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ストーカーにつける薬はない模様


 あのパーティーで恥をかきまくったというのに、どうしてまだルナーシャに受け入れてもらえると思うのかしら?

 別にルナーシャとケビンが結婚しなくても、エンディングでは困ることがなかった気がするけれど……。

 国中をさがせばケビンの好み(合法ロリ)にドンピシャな女子なんて他にもいると思う。

 合法ロリならいいのよ、合法なら。

 違法ロリだけは殺してでも止める。


「わたくしたちは応接間で待たせていただきますわ。殿下にお会いする用事もありませんし。なにより、ディブレ様は魔族国の族王様ですのよ。招待状もなくお茶会に急遽お招きするなんて、ずいぶんと無礼だとは思いませんの?」

「そ……それは……」

「ディブレ様は陛下にお話がありますのよ? 陛下を蔑ろにするかのようなことをさせるわけにはまいりません。ケビン殿下にはそのように伝えてくださる?」

「し、しかし、お茶会には陛下も参加されるとのことなので……お待たせするよりは、お茶会にお連れした方がよいのではと、殿下からのお心遣いで……」


 ……ほぉーーーーーーん?

 確かに陛下との約束は一時間後。

 つまり、今からこの一時間、ケビン主催のお茶会に参加中ってことなの。

 まあ、確かに息子の婚約者候補探しも兼ねたお茶会だものね。

 陛下がいても不思議ではない、か。


「はあ……」

「レイス嬢、アーレシュア国王の時間を割いてしまうのは申し訳ない。そのお茶会とやらに参加すれば話ができるのだろう? 私は一向に構いませんよ」

「そうですか?」


 もう一度溜息を吐いてしまう。

 無表情の私の溜息は、さぞ恐ろしかったのだろう、士官が震え上がるのが見えた。

 ディブレがアーレシュア国王の都合にも配慮して親切心を出したせいで、表向きの断る理由がなくなってしまう。

 ルナーシャの方を見ると、男梅みたいな顔になっている。

 とてもヒロインとは思えない顔だが、『覇王の集い』ではデフォ設定差分の一つだ。

『覇王の集い』の様子のおかしい部分の一つなのだが、絶対この差分いらないでしょ。

 なんでこんなに使う機会があるのよ。

 つーかそもそもヒロインに男梅顔の差分は入れるなよ。

 そんなだから乙女ゲームとして様子がおかしいって言われるんだよ。

 そういうところが面白いから好きだったんだけどさあ!


「ルナーシャ、いいかしら? わたくしとアーカーはディブレ様の補佐をしなければならないから、あなたとアルカにはもしかしたらケビン殿下のお話し相手をお願いしなければならなくなるかもしれないのだけれど」

「すっごい嫌」

「宿で待っている?」


 案の定、その男梅の顔のまま拒否。

 それなら城から出て宿で待っていればいい。

 と、思ったのだが、ルナーシャとアルカは顔を見合わせてから顔を横に振る。

 別に嫌いな人にわざわざ会いにいく必要もないと思うのだけれど。


「もう一回、ガッツリ振ってやるわよ! ……いや、でももしかしたら諦めてるかもしれないし……?」

「でも最近まで使者や手紙がひっきりなしだったじゃないか」

「あ、そうか。じゃあやっぱりまだ殿下はわたしのこと諦めてないのか。キモ」

「……しつこい男って気持ち悪いって思われるんだよね。じゃあ僕もあまりレイスにしつこくしすぎない方がいいのか……」

「え……!? い、いやいや! アルカは気持ち悪くないよ!? ね、レイス!? アルカとなら結婚したいよね!?」

「誤解を招くような言い方はやめなさい、ルナーシャ。わたくしだってしつこい男は嫌いよ」

「「う」」


 まあ、今のところアルカはケビンのような執拗さは感じないから、別にいいんだけれど。

 それでもアルカがケビンのようになると思うとキモいな。

 やっぱケビンみたいなストーカーが好きな女子はいないと思う。

 だからアルカには健全な主人公でいてほしいな。


「では、中庭にご案内します! こちらです!」


 私たちがお茶会に行くと言ったせいか、士官は急に生き生きとし出して足早に中庭へと歩き出す。

 可哀想に、きっとこの士官はケビンにくれぐれもルナーシャを連れてこい、と言い含められていたのだろう。

 本当に自分のことしか考えてない男だわ。

 通路を進むと渡り廊下が見えてくる。

 その奥に、豪華な飾りが見えてきた。

 巨大な花瓶に大量の花々が飾られ、真っ白な椅子とテーブル。

 色とりどりのドレスで着飾った美しいご令嬢たちが上品に微笑みながら、あるお茶とお菓子を楽しむ。

 囀るような笑い声が時折聞こえてきて、近づくと国王陛下と王妃様、そしてケビンがこちらに気がついた。

 陛下の驚いた表情は、すぐに渋いものになる。

 きっと私たちの姿を見て、ケビンの思惑を悟ったのだろう。

 でももう遅い。仕方ない。

 私たちは、ここでケビンに引導を渡す。


「おお! ルナーシャ! やはり来てくれたのだな!」


 誰よりも先にルナーシャに近づくケビンは、両手を広げて嬉しそうに微笑む。

 令嬢たちの顔から笑みが消えて、不安と不愉快さを滲ませる。

 だいたい同年代のご令嬢たちだもの、学園でルナーシャを差別していた方が多い。

 やっと平民の娘がどっかへ消えて、平民に肩入れする無愛想女が婚約を破棄して消えたところ。

 自分たちの出番が来た、と喜んでいたところにまたこれでは彼女たちの顔もそんな顔になるだろう。



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