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自己アピールが肝要です


 だが、しかし。


「あはっ、目立っちゃうからねえ」

「お前は悪目立ちだろう」

「いや、どっちもどっちじゃね?」

「あははっ、アマネは逃げたもんね~」

「逃げたんじゃねえよ、巻き込まれるのを全力で拒否しただけだ」

「逃げたのと何が違う。お前もさっさと動けば俺は楽だった」

「だって俺あの人と話が合っちゃってよ」

「ああ、仲よさそうだったよね~、意外にも」


 とかなんとか、最初に横から口を出してきたスラギが回答をくれるかと思いきや素晴らしく方向転換して話は逸れに逸れていった。


 今やいったい何のお話をなさっているのでしょうか、全くわからない。


 目立つってそりゃ何もしなくても目立つ方々が今更何を言っているんだろう。

それでなくても『人間』という時点で一定の視線は集めるのだ。その上自由人というオプションまでついていれば男だろうが女だろうがもれなく悪目立ちである。


 それについては確かに、「どっちもどっちだ」というアマネの言葉は正しいといえよう。

 しかしその次がまた不可解である。


 アマネが『逃げた』とはこれいかに。


 珍しくミコトが完全にスラギについたところを見ると、それが真実であるにしろないにしろ、『逃げた』に類する事実は存在したのであろうけれども、自由人の仲間で魔族に一歩も引かないどころかスラギと競って消し炭にするアマネさんがいったい何から逃げるというのであろう。


 想像力の限界を感じた。

 そしてだ。


 一番分からないのは最後。ていうかまだまだ『それ』について自由人たちは話し合っていて脱線したまま完全に常識人の存在を忘却の彼方に街を突き進んでるんだけど。


 むしろそんなサクサクした歩みにつられて騎士団長たちも魔都・カンナギにナチュラルに踏み込んで歩き始めてるんだけど。


 着実に近くなってゆく大樹・世界樹から成りし魔王城。近づけば近づくほどに圧巻である。


 ともかく。


 単純な疑問。

 ……『あの人』って、……誰。


 自由人と仲良くできる神経を持った猛者であることしかわからない。


 アマネはミコトやスラギと違って人の名前は覚えて呼んでくれはするものの、他者に対する線引きはたいへんはっきりしていて激しく心を傷つけられた記憶が騎士団長には新しい。


 その彼と、『話が合う』。

 どのような奇特な人物であろうか。

 そして個人名が出てこないのに話が通じているのはテレパシーなのだろうか。

 それとも普段からのミコトやスラギの言動により開発された特殊能力であろうか。


 ていうかだ。


 騎士団長の、最初の質問。挙手までして律儀に投げた質問である、『もう少し詳しく』が完全に忘れ去られているんだけどどうしよう。

 もう一回聞くべき? もう一回聞くべきなのかこれは。


 騎士団長は視線を自由人から常識人な仲間たちへと向けた。

 菩薩のような微笑みと共に首を横に振られた。

 うん、騎士団長もここでもう一回質問しても『なんでわからないんだ』とかいう理不尽な視線にさらされることが痛いほどわかるからもう一回聞くのはやだなって思ってた。


 多分彼らの中ではスラギの最初の言葉、「目立っちゃうから」で説明終了したことになってるんだね。


 なにも終わってないしさっきミコトが言ったことと何も変わってないし全然理解できてない騎士団長たちは欠片も悪くないのは自明の理だけれども、そうなんだね。


 なぜだろう、こんなにも自由人のことを理解しているのにそれでもわからないなんて自由人とは奥が深い生き物である。


 その奥が深い生き物たちは常識人などどうでもいいとばかりにどんどん進んでいくんだけど。


 ホント、進んでいく。どんどん進んでいく。顔面偏差値が高い三人組、ミコトとスラギがアレなもんだからアマネが両手に花かと思いきややっぱりミコトになつく金と赤茶は平常運転である。

 そんな三人は何処までも振り返らないうえにためらいがない歩みであった。


 うん。


 とりあえず少しはこっちの存在を思い出してもらうべく努力をしなければならないのだなと理不尽な自省をさせられた騎士団長たちだった。












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