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転生ヒロインはヤンデレ幼なじみに気付かない  作者: 沙月
エピローグ:その後のお話
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ヤンデレ幼なじみの幸せな生活


どこにでもある、そこそこ栄えた平和な町。

 


何か有名な特産物がある訳でもなく、何か大きな目玉となる様な文化がある訳でもなく、交易の要だとか、そういう大事な場所でもない。そこに住む人達も殆どがいたって普通の人間だ。唯一いた変わり者は既にこの世を去っている。






そんな“平凡”を体現したかの様な町に、暫く前、少し変わった二人組がやって来た。






なんと別の国から来たというその二人組は、何やら訳アリのカップルであった。少女の方はルミナ、少年の方はアレクという。




町の人々は、はじめこそいきなりここに住み始めた見知らぬ人間を警戒したものの、直ぐに悪人ではないと分かった。



居候している店の手伝いを行い、積極的に町の人々と交流し、時には困り事も解決してくれた二人はあっという間に町に馴染んだ。






彼らの身の上話を聞いた訳ではないが、その言動からこの国まで駆け落ちしてきたのだろうと察した町民達は、寧ろ積極的に彼らの世話を焼いた。



商品をサービスしたり、お裾分けをしたり。二人が家を買った時は引越しも手伝った。町で気味悪がられていた変人の家だった所だが、町民にとって癒しとも言える礼儀正しく親切で、優秀で、初々しいカップルの為ならば元変人の家に出向く位はなんのその。




引越しが終わった後も、畑仕事を教えたり、手伝ったり。兎に角二人の世話を焼いた。お陰で彼らは快適に暮らしている。そして幸せそうな二人を見て、町民達も心が和やかになった。






今日も今日とて買い物に来た二人に、町民達は「元気かい?」と挨拶をしたり、「これ持ってきな」と野菜や肉をお裾分けする。



二人はそんな町民達に恐縮しつつも、「ありがとうございます」と丁寧にお礼を言って応えてくれる。それを見て町民もまた笑顔になる。








絵に描いたような幸せな空間。その中心にいる少年___アレクは、笑顔の裏で思う。









____あぁ、なんてチョロくて楽な人間達だろう、と。


・・・・・


アレクとルミナが暮らす町、ベネル。ここに根を下ろしてからというものの、アレクは常にご機嫌だった。






何せ愛しいルミナとは四六時中一緒。なるべく愛想良く接していた事もあって、あっという間に町にも馴染んだ。所々で訳ありな様子を見せれば、お節介な人達が率先して世話を焼いてくれる。





アレクは自分達の事情を事細かに語ってはいない。けれど、家族と引き離され、その先で酷い目に遭った様な素振りを見せれば、町民達の同情を引ける。





そして如何にも訳アリの男女なんて暇を持て余した奥様方にしてみれば良い話のタネである。町の中でも富裕層に位置する人々は、勝手に二人の事情を想像し、その想像をさも事実であるかの様に広めた。噂は富裕層から彼らに仕える使用人へと広まり、やがて町中へと広まる。








____アレクの思惑通りに。







世話になっている店がコタローの知り合いというだけあって、富裕層と関わりが深いのが功を奏した。お陰で店の手伝いをしているだけで富裕層との関わりが持てる。加えて、必死に仕事に勤しむ様をこれ見よがしに見せれば、より一層彼らの同情を引ける。





富裕層を味方につけられるのは有難い。ただの噂でも、社会的地位が高い者が話せば不思議と説得力が増す。そうでなくとも、この国に身寄りのない自分達にとって強力な後ろ盾になる。富裕層のお気に入りというだけで、彼らの反感を買うのを恐れた人々や、彼らにゴマを擦りたい人々が勝手に気を遣ってくれる。勿論、そういうの関係なく単純に善意から優しくしてくれる人も居る。







お陰で平和に暮らせている。たまに世話を焼かれ過ぎて鬱陶しくなるが。









二人で暮らす家も手に入れた。町から離れたこの物件は、なるべく周りに他人が居ない空間でルミナと過ごしたいアレクにはピッタリだった。







___使えるようになるまで少し苦労したけれど、それを補って余りある位幸せな生活を送れている。





綺麗に整えられた室内を見ながら、アレクは満足そうに微笑む。







この家の前の住人は変人だった。彼は研究者だったが、高慢ちきで、他人を見下し、人を寄せつけない性格のせいで町の人から嫌われていた。




「自分はお前ら凡才とは違う」と口癖のように言っていたが、研究者としてはパッとしない存在で、何か大きな発見をしたとか、世界が変わるような研究品を作り上げた、なんて事もなく、特に何の成果も出していない。そのくせ人を見下すのだから、嫌われるのも当然だった。





