第05話 獣人と一緒
ゲーム開始3日目。俺は宿屋のベットで目覚めるとすぐに出掛ける準備を始めた。
昨日、ハーフ獣人のアレン・ウルスダッツと模擬戦の約束を取り付けた。冒険者ギルド側からパーティーを組めなんて言われるとは思ってなかったが、そいつは一見して優秀そうな獣人だった。語尾が「~っす」って雑魚キャラっぽかったけどな。
アレンと話をしたのは数分だったが、奴は俺を含めて常に周囲に気をはりめぐたせていたような感じがした。漫画とかで良く見る強い人特有のアレだ。さすが初期ランクCって感じだったわ。
獣人系の特徴はSTR、VIT、AGI値の高さと、INT値の低さだ。MR値のないGWOにとってINT値の低さはそのまま魔力抵抗値の低さに繋がる。物理攻撃と魔法攻撃の複合タイプであるドッペルガンの攻撃が獣人であるアレンには通じる筈だ。
俺は模擬戦にて全力は出さない。だが、できれば彼を圧倒したいと思っている。恐らく、多分だけど、模擬戦で勝った方が一応のパーティーリーダーになるだろう。
二人だけのパーティーだけど、リーダーになる事に意味はある。俺はできるだけ早くレベル上げや仲間集めをしなくてはいけないので、受ける依頼くらい自由に受けないと時間が足りないのだ。ベルフェゴールにも言われてしまったし、俺もそう思っている。
実は俺はアレンと話した数分の間に、ベルフェゴールと念話をしていた。
ベルフェとの念話は時間の流れが違うっていうか、物凄い速さで会話を繰り広げる事ができる。思考だけで話をするようなもので、とにかく一言一言のレスポンスが速いんだ。思った事がすぐに伝わってしまうからな。だから人と話ながらでも相談ができるっていうわけだな。
とりあえずは彼とパーティーを組んで依頼を受けようと思う。その後、できれば魔法系の仲間もパーティーに組み込んで俺のレベルを上げる。
ある程度のレベルになったら武器を集める。続いて龍人とも戦えるような仲間を集める。そして龍人を倒す。こういった流れで俺は一年間を過ごす予定だ。
魔法系の仲間に関しては、別にベルフェゴールを召喚してもいいんだが、本人の希望が「働きたくないでござる」状態なので、別に集める必要があるらしい。
いや、俺も説得したよ? 馬鹿言ってないで一緒に戦えよって。そしたら、「怠惰の悪魔は怠惰であることに因って力が上昇するのよ」とかドヤ顔で言いやがった。姫宮静香同様、目付きが鋭い彼女に逆らうのは少し難しい。俺は視線に弱いのだ。
宿屋のおじさんの所で朝食を食べる。今更だがおじさんの名前はスディーダ・デメタスというらしい。デメタスの旦那と冒険者の人たちが呼んでいた。
デメタスさんが作る料理は安価の割になかなかの味だ。俺的金銭感覚では日本円換算で約300円くらい。300円で一食分食べれるので、日本より若干安い感じだな。
宿屋を出てギルドへ向かう。同じ街の中だというのに30分以上も移動しないと着かないってのは少し不便だ。
なんせこの街は広い。街の反対から反対まで徒歩で歩くと頑張っても十数時間はかかるっていうくらいだから、かなりやばい。城壁だって続いているのに……だ。家の配置が妙に入り組んでるのを計算に入れたとしても、やはりデカすぎる。
王国としては正しい姿なんだろうが、ゲームの街として考えると少し不便だ。プレイ時間は限られているからな。
途中で道具屋に寄ってHP回復薬を買い込む。なんとかポーションって名前だ。なんとかの部分は種類が多すぎて判断できないな。恐らく個人個人で作っていて、製作者事に表示されるアイテム名が変わるんだろう。残金が銅貨23枚になるまで買う。俺は一食+宿代だけを残した残金の全てでアイテムを買った。
ギルドに着いてその大きな扉を開けると、早朝だというのに人が結構な人数いる。ギルド員は勿論の事、冒険者達もかなり多い。朝早くから依頼に出掛けて、状況によっては泊りがけ。そんな生活を過ごす連中ばっかりらしい。
