表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
116/254

死屍累々です


「「「は?」」」


 声もなく崩れ落ちたのは騎士団長、それ以外の三人は呆然とした顔に驚愕をにじませて自由人三人を見返した。


「……は? ちょ、ま、……は?」


 混乱のあまり、王女・リリアーナはまともな言葉が紡げない。

 その間に。


「あー。お前らここに居たのかよ。連絡くらい寄越せよなー」

「何言ってるの、そんな無駄なことするわけないでしょ?」

「会えたんだから今更グダグダ言うな」


 サクサク自由人三人は自分たちの話を独自に進めている。


 ……三か月とちょっと。

 三か月とちょっとの期間を、自由人の暴挙に耐えながら辿り着いた魔王城であったのに、まさかの。

 まさかの一瞬で振り出しに戻された、そのショック。


 耐えがたいものがあった。


 騎士団長は動かない。

 自由人は談笑している。

 困惑の中、いまだ状況が理解しきれていない王女たちは自らの立ち位置を確かめるためにきょろきょろと視線をさまよわせ―――見つけた。


 見つけてしまった。

 そして硬直した。


 なぜって、三人の視線の先には、アレだ。

 此処が魔王城でも魔大陸でもなく『振出し』であるという揺るぎがたい証拠……。



 ユースウェル王国の王城が、見事なまでの白亜をさらしてそびえていたのだから。



 それはもう笑えるくらいにびしりと固まってしまった。

 が。


 ――次の瞬間。


「「「はあああああああああああああ!?」」」


 絶叫した。


 声をそろえた三重奏。

 あまりの音量に小鳥がバサバサと飛び立って木の葉が散った。道行く人々は眉をひそめて此方を見ている。


 しかしそんなことはどうでもいい。


「は? ……へ? な、なんで、戻ってますの? え? ……夢?」


 パクパクと口を開閉させながら、リリアーナは呆然と呟く。

 が。


「やだな、何言ってるの。現実にきまってるじゃない~」


 頭大丈夫? とでも言わんばかりの躊躇のなさでバッサリ切って捨てたスラギの一言。

 むしろ「馬鹿なこと言い出したなあもう」、とすごくアホ扱いされる勢いである。


 納得がいかない。


『やだな、何言ってるの』ってその台詞をアスタロトのバット借りてきてそのまま華麗に打ち返してもいいだろうか。


 何言ってるの? 何が起こってるの?

 夢? 夢ですか? 悪夢のような三か月と少しのあの旅路は紛うことなき悪夢だったんですか?


 ひくひく、ぷるぷる、顔面蒼白で王女は震えながら崩れ落ちた。


「な、んで、こんな、……幻でしょうか、」


 王女を支えることも忘れて零したのはサロメだった。

 しかしそれも。


「何言ってんだ侍女さん。現実だって言ったろ。なんで幻? 馬鹿馬鹿しいな」


 アマネが粉々に打ち砕いた。

 しかも何気に辛辣だった。

 サロメも王女の隣に崩れ落ちた。


 そしてここではた、と気付いてしまった青年騎士がひとり。

 自由人曰く、これは夢ではなく幻でもなく現実らしい。つまり海も大地も飛び越え一瞬で国を移動したということになる。

 それすなわち一瞬で魔王城からユースウェル王国へ移動が可能ということ。


 ……では逆もまたしかりという事ではないのか。


 ゼッタイそうだ。

 気づきたくなかった。


「……いつから……、これ、出来たの……?」


 茫洋とした瞳のイリュートがつぶやく。

 そしてそんな問いに当然のように。


「初めからだ」


 ミコトのわかりきった答えに、イリュートまでもが膝をついたのだった。

 その上ここで。


「あははっ、皆屍みたいになっちゃったねえ~」


 スラギの追い打ちが朗らかに響いた。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