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類は友を呼びすぎます


『ひとりはさびしいだろう』


 当り前のことを当たり前に零されて、その場は沈黙が落ちた。

 ただヤシロだけがにやにやと、笑っている。


 なんでにやにや笑ってるんだろうこのお方。


 何そのいやらしい笑い方。あれ? そういう場面だった? そんな感じの空気だった? 違うよね。そうじゃないよね。

 なんかこう、あれだ、重い感じの、深い問題に踏み込んじゃうのかもしれないなっていう流れだったよね。


 どうすればいいのかわからず、狼狽えたまま黙っていれば、さらにヤシロは続けた。


「異端、異質、異常……生き物は異なることがたいていの場合嫌いだろう?」


 確かにそうだ。


『違う』ということは『特別』という事だ。

 妬みかもしれないし羨望かもしれない。あるいは侮蔑であるかもしれない。

 その根拠はなんであれ、『出る杭は打たれる』という言葉があるほどには。


 それはたしかに、総称すれば『嫌い』という表現が近いともいえる。


 けれど話のつながりが曖昧で、騎士団長たちは眉をひそめた。


 すると。


「異端で、異質で、異常……」


 にやにやを一層深めて。



「私の事だな!」



 なんですっげえ明るく言ったんだろうヤシロさん。


 いや皮肉でなく。

 キラッキラしてるんだけど。


 いや、うん。魔王として、魔族の頂点に立ち、歴代の中でも突出した力を持つといわれる彼だ。

 確かにそれはいわゆる『普通』ではないのだろうが。


 あれ? 此処でそう来る? 「嫌いだろう」からの「私の事だな」で皮肉でもなんでもなく自慢げになっちゃう?


 あふれる自信に感服します。


 でも内容が内容だけにどういう表情をすればいいのかわからなかった。


 話の流れは、見えた気がしたけど。


「ミコトたちも、そうだろう」


 ヤシロは言う。

 確かにそうだ。いや、ホントそうだ。


 失われし神聖魔法を使ったりあり得ない全属性魔法使ったり山消したり町消したり国消したり魔物の支配者だったり魔王と友達だったり。


 挙げればきりがない。


 最近麻痺がちなことも多かったけど紛うことなき吃驚人間の集合体である。

 あ、でも。


「アマネさんは……」


 比較的、ほんのわずか、欠片の先だけ、常識の片鱗を残しているような。

 だって魔法は、いつだったか聞いたけど使えるのは土魔法だけで、魔力も人より若干多いくらいだって言ってたし。

 が。


「ああ、アマネはな、魔法は不得手だがあれはとんでもない身体能力の持ち主だぞ」


 小さな小さな騎士団長の声をヤシロはきちんと拾った挙句に答えてきた。

 地獄耳である。


 そしてどういうことだ、身体能力?

 聞いてみた。

 すると。


「あやつ、山を消したのだろう」


 そうですね。十四年前のヴルヒ山消失事件の事でございますね。

 頷く。


「あれをしたのはスラギの魔法が半分、アマネの膂力が半分らしいぞ」


 ………。


「「「「は?」」」」


 ん? 待って。

 え? 膂力で? 山を? 半分消した? ……魔法でなく?


 ぽかんとすればヤシロは呆れて。


「想像力が足りんな。それくらいできなければスラギと喧嘩なんぞできるわけがなかろうが」


 想像力の問題だろうか?

 騎士団長たちはひきつった。

 が。


「スラギは喧嘩相手をいつまでも殺さずに手加減できるほど気が長くないぞ」


 ヤシロは真顔だった。


 そしてそれすごくよくわかる。


 どうしよう、今の説明で騎士団長たち四人は納得できてしまった不思議。

 スラギマジックである。


 いや、ともかく。


 アマネさんってそうだったんですねもう忘れないです。


 じゃなくて。


「ま、そういうわけでな、ミコトらのそばは、どこより心地がいいのだ」


『そういうわけで』で纏めないでほしいけど、まあそういう事なのだろう。


 やっと腑に落ちた、気がした。






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