始まりは日常でした
すみません、こちらは明日あげる予定だったんですが間違えてあげてしまっていたようです^^;
先程(15:45)間違いに気づきました。
このため本日は二話投稿になっています。読んでいない方は前話からお願い致します。
申し訳ございませんが教えていただきたい。
ミコトさんとはいったい何者なのでしょうか。
ミコト様と呼ぶべきなのでしょうか。
魔族重鎮の方々にミコトが全幅の信頼を寄せられている件につて。
一万歩譲ってヤシロはわかる。
だって彼はミコト信者だ。ミコトと名前を呼び合う仲だ。すなわち『この世で一番ミコトを愛している』という行くところまで突き抜けてしまったお方である。
為政者としてどうなのかというのはこの際置いておいて。
だがしかし。
――宰相・ガイゼウス。
苦労性な魔王のお目付け役。まともな感性を持っていると信じていた老爺。
その彼までが、……許可をした。
そして側近・アスタロトからも騎士団長の同志にして近衛隊長・ファルシオからも異論は出てこないこの現状。
さて、ではそれを踏まえて命題に戻ろう。
ミコト様とはいったい何者でございましょうか。
友好条約。
――これまでのことをきれいさっぱり水に流し、条件を先に確認するでもなく、ぶっちゃけ魔族にさほどの利益があるわけでもなく。
正直、騎士団長たちは条約が成るとは思っていなかった。
今回の目的は会談の成立。そして魔大陸の視察。
細くていいから繋がりと国交を持ち、双方の利点と妥協点を模索し、時間をかけて条約を結ぶつもりだったのだ。
だというのに大変軽い感じで了承された理由がミコト様の存在。
なんなの。ミコトがいればすべてが解決するの? ミコトは世界の理なの?
「え、えっと。……そ、それで、……よろしいのですか……?」
『ミコトに好かれているから』。
それを理由に安易な決断をして、本当に構わないというのか。
王女・リリアーナは再度尋ねる。
もちろん視線はガイゼウスだ。
いうまでもなく騎士団長たちの視線もガイゼウスだ。
さり気にアスタロトとファルシオの視線もガイゼウスだ。
「なあ、なんで宰相に聞くのだ」
気づいたヤシロが尋ねた。
が。
「よろしいのでしょうか宰相様」
リリアーナはぶれなかった。
視線はきっぱり、ヤシロを見ない。
ガン無視である。
自由人との三か月とちょっとの集大成がここに。
しかも。
「まあ、そういった反応になりますでしょうな」
当のガイゼウスが平然と答えた。
そうして。
「おい」
「あのお方たちからは何もお聞きになっておられぬのですかな?」
「ええ、特には」
「ちょ、だから、」
「まあ、それもあのお方たちらしい。――では、」
「なあ聞かぬか?」
「お話いたしましょうかの」
「……なあ、」
「――教えていただけるのであれば、ぜひ」
「……………」
ちょいちょい雑音が入った気がしたが、王女含めた四人は完全に無視。
もちろんガイゼウスを含めた魔王城側三人も完全に無視。
最終的に静かになったから良しとしよう。
そんなことよりも。
「――あれはそう、十三年ほど昔の事ですな」
話し始めたガイゼウスに、耳を傾け集中する。
だって聞きたい。魔族と魔国、そして魔王。
彼等との自由人三人組との過去。関わり。
――いったい何が、ガイゼウス達を自由人にそうまで心酔させるのか。
魔族にとって、『ミコト』はいったい何なのか。
知りたいのだ。
「始まりはよくあることですが、……」
厳かに、ガイゼウスは語り始める。
それは、
「陛下の家出でした」
それは『よくあること』だと駄目だと思います。