かくして連帯責任・一蓮托生。

 騎士団長たちの明日は存在するのか。

 ――微笑みの鬼畜どもから下された審判は。



「あはっ。じゃあみんなは今日から三日間、毎食俺とアマネの手料理だから~」

「はっはっは、しっかり味わえよ? 俺たちはミコトの美味しいご飯食べるけど」



 絶望だった。


 えっ。

 ……えっ。


 すーっと、八人は一瞬呆けたのちに顔色を失くしていく。


 なぜならばあれだ。だってほら、ミコトさんの美味しいご飯は神のごとき美味だけど、それによって舌が大変肥えてしまったであろうスラギとアマネ。


 彼らはかつてミコト不在の折自らそれ(・・)を食し何十回目かの死地を垣間見たという。


 それは既に料理ではなく劇物である。


 何をどうすれば食材を未知の物体に昇華できるのか、ミコトとは真逆の意味で奇跡である。


 そんないらない奇跡がまさかの再臨。

 騎士団長たちに明日は存在しなかったようである。


 断言しよう、それを体内に取り込んで生き残ったのはひとえに無駄に生命力の高い彼等であるからだ。


 ヤシロはいい。あれは自由人だ。それだけですべてが説明できる。彼は生き残るだろう。

 そしてガイゼウス・アスタロト・ファルシオ。

 この三人は自由人ではないが一応仮にも魔族である。魔族というのは心身ともに強い。人間よりも。すなわち生き残る可能性は比較的存在していると見受けられる。


 つまり。


 スラギとアマネは遠まわしに騎士団長たち四人に死刑を言い渡したに等しい。


 あれですか、最終段階で止めなかったのがそんなに気にくわなかったんですかごめんなさい。


 でも無理です。無理なんです。自由人の非常識という名の規格外はひとかけらたりとも凡人には当てはまらないのだということを今こそ理解してほしい。


 そうです騎士団長たちは凡人です。


 ガタガタガタガタガタガタ、輪郭がぶれるほどに震えながら騎士団長・王女・侍女・騎士は顔を見合わせる。

 バチリ、バチリ、バチリ。

 綺麗に視線が交錯して。騎士団長たちは互いに悟った。


 そこにあるのは絶望だと。


 連帯責任。一蓮托生。しなばもろとも。


 しかし基本スペックという残酷な差に阻まれた騎士団長たちはお仕置きによってここに生涯の幕を閉じそうである。


 理不尽!


 しかし時間と自由人は待ってはくれない。

 だがここはそれでも叫ぼう。


 待って。

 待ってくださいお願いします。


 着々とこの世のものとは思えない何かを正に目の前で生産しようとしないで。いつの間にどこからその食材たちを取り出したの? そしてそのおいしそうなまともそうな食材たちを何をどうしてそんな謎の物体に進化させたの?


 鳴いてるんだけど。『オオオオオン』って聞こえてくるんだけど。なんで鳴くの? さっきまで普通の静かな食物だったはずがなんで断末魔をあげてるの?


 そしてその造形は何ですか? 前衛的な突起がいっぱいあるんだけど。しかも色がなぜかエメラルドグリーンとスカイブルーとパッションピンクとパープルゴールドを地獄のような黒と血のような紅が彩ってるんだけど何をしたの? 食欲を奪うことに特化してるの?


 騎士団長たちは、必死だった。

 正座を解くことは許されていないことは微笑みから察せられたので座り込んだまま、必死で訴えた。

 自由人と凡人の生命力と胃腸の強靭さにいかに差異があるかということを口々に語った。


 ちなみにヤシロたちは死んだ瞳で現実逃避をしていたけれどそんなことはどうでもいい。


 とにかく生命維持のために!

 が。


「あははっ、大丈夫大丈夫~」

「死ぬ一歩手前までは行っても帰ってこれるだろ?」


 死ぬ一歩手前までは行く前提である件について。


 そして当り前のように生還を確信されても帰ってこれないから。一緒にしないで。それは片道切符なのですお願い理解して。


 騎士団長たちは、訴えた。

 切々と、丁寧に、声の限りに。

 しかし努力虚しく鬼畜どもはにこにことその『食材であったもの』を騎士団長たちに差し出して―――――


 逃げ道は、見つからない。






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