原因に対する結果を述べよ
若干真面目なお話です。
まあいい。
いや、何にもよくないけどこれ以上『魔王とは』という命題に真面目に向きあおうものならもれなく迷宮から帰ってこれなくなりそうなのでもういいということにして次に進もう。
深く考えた方が負けなのだ。
ともかく。
「……あの、それでですね。結局、そんな、……あー、タノシソウな出会いをされたのはわかりましたが、ミコトさんのことを宰相様方までがそこまで信頼したのは……なぜですか?」
若干言葉を選びつつも言い切った騎士団長。
適応力が日々高くなっている。このままでは自由人に毒されて晴れて仲間入りする日も近いかもしれない。
恐ろしいことである。
ともあれ。
「ああ、それはですな、ミコト殿たちが、ミコト殿たちだったからですの」
尋ねたことに、あっけらかんとした調子でガイゼウスが答えた。
うむ、なるほど。
「もうちょっと詳しく」
騎士団長は、冷静だった。
過去から現在までミコトたちがミコトたちだったのは知っている。昔から一切ぶれない彼らの自由さはもう折り紙付きである。
だからそこはいい。
騎士団長たちが知りたいのは、ミコトたちがミコトたちだったということが魔族の皆さんにどのように作用したかという事なのである。
すると。
「――そのままだ。私が何者であろうが、ミコトもスラギもアマネも、そんなものどうでもよさそうだった」
だからだ、と。
存外に柔らかい声で、答えたのはヤシロ自身だった。
騎士団長たちは瞬く。
『何者であろうが、どうでもいい』。
それは確かに自由人のスタンスだ。
ないがしろにされ過ぎて王女辺りは最初のころは呆然としていた。
ちなみに今ではきれいにあきらめている。
人間諦めが肝心だ。
いや、それは置いといて。
「なぜ……?」
眉をひそめ、問うのは王女・リリアーナ。
どうでもいいものとして扱われたから、だからこそ心を寄せたというのはどういう事だろう。
被虐趣味なのだろうか。
が。
「今でこそ『こう』ですがな、儂らも昔は、陛下にこのように近しく話すことなどなかったのですよ。しばき倒すなどもってのほか。――堅苦しいほどに、『臣下』だったものです」
苦笑し、ガイゼウスが言ったのは、そんなことで。
「「「「――は?」」」」
あんまりにも意外な話だったから、間抜けな声を漏らしてしまった四人。慌てて己の口をふさぐ。
しかしそれにガイゼウスはくすくすと笑って。
「相手は魔王陛下ですからのう。それも、何百年も君臨している。奔放で身勝手で、笑えばどこかとんでもないことをしでかす相図で」
恐れていたのですよ、と。
困ったように、ヤシロを見た。
自然視線は彼に集まり、その視線の中でヤシロは笑む。
「だって、ひとりはさびしいだろう?」