一問一答なのです
スラギ曰く屍じみている騎士団長たち四人。
まさしく暗雲背負って腐った空気を醸し出していて近寄りがたい。
なのに。
「気色悪いな」
ミコトは一言で切って捨てた。
誰が原因だと思っているのだろうかこの元凶様は。
「っ!」
あまりの言い草に騎士団長は屍から一転食って掛かろうとした。
が。
その瞬間である。
ふっ、と。
再び視界がぶれて、そうして。
――木漏れ日柔らかく、自然と手入れが調和し、気候も穏やか。
「「「「あ」」」」
そう、ここは魔王城。その客室。
イリュートの考え違わず、魔王城からユースウェル王国に行けるならその逆もまたしかりだった。
一瞬で。
……一瞬で!
茫然として屍二巡目に入っている四人をしり目に、自由人は各々宛がわれた部屋へと颯爽と姿を消そうとしている。
が、そこに。
「……………なんで、」
低く、低く、騎士団長の口から声が漏れる。自由人たちは足を止めて振り向いた。
騎士団長は。
「なんで! それができるのなら! 最初から! やってくれなかったんだミコトさん~~~~~!?」
腹の底から叫んだ。
叫びきった。
が。
「阿呆か」
にべもなかった。
「なんで!」
詰め寄る。しかしミコトは冷静に。
「あんたらが俺に要求したのは『魔王城への同道』だろうが。あんたらは俺に一度も『魔王城へ連れていけ』と言わなかったはずだ」
正しく言い切った。
そうだけど!
そうなんだけど!
だからって!
「できるのにやらないとか! せめて教えてくれてもいいだろう!」
知らないのにお願いしようがない。選択肢として提示してくれてもよかったのではないか? そうではないか? この虚しい三か月とちょっとの悪夢は何だったというのだ!
が。
「何を言っている。聞かれないことにわざわざ答える必要性など感じない」
そうだった、ミコトはそういう奴だった。
聞かれたことには素直に答えるが聞かれていないことまで自分から喋らない。
しかしミコトから言ってくれないと知りようもないから聞けるはずもない。
矛盾!
「うがああああああああ!」
騎士団長は頭を掻きむしる。
すごく愚かなものを見る目で見られた。
一瞬で冷静になった。
で。
「ミコトさん……ひどい」
騎士団長は涙目だった。
しかし。
「どこがだ。そもそも、あの頃アンタらにそれを教える義理がどこにあった」
黒髪の麗人はそれはもう、淡々としていた。
あんまりな言い草だった。
騎士団長は愕然として肩を震わせ。
「み、ミコトさんなんか、ミコトさんなんか……!」
プルプルと指をさして。
「ミコトさんなんか嫌いだ……っ」
子供のように涙目で睨んだ。
が。
「そうか。俺は結構あんたたちのことが好きだが」
ミコトは何処までも平然としていた。