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双子の実家


 レイス・トゥワイエットは孤独だった。

 でも、“私”は前世『覇者の集い』をプレイしていたから色々納得もしていたし孤独は感じなかった。

 前世の家庭も荒れていたから、家族愛なんて信じていないもの。

 まあ、でも……ルナーシャとアルカ、そのご祖父母の家族関係は良好そうでよかったと思う。

 やはり主人公たちは愛されていないと物語として成立しないものね。

 ……本当に、転生したのがレイス・トゥワイエットでよかった。

 もしも主人公のどちらかだったら、きっと“愛される”ってことに悩んだと思う。

 どう反応していいのか本当にわからない。

 ルナーシャにも、アルカにも、学園で世話を焼いて懐かれたのはいいのだけれど、魔王討伐の旅の最中で何度か庇ってからますます懐かれてちょっとこちらが困惑するぐらいになってきているんだもの。

 特にアルカ。

 物静かで妹想いな主人公のはずなのに、私をどことなくだが“女の子扱い”してくることが増えた。

 

「あ、レイスの荷物持つよ」

「載せっぱなしでいいわ。明日には魔族国に立つつもりだもの」

「え!? 明日!? もっとゆっくりして行ってもいいのに……というか、治安は悪くないと思うけれど、それでも載せっぱなしは心配だよ。家の中に置いておいてよ」

「……わかったわよ」

 

 盗まれても構わないモノしか入っていないけれど、だからと言って放置していいものでもないか。

 アルカが私のカバンを持って家の中に入ると、おばあさんが「あらあら、ルナーシャの手紙にあったよりも別嬪さんじゃないの」と私を見ながら言う。

 ルナーシャに比べればまあ、美人系ではあるからな。

 

「ありがとうございます。奥様もとても若々しく、健康的で羨ましいですわ」

「あらあらあらあらあらあらあら!」

 

 ただ、愛想笑いで返すことがレイスにはできない。

 なぜなら表情筋が死んでいるから。

 だから真顔で、抑揚のない声で正直な感想を返す。

 実際ルナーシャたちのご祖父母は高齢には見えないほど健康で若々しく見えるもの。

 だがそれは余程おばあさんには嬉しかったのか、口に手を当てて頬を染め、肩をバシバシ何度も叩かれてしまう。

 

「お世辞でも嬉しいこと言ってくれるわねぇ! なんて優しい子なのかしら!」

「でしょー!」

「レイスは美人だし頭もいいし気遣いもできるし勇敢だし貴族なのに偉ぶらないし優しいし、本当に非の打ちどころもない人なんだよ!」

 

 おいおい、この双子ちょっと私のこと好きすぎないか?

 口数少ない設定のアルカがこんなに喋っている。

 まあ、きっと数年ぶりに帰る実家でテンションが上がっているんだろう。

 そこはかとなくご祖父母も驚いているように見えるし。

 

「それで、魔王を討伐したってことはルナーシャとアルカはこれからディニーラでなにをするんだい? もう王都に戻らなくていいの?」

「うん! これからはレイスと一緒に魔族国の復興を手伝うの!」

「え?」

 

 テーブルとイスを用意してもらい、全員が席に座ってからご祖父母がルナーシャとアルカに今後のことを聞く。

 その返答に声を出して驚いたのは私だ。

 

「あなたたち、ついてくる気だったの?」

「え? え!? 置いていく気だったの!?」

「当たり前じゃない。あなたたちの望みと褒美は故郷に帰ること。魔族国への派遣は私に課せられたものよ」

 

 まさかルナーシャとアルカが私についてくるつもりだったなんて。

 私が言い返したのが不満だったのか、大きく口をあんぐりとしていたルナーシャが「やだ! 行く!」と駄々をこね始めた。

 思わず頭を抱えて溜息を吐く。

 

「ルナーシャ様、今回のレイス嬢が魔族国へ派遣、ただ命じられたものではないのですよ」

「え? どういうこと?」

「我々が同行した時点で国の問題が関わっているのはなんとなくわかるかもしれませんが、レイス嬢が魔族国へ派遣されることになったのは王位継承権が大きくかかわっています。レイス嬢は王位継承権が第三位。ご母堂が既婚でご自分の仕事に誇りを持っておられることもあり、事実上ケビン殿下に次ぐ第二位にも等しいのです」

「え? え?」

 

 私の代わりにエルワーズが説明をし始める。

 まあ、そうなのだ。

 一応あの話し合いの席にいても平民出身のルナーシャたちにはわかりづらかったかもしれないけれど、今回の派遣、事実上”避難”の意味合いが大きい。

 今回私は『聖者の紋章』を持つ者たちと魔王討伐を果たした。

 王姉の母は王位継承権第二位だがすでに公爵の父と結婚して継承権は返上の話が進んでいる。

 で、事実上王位に近いのは王の実子ケビンか私、ということ。

 そして今回の魔王討伐という功績で、一気に私に王位を、という声が増える可能性が高まった。

 なんならそれを先導しているのが他ならぬ我が両親。

 陛下と王妃様は、そこまでご存じないようだったけれど。

 でも私にそのつもりはない。

 アーレシュア王国は東の大陸最大の王国。

 そんなもの、背負う覚悟なんてない。

 やればできる自信はあるが、転生してのんびり暮らせないなんて普通にだるい。

 魔族国でやりたいことをやりたいようにやる方がいいに決まっている。

 そもそも愛国心とか皆無だし。

 前世で遊んだゲームの世界だから、世界への愛着は強いけれどね。

 だからこそ”世界全部”を楽しみたい。

 アーレシュア王国だって広いけれど、そこに閉じ込められて命を狙われ続けて妊娠出産公務激務を押しつけられるなんて嫌に決まっている。



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