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内容が濃厚だったので


 良くも悪くも『特別』なのだ。

 ヤシロも、ミコトも、スラギも、アマネも。


 ぶっちゃけ特別が過ぎて振り回されまくってる身としては少々大人しく願えないだろうかと青筋を立てたいこともしばしばというか毎日というか常になんだけど。


 そうであるとしても、それはそう、本人が望んで得たものではなく生まれ持ったものということはわかっている。


 性格はあれだが。


 いや、ともかく。


 ――ヤシロは魔王だ。


 宰相・ガイゼウスや側近・アスタロト、近衛隊長・ファルシオも、かつては彼を恐れたという。

 それが多分、当たり前の形なのだろう。


 人間の王族だってそうなのだ。でも考えてみれば、魔族と人間の寿命は違う。特にヤシロは魔族としても長命で、既に数百年は生きているという。


 確かに彼は、寂しかったのかもしれない。

 それほどの時間、ただ一人畏怖され続ければ、誰だって。


 だからこそ、ミコトたちに心を許したのだろうと理解できる。そしてそれを受けたガイゼウス達の変化の結果が今であるのだろう。


 そうして、その変化はきっと正しかったのだ。

 なぜならば、今のヤシロは、楽しそうだ。


 まあミコトたちと出会ったのが十数年前で、それほどの時間でよくも百年単位で築かれていたであろう関係性をここまで崩壊させたなと思わずにはいられないけれども。


 だってほら、騎士団長たち呆然としたから。


 もう今は既にこういうものなんだと諦めてるけども、ヤシロが捕獲されたところから始まって二回目のエンカウントに至っては吹き飛ばされてご登場だった。


 一応仮にも君主に向っていいの? 本当にいいの?


 何度そう心の中で突っ込みの声を上げた事か。

 しかしそんな所業に対して当の君主たるヤシロの反応は『手加減しろ』との一言のみ。


 手加減するとかしないとかの問題じゃなくてそういう行動自体がなんていうか普通の主従関係では有るまじきことなんですけれどもそこのところどうなんでしょうかという騎士団長たちの言葉は口の中で消えた。


 だって諭されたもの。


 見合いのごときお茶会が始まっていそいそとヤシロがお茶を淹れ始めた時に愕然としていたら諭されたもの。


 諦めるには十分ではなかろうか。

 郷に入っては郷に従うべきなのである。


 ともかく。


「ミコト殿たちと出会われてから、陛下は本当に楽しそうでしてな。もちろん動揺もありましたが……そういうやり方も『アリ』なのだと、学びましてな」


 ガイゼウスが含み笑う。


 彼らは、学んだらしい。


 それってあれだよね、ふわっと言ってるけど『物理』でお話してもこの王様意外と大丈夫じゃねっていうあれだよね。


 一体何を見たのだろう。


 まあ、ミコトは常に容赦などないし、スラギとアマネに至っては出会いがしらに飛び蹴りでコミュニケーションをスタートさせているという衝撃の事実からしてまあそういうあれなんだろう。うん。


 詳しくは聞くまい。

 騎士団長たちとて学んでいるのだ。

 おもに己の精神を健全に保つという重要な目的のために。


 ともあれ。


「陛下も前よりは仕事をして下さるようになりましたし、関係も改善されました。まあ、他にもいろいろと世話になっていることもあります。ミコト殿たちには感謝しかありませんな。……だから、」


 ガイゼウスは好々爺のように眼を細めて。


「ミコト殿たちの信頼する、あなた方の国であれば、信用に足ると、そう思っている。それだけの事ですよ」


 だから友好を結ぶことは厭わない。


 そう、ガイゼウスは穏やかに結んだ。


 騎士団長たちはしばし、呆然とした様に瞬く。

 信用された、それは喜ばしいし、その理由も分かった。


 しかしどうしても、思ってしまったのだ。



 ……そう言えばこのお話の発端ってそこだった、と。



 すっかり忘れていた騎士団長たちだった。









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