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こっちがびっくりです


「まあ、そんな感じだな」


 どんな感じだ。


 ――時は戻って現在、魔王城である。


 宰相・ガイゼウスが話し始めたヤシロとミコト・スラギ・アマネとのなれそめ。


 しかし話手は途中から全然自然でもなんでもなく魔王・ヤシロが主導権を強奪したために本人であった。


 いや、うん。


 騎士団長たちの突っ込みが内心留まるところを知らない出会いではあったと思うけど。


 何がどうなってヤシロたち四人がミコトたちへの多大なる信頼を寄せるに至ったか欠片も解明されてないんだがどうしよう。


 むしろミコトたちのヤシロの扱いって躊躇いがなさすぎるんだけど。

 容赦もなさすぎるんだけど。


 空から落下してきた得体のしれない物体、しかも人間大陸にいないはずの魔族、それも魔王。

 どこら辺がどうなって魔王と看破できたのかは置いといて。


 それに対してまさかの実験。


 そりゃミコトの薬に間違いはないけれど。逆に戦慄を覚えるくらい効くんだけど。


 そんなもの初対面のヤシロにはわからないだろうになんでそこで鷹揚に受け入れたんだ魔王よ。

 なおかつ好意的なんだ魔王よ。


 理解に苦しむ自由人クオリティである。


 ていうか。


「あの……家出って、最初におっしゃってましたけど……なんでミコトさんの真上に落下するような事態に?」


 そこのところの説明がなかったのを不意に思い出した騎士団長である。

 すると。


「ああ、それはだな、私は適当にそこら辺を飛んでいたのだが、」

「はあ」

「ちょっと自分で飛ぶのが面倒くさくなったのでな、」

「……はあ、」

「そこら辺の怪鳥を捕まえてそれに乗っていたのだ」

「…………はあ……」

「それがある山に差し掛かった途端驚くほど統制のとれた魔鳥の集団に襲われて、」

「…………」

「落とされた」


 うむ、と頷く魔王。乾いた瞳の騎士団長たち。頷きあって、ポツリ。


「ミコトさんかあ……」

「正確にはミコト殿の配下の魔物、ですのう」


 しみじみと呟いた騎士団長に宰相・ガイゼウスが笑う。


 そうだね配下だね。


 なんで配下がいるんだろうとかは一応説明がなされたんだけれども、それよりも言いたいことはただ一つ。


 全然違和感がないです。


 魔物を従える黒髪の麗人。


 お似合いですね。何も言われずとも一糸乱れぬ動きで主君の望みをかなえようとする、素晴らしいですね。


 ていうかあれだな、ヤシロとヤシロに不幸にも捕まった怪鳥、ミコトの配下のテリトリーに進入した瞬間に不審者=排除対象と認識されたんだな。


 魔王という強者を前にして怯まない忠誠心の高さよ。

 スラギとアマネと行動が全く同じです。素晴らしきかなミコト信者。

 種族の壁を軽々と破壊しております。


 ていうか。


「……飛べたんですよね。落とされたとしても、怪我など回避できたのでは」


 うっかり零れおちた疑問である。はっとして騎士団長は自分の口をふさぐが、しかしヤシロは気にしなかった。

 むしろ魔王城重鎮四名、誰も気にしなかった。


 いや、ガイゼウス以下臣下三名は目を眇めてはいる。

 でもその視線の先は、彼等の主君。


 つまりヤシロだ。


 なんでだ。


 騎士団長たちは首をかしげた。

 そこで。


「ああ、それはなあ、」


 ヤシロがあっけらかんと、ポリポリと頭を掻きながら笑って。


「びっくりしたんだ」


 そんな理由で魔族の頂点が軽々と負傷しないでもらいたい。










ここまでお読みくださってありがとうございます!

そしてすみません、これから更新ペースが二日に一回になると思います。

次の更新は明後日です。

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