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信者は増殖中です


 いったい何が仕方がないのか。

『ミコトだから』ですべてが解決されてゆく不思議。

 そしてそれですとんと腑に落ちて納得してしまう人々。


 素直か。


 自由人ワールドの神秘である。


 ともかく。


「何を言われてこうまでなったのだ?」


『ミコトだから』で素直に納得してしまった魔王・ヤシロはにやにやと人の悪い笑いを浮かべてスラギとアマネに問うた。

 すると。


「えっ! えっ!」


 質問を理解した騎士団長たち、当事者であるのに直接ではなく間接的に問われるという羞恥プレイに真っ赤になって慌て出す。

 しかしにこにこと笑う金髪の悪魔は逡巡なく。


「あははっ、ミコトがねえ、団長たちのことは『結構好き』って~」


 さらりと言った。


「「「「ふわあっ!」」」」


 やめてええええ! とばかりに耳を塞いだ騎士団長以下四人。


 いい年した大人を含めて全員が全員、たった一人の自由人の気まぐれな一言にこれほどまでに浮かれあがっているということを今更ながらに自覚してしまったようである。


 哀れであった。


 が。


「……なんだと?」

「……本当でありますか」


 にっこりとしたスラギの言葉に、苦笑した宰相・ガイゼウスおよび近衛隊長・ファルシオを除いた二人。

 ――白髪の魔王と青髪の幼女の反応は顕著だった。


 にやにやと笑っていた魔王・ヤシロは真顔になり。

 もともと無表情だった幼女・アスタロトはすうとその大きな瞳を細めた。

 そして二人して非常に好意の感じられない視線を、騎士団長たちに向ける。


「「「「……え?」」」」


 冷汗、たらり。

 あまりの豹変に騎士団長たちはひきつった。

 が。


「……まったく、」

「……はは……」


 宰相・ガイゼウスはこめかみに手をあてがい、近衛隊長・ファルシオはあからさまに疲れた顔で笑う。


 なんだ。その怖い反応はなんだ。


 騎士団長たちは彼ら二人に必至で視線で助けと説明を求めた。

 しかし華麗に目を逸らされた。


 裏切者である。


 しかしそこに。


「あはっ、ヤシロ余裕ない~」

「なんだよ、自分がミコトに好かれてる自信がないのかよ?」


 けらけら、にやにや。

 人の悪い笑いを、金と赤茶の悪魔は浮かべて火に油を注いだ。


 騎士団長たちは真っ青になってばっとそちらを振り向く。

 そんな彼らに金と赤茶の自由人はひらひらっととてもきれいな笑顔で手を振って返した。

 確信犯の悪意に満ちていた。

 そもそも彼らは味方ではなかったという残酷なお知らせであった。


 何してくれてるんだこの自由人ども。その口縫いつけてやりたい。


 騎士団長たちは本気で思った。

 しかし口には出せない。出せるわけがない。


「「~~~~~っ!」」


 なぜなら目の前で、魔王と幼女が震えていらっしゃる。

 特に魔王。


 幼女・アスタロトの方はまさかの事実であったが、昨日の奇行からしてヤシロがミコト信者であることは確定している。


 彼らの間に何があったかは知らない、しかしミコトがヤシロの世界の中心へとなりあがっているというあり得そうであり得てしまったそれは揺るぎない事実であった。


「『嫌いじゃない』とかじゃなくてか……」


 ひっくい声で魔王は言った。


「『好き』だって~」


 無邪気の皮をかぶった金髪が答えた。


 黙れ悪魔。


 騎士団長たちは視線で訴えたが完全にスルーされた。

 そして落ちる沈黙、高まる緊張。


 魔王・ヤシロはそうして。


「~~~~ミコトっ! 私のことは『大好き』だろうっ!?」


 叫んでミコトに飛びついたのだった。






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