扉を押して中に入り周りをよく見る。ええっと……あ、いた。何の獣人かわからないが、青と白色が混じった獣耳と同じ色の獣尻尾を携えて、黒髪で長身のイケメン野郎。くそ、イケメン爆発しろ。
ん? 昨日とは違い、今日は着物みたいな格好だ。接近戦が得意だって言ってたけど、あれって動きにくいんじゃないのか? いや、着物なんてちゃんと着たことないからわからないけどさ。
まあ俺だって昨日とは違って戦闘服装備だけどな。肩からは形状をH&KのMP5状にしたドッペルガンを掛けていて、服には緑巨人のナイフを装備している。
こうした装備は身に着けているより戦う時にアイテムボックスから直接取り出すスタイル方が勿論速い。だが、俺は操作に、取り出すのに慣れていない。こういった風に肩からさげていた方が落ち着くしいざという時に対応しやすいだろうと思って、武器を装備していた。
H&KのMP5について少し説明をしよう。ヘッ○ラー&コッホ社の短機関銃であるMP5は俺がDOCで使っていた数多くの短機関銃の中の一つだ。
DOC内での初期武器なだけあって、とても使いやすい。VRFPS素人の俺でも何日かプレイしただけである程度戦えるようになったくらいだ。あー、懐かしいわ。
口径9mm、銃身長225mm、使用弾薬は9x19mmパラベラム弾。32発装填で計算上一分間の間に約800発もの弾丸を撃つことができるという短機関銃だ。詳しくはwikiで検索してくれ。
ドッペルガンで作ったMP5は装填数30発で消費MPは20。勿論、イメージを元にして作られるので、次に作った時も同じ消費MPとは限らない。今回は基本的な造形から別にスコープを追加してある。
どうやら銃だけではなくこういったスコープ等の追加装備というか、そういった物も作ることができるようだった。ドッペルガンを手に持ってある程度の形状をイメージすると瞬時にイメージ通りの形状に変化してくれるんだ。
アイテムボックスの中には元々の不思議ハンドガン状の二つ目のドッペルガンが入っている。服に装備しても良かったんだが、こちらはアイテムボックスから取り出して使おうと思っている。
理由は簡単。この世界の連中は化け物みたいに速いので、腰から抜いていたら間に合わない可能性があるからだ。先程言った通りアイテムボックスから出した方が速い。慣れてないとはいってもこういったパターンの練習も必要だしな。まあ、基本的にはこっちのMP5を使うつもりだが。
戦闘服を着て銃を持っている。無論、こんなファンタジー世界には似合わない装備をしている俺は目立つだろう。
しかし、考えてもみてくれ。基本的に冒険者達の装備は奇抜だ。魔物の素材が武具を作る際にかなり有能だからな。鉄より虫の殻の方が軽くて丈夫ってな世界だ。
俺もそんな奴らの一人なので、全身が白よりのグレーな俺は少しは目立つものの、そこまでではないって事だな。
俺に気付いたのか、アレンがこちらに向かって手を振りながら歩いてくる。すごい笑顔だ。あいつはあいつで妙な感じがあるからな。これから仲間になるってのに、こんな事を心掛けなきゃいけないなんてめんどくさいが、やり直しが利かないゲームなわけだし、注意のしすぎだ なんて事はない。
一応、どんな状況にも対応できるようにとベルフェに注意されてるからな。
なんか、なんでもかんでもベルフェの言いなりみたいで嫌だが、一応上級悪魔様の助言だ。従っておくか。
私たちは対等で一蓮托生なのよ!みたいな感じを出していたが、"悪魔"は人間を騙すってのがオタク文化じゃ常識の一つだから、こっちも絶賛注意中だ。
「ミキュアさん! お早う御座いますっす!」
「ああ。さっそくだけど、訓練場で模擬戦すっか」
「はいっす。もう受付で申し込んどいたっすよ。はい、指輪も借りといたっす」
「お、おう。ありがとよ」
俺はアレンから命に係わるような攻撃を防ぐという指輪を受け取って訓練場へ向かう。
