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夢紡ぎ師の物語  作者: 藍川
3/7

遅くなってすみません。

今回は、ちょっと文字が多くて、読みづらいかもしれません。

 ぼくがその紙をルディに渡すと彼は、何か呪文のようなものを唱えだした。

 その声に合わせて、〈大切な人に会える夢〉の糸は、少しずつ明るく光っていく。

「魔法?」

 思わず、そう口に出すと、ルディは謎めいた顔で、小さく笑った。

「秘密、です。『紡ぎ師』は、ヒミツシュギ、ですから」

「『紡ぎ師』ってことは、他に『夢紡ぎ師』のような人が、いるってこと、ですか?」

「はい。『星紡ぎ師』と『恋紡ぎ師』、が」

「へぇ……」

「それ以上、は、秘密、ですけど」

 そう言いながら、ルディは唇に人さし指をあてて、にっこりとした。そのしぐさは、ルディみたいな年の子がするようなことではない気がした。

「では、契約を、始めます」

 目を瞑ってください、とルディは言った。

 ぼくは、ルディを見つけたときのように、目を閉じた。

「夢紡ぎ師見習い、ルディ=トラウムは、夢紡ぎ師、として、」

 ルディの声が、小さく響く。



「ここに、藤川季との、契約を、結びます」



 ルディが言い切ったとたん、目の前が、一瞬明るくなった。でも、すぐに真っ暗に戻った。

「目を、開けてください」

 そう言われて、ぼくはゆっくりと目を開けた。

 目の前にあったものは、さっきと同じもの。

 けれど、一つだけ違うものがあった。それは、契約書みたいな、紙。

 さっきの紙は無くなって、代わりに幅が太い銀色のリボンがあった。なにか、文字が書いてある。

 なんと書いてあるかは読めなかったけれど、さっきの紙と同じ言葉みたいだった。

 ルディは、「夢」の糸をリボンと同じくらいの長さに切って、残りの糸をトランクにしまった。

「腕を、出してください。夢を、結びます、から」

 その糸は、最初に見たときよりも少し、明るく光っていた。

 特に何かあるわけでは無かったけれど、なぜか、ぼくは糸から目が離せなかった。

 何というか、糸が気になって仕方がなかった。糸に呼ばれている感じがした、と言うべきだろうか。

 だから、ぼくの腕に糸を結んだルディが、ろうそくの火を消して、出していたものをトランクにしまっていたなんて、気付かなかった。

 ぼくがそのことに気付いたのは、少ししてから。その時、ルディはリボンをマントのボタンに結び付けていた。ボタンは金色で、糸車のようなレリーフが付いていた。

 結び終わると、ルディはトランクを持って立った。

 闇に同化するように、消えていくように見えた。

「待って」

 思わず、声を出した。ルディが、びっくりしたようにこちらを見た。

 まだ、消えてはいなかった。

「え?」

「ルディ……さん、に会いたくなったら、どうすれば、いいですか」

 そう言うと、ルディはふわりと笑った。

「布団に入って、目を、瞑って、ください」

 質問に答えてもらえなかったし、何がしたいのか分からなかったけれど、とにかく従ってみることにした。

 きっと、彼の中ではつながっているんだろうから。

「また明日、ここに、来ます。もし、どうしても、会いたくなったら、強く、願って、ください」

 その言葉が聞こえたあと、気配が消えた。

 ぱっと目を開くと、そこには誰もいなかった。

 ただ、腕の糸が光っているだけだった。でも、それだけで、なぜか落ち着いた。

 だから、ぼくは糸を眺めながら、ベッドの中でぼんやりしていた。



                 ☆



「……季くん?」

(わっ!)

 伯母さんの声がした。ぼくがちゃんと寝ているか、確認に来たんだろうか。

 なんとなく、糸を見せてはいけないという気持ちになって、手を急いで布団に潜らせた。

 それから、息を止めて、寝たふり。

「音がしてたから来てみたけど……あら、寝てるじゃない」

 伯母さんは、ぼくを一瞥すると、すぐに背を向けた。

 でも、ぼくには、伯母さんが出ていくときに呟いたひとりごとが、聞こえてしまったんだ。


「……お母さんも、何を考えているのかしら。バカな娘の子を、その姉に押し付ける……男の子の食費はバカにならないのに……」

  

  バタン。

 無情にも、伯母さんの言葉の途中で、ドアは閉まった。

 でも、たったそれだけのことで、分かってしまった。

 伯母さんは、ぼくが来たことが、

 ……嫌、なんだ。

 善意で引き取ったんじゃない。言われたから、嫌々引き取ったんだ。

 そうじゃなきゃ、「押し付ける」なんて感じないから。

「息子がいなかったから、嬉しいわ」そう、言ってくれたのに。



 何で?



 何で、ぼくが嫌なの?

 お金がかかるから?

 ()()、バカな妹の子供だから?

 母さんは昔、笑って言った。

「お姉ちゃんは、私がバカだって言い続けたわ。結婚式の日も、離婚した日も」

 母さんは、バカじゃないのに。何でも、笑って解決してくれたのに。

 伯母さんは、ぼくがたった一人、頼れる人だったのに。

 何で?

 何で?

 何で……?




書き溜めていたものと少しずつ変わってきたので、新しく書き直さなくてはいけません。

なので、続きは一週間後くらいかもしれません。

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