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自由人の周囲は同調していきます

四月二十九日、ファルシオの矛盾を修正しました。


 悟りを開いた気分の騎士団長たち、しかしヤシロたちは懐かし楽しそうに過去を語る。


 それによるとヤシロとスラギはお仕置きとして魚に変えられた挙句ヤシロのペットであるクラーケン・ミーちゃんの飼われている水槽に一週間ぶち込まれたそうです。


 ミコトがかつて観察したクラーケンはヤシロのペットだったらしい。

 サディスティックな習性を持ちえるクラーケンの水槽に友人を抜かりなく無力化してぶち込むその神経。

 鬼畜である。


 ていうかクラーケンペットにすんなよ。

 深海の覇者ではなかったのかクラーケン。

 伝説の魔物ではなかったのかクラーケン。


 そしてそのネーミングセンスとは。

 名付け親はスラギだそうです。


 なんでクラーケンが『ミーちゃん』なんだスラギ。なんでイカの魔物がそんな和やかな名前なんだスラギ。そしてそれをどうして受け入れてしまったんだヤシロ。


 素直か。


 なお、ミーちゃんは飼い主であるヤシロよりも、名付け親のスラギよりも、ミコトさんに従順だそうです。


 自己防衛本能の高さは野生の賜物なのだろうか。

 だがしかしミコトが言えばいそいそとその体内にある毒を研究に提供したらしいというからむしろ野生を華麗に棄てているのかもしれなかった。


 ちなみにミコトさんはそこまでの調教を水槽越し、無言の視線一つで行ったそうです。

 ミコトさんの限界が見えなくてツライ。


 ともあれ。


 そんなこんなで終結した些細に始まった大げんか。


 付け加えておくと、この事件の際のアマネだが、ミコトを手伝いはしなかったけど邪魔もしなかったということで若干の不況は買ったもののガイゼウスともども無罪放免だったらしい。


 とても楽しい余興だったとガイゼウスに零していたという証言が得られたのであの赤茶も大概鬼畜である。


 ともかく。


 そんな感じで、ミコトは一躍魔都・カンナギを文字通り魔王・ヤシロとスラギから救った救世主になった。

 ものすごく感謝された。

 有名になった。

 年月とともに話は美化され広まった。

 感謝の念が信仰と崇拝にとってかわった。

 イマココという現状である。


 何その恐ろしい超展開。


 もとはと言えばミコトを巡るヤシロとスラギの些細な喧嘩だったのに。

 そしてミコトも、己の害にならなければ止める気が一切なかったことは被害が魔都・カンナギの住人に及ぶまで放置していたことからも明らかである。


 いや、心底『助けて』って請えばミコトは己に害が出なくても多分面倒臭そうにしながらも助けたんだろうけども。


 正にミコトに始まりミコトで終わっているにもかかわらずこの心酔っぷり。

 なんでこうなった。

 ミコトだからか。

 ミコトだからなんだろう、仕方がない。


 ……そういえば。


「宰相殿たちが助力を請えば、おそらくミコトさんは被害がそんなに出ないうちに止めてくれましたよね。……なんで、言わなかったんです?」


 疑問に思い、聞いてみる。

 すると。


「あー……。割と早い段階でアマネ殿とお茶会に入ったものでしてな」


 宰相は早々に現実逃避した結果だった。


「私は書類の用意に忙しかったであります」


 側近は先手を打ちすぎていた。


「ファルシオは陛下が暴れる=避難勧告が体に染みついておりましてな」


 近衛隊長の体に染みつくまで何をやらかしてるんだヤシロよ。

 なお、代弁はガイゼウスである。


 ともかくも、各々、それなりの理由はあったらしい。

 アマネにたぶらかされたのが一人、職務に忠実過ぎたのが二人。

 結論。


「アマネとともに現実逃避した宰相の所為だな!」


 ヤシロが言った。

 きらきらしていた。


 それに対して宰相・ガイゼウス、にこりと笑ってピースを作る。

 そしてその二本の指は吸い込まれるようにヤシロの眸へ突き刺さる。


 ヤシロは悲鳴を上げた。


 が。


「「「「「今のは陛下が悪い」」」」」


 全員一致でヤシロが有罪だった。








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