この指輪は多分、相手のHPを1だけ残すような制限を付けるタイプのアイテムだ。よって毒状態等にされたりしたりといった事を、決してしてはならないのだが、こいつは……アレンはそれを理解しているのだろうか。
確か格闘系職業のスキル、格闘系スキルツリーにはダメージを与えた際に確率で状態異常を付加するような打撃技もあったはずだ。という事は、この世界の住人がそういったスキルや技に似たような技術をつかってきたとしても、全然不思議じゃない。
「なあ、一応言っておくが、相手を毒状態にするのは無しだからな。指輪つけてても死んでしまう」
「え? も、もちろん知ってるっすよ? 毒状態は無し毒状態は無し…」
あれとこれとーとブツブツ一人ことを言い始めるアレン。どうやら知らなかったらしい。そうか、こいつはぬけてるタイプなのか。念を入れておいてよかったかも知れないな。
「じゃあ始めるっすよ!」
「ああ。この模擬戦の目的はお互いの戦闘スタイルの確認だ。なるべく"全力"で頼むぞ。じゃあ、模擬戦開始だ!」
俺とアレンは訓練場を借りて模擬戦という名の手の探り合いをしようとしていた。
奴は武器を装備していない。そして、俺は奴とは50m程離れている。恐らく、俺が遠距離タイプだと聞いているアレンが気をきかせてくれたのだろう。俺は銃を使うので初期位置は離れている方が有利だ。
アレンがこちらに向かってかなりの速さで近づいてくる。このままでは数秒で距離を詰められてしまいそうだ。だが、動きは見えるしそこまでAGIの差はないのかもしれない。
俺はすぐにドッペルガンを使ってアレンに向かって攻撃を開始する。だが、前回とは違って続けて全弾撃ち込んだりしない。タン…タ…タ…タタッ…タン! と数発ずつ撃つ。
どうやらアレンは、俺の持つ武器は先端から何かを放つ武器なのだろうと前もって予想していたらしく、銃口の向きを見ては体を傾けたり左右に動くようにして弾を避けながら距離を詰めてくる。
龍人とは違い弾を見てから避けているわけではない。その動きはまるでDOCの超上級プレイヤーのそれと同じようだった。少しだけだが身体能力が強化されているあのゲームでは訓練に訓練を重ねることで、最終的に銃弾を少しだけなら避ける事ができるようになれる。
そういう相手に当たってしまった時の対処法。それは、意外と単純な事でフェイントを使うんだ。
いくら身体能力が上がっているとしても銃だ。漫画やアニメみたく真正面から自分に向けて飛んできた弾を、安定して全弾避けるなんて事は不可能に近い。あのゲームは物理現象関連は細かく設定されている。DOC界で一番この技術が上手いプレイヤーですら記録を平均すれば最初の数弾が限度だと聞いた。俺だって今までの最高記録は7発。次の記録は4発なので偶然の7発だ。
なので最初に少しフェイントを入れると……俺の弾を避けきれなかったアレンの左肩に2発の物理攻撃と魔法攻撃の混合攻撃であるドッペルガンの銃弾が命中する。
ふむ……。銃弾が当たったんだ。かなりの衝撃を受けたはずだ。それなのに、アレンは先程とたいしてかわらない速さで俺の元まで辿りつき、叫びながら技を繰り出してきた。
「奥儀:獅子 弐!」
そう叫びながら急に赤色の魔力を纏った四肢を使っての格闘戦を仕掛けてきた。リラナルテさん程ではないもののかなりのスピードだ。
俺はそれに対処しようとドッペルガンを離してから、奴の腕を掴んで関節を極めようとした。だが、腕を掴まれたアレンはすぐに体全体を回転させるように動かして、遠心力と筋力の両方を上手く使って俺の事を吹き飛ばした。
ぐひゃ!なんて情けない声を出しながら十メートル以上も吹き飛ばされた。
吹き飛ばされている途中でアレンの動きを見ると、飛んでいる俺に向かってきていた。あの掴み解除攻撃から追撃を掛けるつもりのようだ。やばい、やばいやばいやばい、多分、やられる!