彼は実家が太かったので、生活には然程困らなかった。時折仕方なく文章作成の仕事や経理の仕事をこなし、生計を立てていた。

読み書きや計算が出来る者がそれほど多くないこの国ではそういった仕事は中々高額で、実家の援助も含めれば研究を続けても問題なく生活出来た。







そうして彼はこの家で人とそれほど関わらずに生き、この家で一人で死んだ。





嫌われ者の変人が暮らしていた家。立地も良い訳ではないその家に住みたがる物好きは居らず、長い間空き家だったその家をアレクが買い取った。






碌に掃除されていなかったらしく、家の中は埃まみれであったし、変人が遺したであろうおかしな魔法薬だとか、研究に使っていたであろう魔物の素材が腐敗した状態で転がっていたり、それは散々であった。ここを買い取った事を少し後悔した程だ。





とはいえ、価格といい、立地といい、アレクにこれだけ合致する物件はこの町には他にない。折角町民達を籠絡したというのに、別の町に拠点を移すのも面倒だ。アレクは人を使って徹底的にこの家を洗浄する事にした。







家を買った旨を伝え、しかし思った以上に荒れていて一人じゃどうしようもない。けれどサプライズにしたいのでルミナには手伝いを頼めない。




町の中、酷く困った様子でそう言えば、直ぐに人手を確保してくれた。お陰で家の洗浄は迅速に終わり、更には荒れ果てていた畑までも整えて貰った。







そうして二人の家を手に入れたアレクはそれはもうこれまでにないくらいご機嫌だった。念願のルミナとの愛の巣を手に入れたのだ。畑もあるし、町から離れているだけあってちょっと歩けば直ぐ大自然に辿り着き、そこで動物や魔物を狩る事も出来る。アレクとしてはルミナを町へ出さず、このまま監禁して文字通り二人だけの世界に入っても良かったのだが。







「引越しお疲れ様。お祝いの料理持って来たから、よかったら食べて!」




「アレクさん、ルミナさん、ご機嫌よう。こちら、お祝いの品です。お部屋の雰囲気に合うと良いのだけれど」




「うちの店で余った食材だけど、良ければ貰ってちょうだい!」







町民の好感度を上げすぎた弊害として、引越して早々次々に来客がやって来てしまった。町から距離があれば気軽に家には来ないだろうと踏んでいたのだが、予想外だ。





しかしルミナが嬉しそうに受け入れている以上、追い払う訳にもいかない。幸い「邪魔したら悪いから」と皆長居はしないので、アレクは渋々ながら相手をしていた。態度には出さないが。






その後も定期的に食材や日用品、娯楽品などを届けに来るので監禁作戦は断念した。徹底的にルミナと町民達の接触を断っていれば怪しまれる。




代わりに、町へ行くにも来客に対応するにも必ず“二人でする”約束をルミナに取り付けた。彼女は「アレクは心配性だね」なんて笑いながら約束を結んでくれた。






尚、その約束は単なる口約束ではなく、魔道具を用いた“誓約”なのだが、それをルミナが知るはずもなく。









____そう、彼女は何も知らない。





アレクが町の人間に気に入られる様に立ち振る舞っていたことも。





アレクが彼女が作る魔道具が市場に出回らないよう監視していることも。






アレクが彼女にちょっかいを掛けようとした輩を人知れず始末していることも。





アレクが二人の生活の邪魔になりそうな存在を排除していたことも。





アレクがいずれ彼女が自分なしでは生きていけないようにする為、甘やかし続けていることも。









もしも彼女がアレクの本性(ヤンデレ)に気付く時が来ても、もう戻れない所まで来ている事にも気付かず、彼女は今日も平和に笑っている。






そしてそんな彼女を見て、アレクも幸せそうに笑う。








____きっと死がふたりを分かつまで、いや死しても尚、二人が離れる事は無いのだろう。





そんな幸せを胸に抱きながら、アレクは今日もルミナの隣で生きている。







そのを本性(ヤンデレ)上手に隠しながら。









・・・・・


これにて完結です。拙い文章でしたが、ここまでお付き合い頂きありがとうございます。

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