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第51話 見舞い

前回のあらすじ

取り調べを受けた

 

「ご覧の通り、メルシア様は心を病まれてしまった。所謂精神崩壊です。この症状を治せる医者も、そして魔法も、この世には存在しません」

「精神、崩壊……?」

「ええ」

「治せないのか? 誰にも?」

「現在の医学では不可能です。そして魔法も万能ではありません。一生このままと思った方が良いでしょう」

「そん、な……」


 ルナセールはもう一度メルシアの方を振り向き、彼女の包帯を巻かれた手を握る。

 その時メルシアがビクッと身体を揺らすが、それだけだった。


「それともう一つ、貴方に伝えなくてはいけない事もあります。ご息女の事についてです」

「そうだ……ルナシア! ルナシアは何処にいるんだ!?」

「……ついてきて下さい」


 医者にそう言われ連れて行かれたのは、霊安室だった。

 部屋の中央にベッドが一つだけあり、そこに白い布を被せられたモノが横たわっている。


「……まさか」

「ご自身で確認された方がよろしいかと」


 医者にそう促され、ルナセールは引きずるような足取りでベッドへと向かう。

 そして布を捲るとそこには、安らかな表情で眠っているルナシアの顔があった。首には縫合の跡がある。


「……先生。何故ルナシアの首元に縫合の跡が?」

「騎士団が発見当時、遺体の損壊が激しかったのです。手足は逆方向に折れ曲がり、胴体は切り裂かれて内臓や肋骨が飛び出し、首は切断されていました。そのままでは死者も浮かばれないと思い、なんとか元の状態にまでは修復したのです。それが我々に出来る、せめてもの死者への手向けでしたから」

「……ルナシアはまだ幼かったんだぞ? それがこんな……こんな非道い死に方なんて……うあああ……うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 ルナセールの慟哭は、霊安室に哀しく反響した―――。




 ◇◇◇◇◇




 プロキオンの街に戻ってから二ヶ月後。

 俺はエンデと共に、再びカストールの街を訪れていた。

 今回街にやって来たのは、表向きはメルシアの見舞いという事になっている。


 メルシアが入院しているらしい病院の前までたどり着き、馬車を降りる。

 中に入り、近くにいた看護師にメルシアの病室を尋ねてそちらに向かう。


 メルシアの病室は病院のかなり奥の方で、他の病室から隔離されているような印象を受けた。

 ドアを軽くノックしてから、病室の中に入る。


 中にはベッドの上で上体を起こし、虚ろな表情で窓の外を眺めて謝罪の言葉を繰り返し呟いているメルシアと、彼女の傍らに座るルナセールの姿があった。


 俺達の入る気配を感じ取ったのか、ルナセールがこっちを振り向く。

 心労が溜まっているのか、前見た時よりも覇気が無い。

 今のメルシアの状態は、どうやら効果的だったみたいだ。


「ああ……モンテーロ伯爵に、クリス殿か。いったい何用だ?」

「メルシアさんのお見舞いに参ったのですけど……こちら、お見舞いの果物です」

「ああ……ありがたい」


 ルナセールはそう言い、エンデから数種類の果物が入ったカゴを受け取る。


「それで……メルシアさんの容態の方は?」

「悪化はしていないが、快復もしていない。医者が言うには、一生このままかもしれないらしい」

「それは……心中お察しします」

「気休めだとしても、その心遣いには感謝する」

「事件の詳細は把握しています。犯人はまだ捕まっていないようですね?」

「ああ……もし見つけたら、この手で殺してやりたいくらいだ。メルシアをこんな目に遭わせ、ルナシアを殺した罪、万死に値する」


 手をきつく握り締めながらそう言うルナセールに対して、俺は冷ややかな視線を送る。

 ルナセールは因果応報という言葉を知らないのだろうか?

 俺を殺したからこんな目に遭っているというのに……おめでたい奴だ。


「しかし、犯人の特徴も、単独犯か複数犯すらも分かっていないんですよね?」

「ああ。たった一晩で起きた事件らしいからな。犯人を見たハズの唯一の生存者のメルシアも、こんな状態じゃあな」

「そうですか……一日でも早く犯人が見つかる事を祈っています。それではわたし達はこれで」

「ああ。ご足労をお掛けした」


 俺とエンデはルナセールに軽く会釈をしてから、病室を出る。

 それにしても……ルナセールは結構参っているようだな。

 そんなルナセールの状態を見て、俺は一つ面白い、ルナセールへの復讐を思い付いた―――。




 ◇◇◇◇◇




 路地裏を、一人の酔っ払いが千鳥足でフラフラと歩いていた。

 彼は夜更けまで仕事仲間達と酒場で飲み明かし、生物の帰巣本能に従って我が家に帰る途中だった。


 そんな彼の前に、一つの影が姿を現す。

 それを見て、彼は怪訝そうに眉をひそめる。


「なんだぁ……?」

「……」


 影は無言で、音も無く酔っ払いに接近すると、頭と胴体を分離させる。


「ぇあっ……?」


 突然の出来事に理解が追い付かないまま、酔っ払いの胴体は地面に仰向けで倒れ、頭はゴロゴロと転がっていく。


 酔っ払いを殺した影の手には、星のように光輝く一本の長剣が握られていた―――。






路地裏には危険がいっぱい。

影の正体はいったい誰なんだろうなあ?(すっとぼけ)




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