「奥儀:獅子 肆!漆!漆! 」
「死ねッ!」
俺はアイテムボックスからもう一つのドッペルガンを取り出して、とっさに覚えている限りの一番威力の高い拳銃へ形状変化をさせた。
ス○ス&ウェッソン社のM500。50口径の回転式拳銃だ。グルグルと回る回転式弾倉に一発ずつ弾を込めるタイプの拳銃だと言えば、その形状を理解できるだろう。
それを吹き飛ばされながらも奴に向かって撃ち込んだ。ドッペルガンから伝わる衝撃で吹き飛ばされていた俺に回転するような力が加わわって、すぐに地面に背中から叩きつけられる。
「人間の限界に迫ったスペック。安易にこの銃を撃った場合、射手の健康は保障できない」と発売時に宣伝される程の高威力。
それは厚さ八分の七インチの松板を17枚も貫通できるような高威力なのだが、元の世界では弾の加速が足りていないため44マグナムとそう威力はかわならなった筈だ。しかし、ドッペルガンはその辺も調整してくれていたようだ。
撃った瞬間にMPと共にHPがごそっと減った。反動が物理ダメージとして扱われたようだった。発射された弾丸はこちらに向かってきていたアレンの、赤い魔力を漲らせた鋭い蹴りとぶつかり合う。
初期Cランクのエリート冒険者の蹴りとぶつかった銃弾は砕け散るが、アレンの奥儀とやらもキャンセルされたようだった。
俺は地面に叩きつけられた衝撃で動きの鈍った体を起こしながら考える。
ここまでの戦闘でアレンのスタイルはわかった。驚異的なAGIとSTRに頼った近接戦闘。奥儀という俺たちにとっての技みたいな物を中心に攻めるスタイル。
この世界の住人もスキルや技に類似した物を使うみたいだな。さすが魔物が住む世界、その辺の戦闘技術もある程度は出回っているのだろう。戦闘能力も十二分に高い。俺よりかなり高いステータスなのだろう。まあこの世界の住人にステータスなんて概念はないとは思うが…。
この時点で、この模擬戦の意味は殆ど無くなっていた。お互いの戦闘スタイル、及び戦闘力の確認が当初の目的だからだ。これからはどちらがより強いか、リーダーはどちらかといった事を決めるための戦いになる。少なくとも、俺はそう認識していた。
だが、おれの予想を裏切るように、銃弾で奥儀を相殺されたアレンはまるで猫のようにしなやかに着地すると、にこやかにこう言った。
「いやー、ミキュアさん強いっすね! 俺も村じゃかなり強い方だったっすけど、ほら、もう足が震えてますもん。 これ以上続けたらこれから受ける依頼に支障がでるっす。この辺で模擬戦は終わりにしましょうっす!」
「……そうか。それならパーティーリーダーはどっちがするんだ? 俺は模擬戦の勝者が務める事になると思ってたんだが」
「へ? パーティーリーダー? それならミキュアさんっすよ。 受付のおじさんもミキュアさんがリーダーでパーティー登録してあるって言ってたっす」
「……何? 初耳だぞ」
つまりそういう事らしい。最初から俺がリーダーとして登録されていたみたいだ。なんだ、それじゃあこんなに頑張る事無かったじゃん。ゲームを有利に進めるためだっていうから頑張ったのに。
模擬戦をしていた時間はほんの一分程度だったが、初日のリザードマンとのマラソン以上の疲労を俺は感じていた。これから依頼を受けるのか……だるいな。
その後、俺とアレンはアレンが持っていたHPとMPの両方を回復できる少し高価な回復薬を飲んで、受付のおじさんに指輪を返してから、依頼が所狭しと書いてある巨大な掲示板を見ていた。
俺がD級冒険者でアレンがC級冒険者なので、俺たちはCランク以下の依頼を受ける事ができる。ここに新たにD級冒険者が追加してしまうとDランク以下しか受けれなくなってしまうらしい。どういった基準なのだろうか。
「んー、これなんかどうっすか? 蜥蜴人の討伐か、緑巨人の群れの討伐とか」
「却下だ。」
「ええ…じゃ、黒蟲の討伐とかっすか?」
「黒蟲…」
黒蟲。Cランクの魔物で巨大なムカデのような魔物。黒蟲の魔力特性は全身の甲殻から闇属性の硬化の魔力を高濃度で纏う力らしい。
魔力特性とは。この世界の生き物には、それぞれが特有の魔力の使い方というか、まあスキルみたいなものを持っている。
それはゴブリンの自動回復能力然り、リザードマンの強靭な鱗然り…。もちろん地球人の俺にはそんな摩訶不思議な特性はないので、この世界に住む人族ができるという魔力の具現化なんて特性を使う事はできない。
この力はなかなかに便利なようだった。具体例を出すと、宿屋のおじさんのデメタスさんが小さな青色の腕を何本も空中から作り出して、いくつもの料理を同時進行的に作っていた。
