連帯責任です
ゴールデンウィーク中更新を休んですみません!
また元のように更新していこうと思います。
美しい土下座はタイミングも角度も見事同じだった。
八人の心がそろった瞬間である。
ともかく。
なんで怒っていらっしゃるんだろう。
そんな騎士団長たちの疑問は、貴族王族上司挙句に国主までも傅かせているにもかかわらず当然のような笑顔ですっと取り出されたものを見た瞬間消え去った。
なぜならそれはミコトさんだった。
正しく言うならば無駄に魔族の努力と技術の粋がこれでもかと詰め込まれた挙句に生みだされたという経緯を持つ精巧に過ぎるミコト人形だった。
何処に隠し持っていらっしゃったのでしょうかスラギさん。
いや、考えても無駄だ。
それよりも。
瞬間的によみがえるヤシロとの会話。
――『ミコトさんがモデルを?』
――『盗観察だ』
――『じっくり覗くという』
――『スラギとの戦いは激しかった』
――『それでもやり遂げた執念』
――『わかるか』
――『いろんなものの無駄遣いだと思います』
そう。スラギはミコト人形の制作に反対していた。妨害までしていた。
なのに完成してしまった人形。暴動を治めるためにばらまかれた人形。しかも金をとって利益を出してる人形。
笑顔の殺戮者降臨と相成るわけです理解しました。
そんでもってアマネさんもヤシロに対してはスラギと連携組むの厭わない臨機応変ぶり。二人のミコト様への愛は深い。
そんな人形を見た瞬間びくりと震えた魔王城重鎮四名。彼らは騎士団長たちとは違って言われるまでもなく何故スラギとアマネが『微笑んで』いらっしゃるのか察していたらしい。
さすがは人形の生みの親である。
そして騎士団長たちが完全なるとばっちりである件について。
制作から販売まで騎士団長たちは関与していないのにこの恐怖体験。
一蓮托生ですかそうですか。連帯責任なんて大嫌いだ。
うつむくヤシロたち、死んだ瞳の騎士団長たち、朗らかに微笑むスラギとアマネ。
沈黙。
そうして金と赤茶はおもむろに。
「ダメって言ったよね~?」
「いろいろ聞いたぜ? 人が嫌がる事ってしちゃいけないだろ?」
優しく明るい声でおっしゃいました。
さらに。
「悪い子にはやっぱりお仕置きだよねえ」
「お仕置きだなあ」
結局お仕置きからは逃れられない運命であるらしい。
無念を漂わせてヤシロたちはうなだれる。
諦めきった哀愁漂う姿であった。
なんと諦めの早いことであろう。根性がないのか心身に刻み込まれる過去の何かがあったのか。
後者であるという予測は間違っていないと思います。
いや、じゃなくて。それよりも大切なことがある。今それをやるのはとても怖い。今現在進行中の恐怖体験よりも怖い。
しかし、騎士団長はやらねばならないのである。
だから、――すっと。
騎士団長は意を決して手をあげた。
そして。
「俺たち四人が怒られるのは何でですか」
聞いてみた。
怒られているのは変わらない。お仕置きの結果も変わらない。しかしどうせ未来が変わらないのであればなぜそれを執行されているのかくらいは心構えとして知っておきたいではないか。
騎士団長の声は震えていた。
しかし、目はしっかりとスラギとアマネを見ていた。
二人はきょとん、と騎士団長を見かえして、一言。
「だって、売るの止められたでしょ~?」
あはっと言った。なんでそんな当然みたいに言ってるんだろう。実行犯は一応仮にも魔王なのだから無理に決まっている。
「いや無理」
「止められたでしょ~?」
「いや」
「止められたでしょ~?」
「……はい」
そのスマイルは、怖かった。