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ゲームはエンディングを迎えたはずなのに(2)


「そんなことありません! 自国の令嬢たちを信じて差し上げてください! 殿下と結婚して国母を目指される令嬢はきっとたくさんおりますわ!」

「それはそうなのだけれど、条件が一番いいのはやはりあなたなのよ」

「おい! さっきからなんか私との婚約を嫌がっていないか!?」

 

 しまった、あからさまに嫌がりすぎたか?

 ケビンに勘づかれた。

 でも普通に嫌なもんは嫌だもの。

 別にケビンのことはキャラクターとして(・・・・・・・・・)嫌いじゃなかったけれど、ゲーム(・・・)と違いすぎるケビンは(・・・・・・・・・・)好きじゃない。

 なんでこんなにゲームと違う(・・・・・・)のかしら?

 ルナーシャが学園での攻略(・・・・・・)をサボったから?

 

「わたくしが殿下に不釣り合いであると陛下や王妃様にご説明しているだけです」

「チッ。そうか」

 

 なぜ舌打ち。

 というか、王太子が舌打ちだなんてはしたない。

 いったいどこで覚えてきたのかしら。

 心なしか国王陛下と王妃様がケビンを見下ろす表情がずいぶんギャグ漫画でしかみないような忌々しいものを見るような顔のような気がするんだけれど、メガネの度数が合わなくなったのかしら?

 戦闘用のものをかけてきたから、度数はだいたい合っていると思うのだけれど……。

 カチカチとメガネを何度か押し上げると、二人の表情は困ったような表情に戻っていた。

 やはり度数が変わったのかしら?

 暇が出たら計り直しましょう。

 

「あ! ルナーシャ!」

「魔王は討伐したのだからもういいですよね!? わたし、もう実家に帰らせていただきます! レイスを国外追放するって言うんなら、レイスも一緒に私たちの故郷に行こう!? うちの村、国境ギリギリだからうちの村ならギリ国外だよ!」

 

 その理屈通るかなぁ?

 壇上から駆け下りるルナーシャは、ケビンを冷たい眼差しで睨みつけ、真っ直ぐに私とアルカのところに戻ってくる。

 その様子に顔を歪ませるケビン。

 なぜケビンはこんなにもルナーシャに執着しているのかしら?

 ルナーシャが『聖者の紋章』を持つ女性――聖女だから?

 

「ま、待て、ルナーシャ! 君には私の妻となり、国母としてこの国を支える役目が――」

「絶対嫌です」

 

 キッと睨みつけ、いっそ清々しいほどきっぱりと言い放つ。

 貴族ではありえないほどの断言っぷりに、貴族たちが顔を見合わせるほど。

 ただ、それはルナーシャが貴族社会にそのくらい馴染めない性格だということと、ケビンのことが嫌、ということに他ならない。

 乙女ゲームの主人公(・・・・・・・・・)が、なぜこうも攻略対象(・・・・)に嫌悪感を示すのか。

 ルナーシャを追って壇上から下りるケビンに、陛下が「もうやめぬか! ケビン!」と制止する。

 

「し、しかし父上……」

「はあ……! ともかく落ち着いて、別室でお待ちいただけまいか、聖女ルナーシャ、レイス嬢。愚かな息子の主張は我が認めたものではない。非礼の詫びもかねて、一度話し合いの席を設けたい」

「嫌――」

「かしこまりました」

 

 ルナーシャが口を開きかけたので、慌ててアルカと一緒に口を塞ぐ。

 陛下に向かって子どものような言い方で拒否はよくない。

 陛下は話し合おうとしてくださっている。

 このパーティーだって、陛下たちが時間とお金と人員を割いて開催してくださっているのだ。

 ルナーシャとアルカの功績を称賛するため、という名目でこの双子とお近づきになろうと参加した貴族たちも遠路はるばる旅費を使って来ている。

 彼らの労力を無駄にするのだ。

 これ以上騒ぎを起こして、パーティーそのものを終わらせてしまうのは心苦しいどころではない。

 再開ができるよう、サクッと話を済ませてしまおう。

 チラリと会場の中を見回すと、私を睨む母と父の姿が見えた。

 ワーカホリック夫婦が無理矢理休まされて参加させられたパーティーでこんな騒ぎを起こして、という責めるような視線。

 溜息を呑み込み、アルカにルナーシャを頼み両親の方へ向かう。

 

「お父様、お母様、行ってまいります」

「いや、婚約はトゥワイエット家にも関係のある話だ。一緒に行くよ」

「ええ」

「――ありがとうございます」

 

 二人とも声をかければ笑顔で対応してくれる。

 しかし、目は笑っていない。

 一緒に暮らしてきたからわかる。

 これは『手間をかけさせて』という顔だ。

 私の――『レイス・トゥワイエット公爵令嬢』の両親はゲームの設定(・・・・・・)から『娘に興味のない仕事中毒者』だった。

 ケビンはどう見てもゲームと違う(・・・・・・)けれど、ゲーム通り(・・・・・)なところもある。

 

 そう、この世界はゲームの世界。

 RPG乙女ゲーム『覇者の集い』の。

 そして“私”は正式版主人公にしてヒロイン、ルナーシャ・ピュアジーの“ライバル役”であり“親友ポジション”の悪役令嬢。

 どちらになるかは主人公の選択肢次第だが、私自身は敵対するつもりもないから主人公たちに協力的な態度を守り続けた。

 その結果、主人公たちにはずいぶん懐かれた自覚はある。

 好かれる分には嫌な思いはしなかったからいいんだけれど。

 レイスルートのエンディングもあるから、それは構わない。

 しかし、両親との確執が解決するストーリーは用意されておらず、私が生きているこのゲーム内の現実でも和解できそうになかった。

 私自身が転生者であるせいなのか、生まれた時からずっと“他人”という感じが拭えないから、もうそれでもいいと思っているけれど……。



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