初めて見た時に「ふぁ!?」と間抜けな声をだしてしまったが、相席していた他の冒険者の人に教えて貰った。
俺は地方の山中に住んでいて、都会の人が魔力特性なんて不思議な力を使えるとは知らなかったと嘘をついては、彼から色々なこの世界のルールを教えて貰った。中にはかなり驚くような事もあったが、まあ殆どはGWOの予備知識で事足りるような内容であった。
黒蟲討伐依頼。C級冒険者以上が受ける事ができる依頼で、報酬は金貨七枚。六人パーティーまでで一人当たり金貨七枚が貰える。つまり350万円×6だ。約2000万円。今回は俺とアレンの二人なので報酬は700万円だ。これを高いとみるか安いとみるか……。
冒険者という職業は命がけなのは勿論の事、装備やその他様々な雑費が必要になってくる。高給取りの冒険者の装備やアイテムは同じように高級なので、一回当たりの依頼でそれなりの金額を手に入れたとしてもすぐに無くなってしまうらしい。金の出入りが激しいんだ。
俺は少し悩むような動作をしながら、頭の中で念話を使う事にしたみた。相談だ。
『なあベルフェ。最初の依頼に黒蟲討伐を受けようかって話になっているんだが………………あれ? おーい、ベルフェゴール? 起きてるかー?』
『…………zzz』
『ベルフェゴールー? 目付きが悪くておっぱいの小さいくせして似合ってないエロコス着てるベルフィちゃーん?』
『…………zzz』
だめだ。あの野郎寝てやがる…。まあ、まだ結構朝早いが。悪魔ってのは夜行性なイメージがあるし、しょうがないのか?
まあ依頼としては黒蟲は丁度いいかもしれないな。俺はステータスを開いてみることにした。
□□□□□□□□□□□
プレイヤー名:みきゅあ
出身:第七世界《地球》
所属:
選択:職業制
職業:罪人 Lv11
能力値:
HP 650
MP 90
STR 18
VIT 18
INT 15
DEX 24
AGI 30
LUK 24
BP:534
□□□□□□□□□□□
ふむ…レベル3の時よりはかなり強くなっている。リラナルテさんとアレンとの戦闘だけでレベルが8も上昇しているな。
対象に止めを刺さないとそれほど多くの経験値は貰えないはずなので、この二人との戦闘が俺にとってどれだけの経験になったかが簡単に理解できる。
そうか、アレン戦での俺の頑張りは無駄ではなかったということだな。
さて、BPが534Pもある。昨日、ベルフェゴールと相談した結果、STRよりはINT、VITよりはAGIを育てる方向にしていこうと決まった。
理由としてはまず俺のドッペルガン。これはSTRとINTの両方から補正を受けるので、他に魔法を覚えた時に便利だからINTの方が多くしようと決まったのだ。
ベルフェ曰く「人族が強くなろうと思ったら魔法を使いこなさなきゃダメよ。ある一定のレベルまでは強く慣れても、魔法による力の応用力を疎かにしたら上位の種族と戦うなんてまず不可能ね。正直、剣を振り回せれるより魔法を使い熟された方が私にとっても嫌だし。うん、上級悪魔が嫌なんだから他の上位種族だって嫌なはずね!」なのだとか。
他にも、どうせ格上の攻撃なんてくらったら一撃死なんだからVITを上げるくらいだったら少しでもAGI値を上げときなさいともいわれた。これは、俺も思っていた事だ。どれだけVITをあげようと、ゴブリンの棍棒とかリザードマンの曲刀を俺が受け止めきる姿なんてとてもじゃないが想像できない。俺が遊んでいたゲームはリアル差重視だったからな。装備の重さまでガチなんだ。
500Pもあるからな。どんな感じにしようか…………。
俺は少し悩んだ結果、STRに50、INTに200、VITに50、AGIに200PのBPを振り分ける事にした。残り34Pはこれから能力的に困った時への貯金だ。本当は100P単位で残しておきたいのだが、序盤でそれもどうかと思ったので端数だけ残しておくことにした。
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プレイヤー名:みきゅあ
出身:第七世界《地球》
所属:
選択:職業制
職業:罪人 Lv11
能力値:
HP 650
MP 1785
STR 68
VIT 68
INT 215
DEX 24
AGI 230
LUK 24
BP:34
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MPが一気に1500以上になった。これでドッペルガンの使用を軸に戦う事ができるな。勿論、接近戦の時にはナイフを使うだろう。あ、短剣だったか。
