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ご紹介しましょう


 ヤシロが懐に手を入れた。

 騎士団長はそれを見ていた。

 ヤシロが懐から手を引き抜いた。

 騎士団長はその動きを追っていた。

 ヤシロの手には小さな『何か』が握られていた。

 騎士団長はそれを注視した。



 ミコトさんだった。



 正確に言うのならちっさいミコトさんだった。

 無表情に腕を組み、冷めた瞳で周囲を睥睨しているちっさいミコトさんだった。


 なんだそれは。


 騎士団長は固まった。

 少々お待ちください状態だった。

 しかし魔王は待つはずもなく。


「うむ、『これ』の出番か」


『それ』が何かも分からないのに『出番』とはいかに。


 待とうか。

 ちょっと待とうか。


 え? ミコト? ちっさいミコト? ちっさいミコトだよねそれ。

 この際大きさが云々というのは問題ない。男が女になったり金魚になったりと変幻自在のこの世である。背丈が縮むこともあるだろう。


 問題はそこではない。


 ちっさくなっているのがミコトだということが問題だ。


 スラギなら判る。

 アマネでもわかる。

 この際ヤシロだったとしても納得しよう。


 でもミコトさんはあり得ないでしょう。


 何故って身体の大きさを変える方法が存在するとしてその実行者はミコトさんだからだ。

 もしくは万一、億万が一誰かに謀られたとして、平然と犯人をこの世と決別させて元に戻るのがミコトさんだからだ。


 小さくなった状態に甘んじた挙句、ヤシロの懐におさまるなどあり得なさ過ぎて笑えてくる。


 そして『出番』って何? さっき『ミコトは動かない』って言ったのヤシロだったよね。

 ていうかそのちっさいミコトさんが微動だにしないのはなぜだ。

 キレる寸前か。嵐の前の静けさなのか、そうなのか。

 動かないってそういう事なの? そういうあれなの?


 やめて。

 切実に、やめて。


「そ、れは、」


 グラングランに揺れる中、かすれた声を絞り出す。

 ヤシロがふむ? と首を傾けて振り返った。


「ミ、コトさん?」


 引き攣った騎士団長の声、それに王女たちも気づいて二人を振り返り眼を見開く。

 しかし驚いていたのは騎士団長含め四人だけで。


「ああ、そうですな」

「まあ、ミコト様に出ていただくよりは、」

「仕方ないであります」


 魔王城重鎮三人は深く頷いた。


 お前ら一体何を知っているキリキリ吐け。


 そしてファルシオ、『ミコトが出るよりは』ってなんだ、そのちっさいのはミコトじゃないのか。


 困惑が極まり騎士団長たちの視線はヤシロたち四人を順に彷徨う。

 するとヤシロが瞬いて。


「……ああ、見たことがないのか」


 見たことがあればこんなに驚かない。

 しかしこの流れなら答えをいただけそうであると判断して何も言わずに続きを待つ。

 そしてもたらされた答えは。



「これは、『ミコト人形』だ」



 何処に突き抜けてそこに行き着いてしまったのだろうか。














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