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File No.18 新橋に張られた結界! 消えた侘助


ヒューマンドラマ〔文芸〕2026/04/28(火)88位

ランク入り、皆さんのお蔭です、ありがとうございます


 

 *


 嬢ちゃん、いまはまだ目覚める時でない


 (うち)に眠らせた、愛、みずから殻を破るまではな



 人の世は騒がしい


 さかしらな欲、思いがけない徳


 すべてを(いと)しんでおっては疲れてしまう


 すべてを()んでおってはおのれが()せる


 時に人であれ、時にそれを忘れ


 思うままに暮らせばよい


 正義を(うた)うもの、時に悪しきものとなる


 美しく見える夢よ、血の上に()かれてはいないか


 見定めよ、そのやわらかな心で


 侘助(わびすけ)、ここに祈る、(まも)


 *


「あれ、ワビさん、ワビさんったら」


 イチがアパートの部屋に一人、座っている。


「あー、全力で祈っちゃったんだね、また帰ってこれるのかなあ」


 あぐらをかいて額に手をやっている。


「ボクを現世に残したんだ」




 香純(かすみ)も自分の住んでいるロフトにいた。


(人に(けん)を打ったのは初めて……べつにそんなことしたくないけど)


 両方の白い手のひらを見る。


(通じないもんだなあ、おじいさんや、明梨(あかり)を守りたくても、これじゃダメだ)


『そんなんじゃ、(だい)の男は倒せないんだ』サンジの叫びが残っている。


 中学生のカラテ教室程度では人体の急所やそれを穿(うが)つ技術は教えない。


(サンジもバカだよね、あたしを守ろうとするなんて)


(でもなんであんな……おじいさん…おじいさん?)


 騒動の原因はなんだったのか、なぜ自分は奇妙な老人を受け入れていたのか。


(たしか……ワ……)


 その顔が浮かんでこない。




綺羅(きら)』の店に行くと、明梨が先に来ていて開店準備をしていた。


「ねえ、最近ずっとおじいさんが来てたよね?」


「おじいさん?」


 拭き掃除の手を止めて、明梨が首をかしげる。


「サンジさんがおじいさんじゃ可哀想ですよ? ほかの常連さんも……一番上で50代くらいでしょうか」


 言われてみると、先刻よりさらにその人物がいた感触がなくなっている。


「うん……そうだったかもしれないな」




 新橋の夜はもう初夏で、開店した7時も薄く夕暮れの気配が残っていた。


 しばらくしてミチヨが従者を連れて現れ、常連の2人が来た。


 いつものように遠慮がちにサンジが入ってこようとして、ミチヨを見て入り口で固まっている。


「サンジさん、こっち来てくださいよ友だちじゃないですか」


 彼女の友人認定はどのような仕組みなのか。


(たまらんなー、真紀(まき)でも来てくんないかな)


 サンジの男気(おとこぎ)はよほど非常事態でないと発動しないようだ。




 誰も老人の行方を()く者はいなかった。




香純「考えるな、感じるんだ……爆裂五点掌!」

明梨「もうちょっと、こう、乙女の祈りとかで」

サンジ「まだ終わらねえみたいだよ」

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