この世界で敵を倒す方法はHPをぜろにするだけじゃないからな。STR値だってちゃんと上げてあるし。能力値を振った瞬間から大分力がみなぎってきた。先程の模擬戦での疲労もあまり感じな……くはないが。
まあMPがいくら上がろうとスキル:殺人鬼を使う時は関係ないんだけどな。3秒間で最大値の20%を消費するから。これからは安易に使う事が難しくなってくるだろう。最大値が増えるという事は、完全回復が難しくなるという事だから。
ずっと黙っていた俺に対してなんか思う所があったのか、アレンが急に話し始めた。
「あ、や、やっぱ魔物とはいえ虫系はなかったっすか。他の依頼にした方がいいっすね!」
「いや、これでいい。 最初の依頼は黒蟲討伐にしよう」
「え、ミキュアさん虫とか平気なんすか?」
「特に苦手意識はないけど……お前さっきっからどうしたんだ?」
「な、なんでもないっすよ! ほら、これもって受付行くっすよ!」
アレンは黒蟲討伐の依頼書を掲示板から抜き取ると、受付の方へ歩いて行ってしまった。せっかちな奴だ。俺も後ろを追って歩き出す。AGI値は上がっているが、身体能力値が常に上昇しているわけではないので普通に歩くこともできる。有事の際に急上昇するシステムのようだった。
俺が常に使っているスキルなんで、認識スキルの五感強化くらいだ。これは便利だからオートで発動するように設定している。
効果が若干弱まるオート、高性能だけど扱いが難しいマニュアルでの二種類があって、ステータス画面で選択することができるのだ。
こうして考えると使徒の力を持ってるだけで十分チートな気がする。ここの住人達が素であんな力を扱える事にはすごく感心するな。俺たちの世界で感がると、機械なんかを弄るのと同じような感じなのだろうか。少し、この世界の事が気になった。
俺とアレンは依頼を受けた後、各自で準備をして昼ごろに門周辺で集合ということになった。俺は所持金がぜんぜんないので、とりあえず宿に戻ることにした。知ってる場所が宿くらいだしな。部屋だって取ってあるし。
俺は宿屋で休憩することにした。とりあえずはと、ベルフェゴールを召喚する。
「…………zzz」
召喚したベルフェゴールは二つの枕を体全体を使って抱きしめて、爆睡していた。よっぽど金貨2枚の寝具の寝心地が良かったに違いない。今まで何もない空間で暇に過ごしてた分、ストレスが溜まっていたのかもしれないな。
幸せそうに寝てやがるな…。たまに上げる「んん…」という声が微妙に艶めかしいが、がりがりの体がその色気を一気にぜろまで下げている。さて、どうやって起こそうか。大きな声を上げてみるか、行き成り体を揺らしまくってみるか…。
俺はどうやって起こそうか考えていると、寝心地が変わったのが気になったのだろうか。ベルフェゴールは自分で起きてしまった。寝起きドッキリ大失敗だ。
「んー……おはよう、幹也。召喚したのね……何かあった?」
「念話してもお前が寝てるから通じなくてなー。どんだけ寝てるんだよ」
「だって、あのベット気持ちいいんだもん。幸せだわー」
「そりゃ良かったな。んで、アレンとの模擬戦が終わった。」
「え、もう戦っちゃったの? で、どうたった? やっぱあの子強かった?」
「強かったよ。正直、俺よりも全然強い。さすがにリラナルテさんよりは大部格下だったとは思うけど…。一応、動きは目で追えたし、攻撃にも反応できた。俺のドッペルガンも完全に避けるには至っていなかったな」
リラナルテさんは瞬間移動して避けたからな。まあマシンガン状になっている時は当たってはいたが、単発だった場合完全に回避していただろう。つまり龍人くらい速かったって事だ。あいつはフルオート射撃を全弾見てから避けていたが。
今日使った高威力の拳銃だが、あれを俺は今度使うつもりはない。
本当に、本当に緊急事態の時は使うかもしれないが…あれを撃ってからなんか腕が痛い。地球ではあれを撃った次の日に腕が折れていたなんて事例をいくつも聞いたことがある。反動で顔にあたって死んだなんてのもな。危険なのでこの形状は自重しようと思う。
「それでな、最初の依頼は黒蟲討伐を受けることになった」
「黒蟲? ああ、あの大きいのね。気を付けたほうがいいわよ。本当に大きいから」
「そうなのか。ちなみにどれくらい大きい?」
「んー…高さが2~3メートルくらいで、長さは少なくとも10メートル以下ってことはないわね。幼体でも7~8メートルはあるはずだし、成体なら20メートルくらいかしら。」
まじか。つーことはあれか。短い電車みたいなもんか。え、まじで? そんな化け物と戦わないといけないのかよ。いくら身体能力が強化されているといっても、それはキツイんじゃないか?
「それって、まともに戦えるのか?」
「私は勝てるわよ。楽勝よ。飛んでから魔法で瞬殺ね」
「ほほう。でも僕たち人間は飛べないんですけど……つーか、ベルフェって飛べるのか」
「飛べるわよ。翼だって生えてるし」
ほら、と服をずらして背中を見せてくる。確かにそこには翼らしき物が存在していた、していたが……俺の手のひらより小さい。こんなので飛べるのか。
「小さいな…こんなんで飛べるの?」
「魔法と併用してね。大きな翼を持つ上級悪魔なんて馬鹿ルシファーくらいよ。だいたい、あんな大きい翼を見せびらかしていたら攻撃されるに決まってるじゃない。わざわざ弱点を敵に晒す程、上級悪魔は間抜けじゃないわ」
「そうか…まあ、とりあえず俺はこれから黒蟲を倒しに向かうから、何日かベルフェを召喚できないかもしれない。ちゃんと念話に出られるようにしておいてくれ」
「りょうかーい。んじゃ、帰るわね!」
ばいばーいと消えていくベルフェゴール。俺が悪魔送還を使わなくても自分でも帰る事ができるのはすでに確認済みだ。だから無理やり戦わそうとしも無駄ってことなんだよな。
俺は昼食を食べると、デメタスさんに依頼で数日開ける事を言った。すると一日あたり銅貨5枚で部屋を取っておいてくれるシステムがあるらしかった。俺は前金で料金の半分である銅貨20枚を払い、8日分の部屋の予約をしておいた。残りの20枚は帰ってきたときで良いらしい。やっぱり自分で使う部屋は自分用にしておきたいしな。
500円で部屋を一日開けておいてくれるなんて異世界は値段設定が良くわからない。まあ、この宿はバカみたいに部屋数が多いいので大丈夫なのだろう。上の階には行ったことがないから何階建てだか知らないが、おそらく三階か四階くらいまではびっしりと部屋があるみたいだし。
門に向かって歩く。所持金がぜろの俺には何も買う事ができないのでスムーズに移動することができた。この依頼に失敗したら、スキル:窃盗犯を使う事になるだろう。スキル発動中に触れた相手の所持金の1%を奪うスキルだ。
アイテムボックスがあるこの世界での現金のスリは実質不可能に近い。置いてある物を盗む事はできるんだが、現実空間にない金は盗めない。
その点、このスキルを使えば簡単に完全犯罪をすることができる。だって、基本的にアイテムボックスを開けるのは自分だけというのがこの世界の常識なのだから、まさか所持金が減るなんて夢にも思うまい。唯一他人がアイテムボックスを開くことができるのは、対象の死後のみだ。つまり、死体だけだ。
なので、俺は依頼料よりもその依頼が俺の為になるかどうかで受ける依頼を決めたかったのだ。金はいざって時には盗むことができるからだ。黒蟲の素材は武具を作るのに向いていると聞く。例えば奴についてる毒袋を使えば、短剣に毒属性の付加が簡単にできるとのことだ。それも、かなり上級の毒が。
だから、これから戦う際には奴の毒に注意しなくてはいけない。強力な毒と厄介な甲殻。この二つに注意して下さいと受付のおじさんにも言われたし。
少し歩くと俺が盗んだ転移石を使って転移してきた場所が、門が見えた。ここから転移して黒蟲が巣を作ってしまっている場所の近くの村まで行く予定となっている。
転移石はギルドからの支給品を使う。因みに、実は転移石は超高級品だ。俺は気軽に盗んでしまったが、あの街の道具屋には少し悪い事をしてしまったな。
あれ、まだアレンはいないみたいだ。まあ黒蟲討伐は遠出になるからな。少し準備が必要なのだろう。俺の荷物はHPを回復する薬と高級枕だけだしな。緑巨人の短剣とドッペルガン二つ、あとは戦闘服と初期装備の普通の服、腕に着いている腕輪くらいだ。初期防具も盾も美也にあげてしまったし。荷物は全部アイテムボックスに入るから、基本的にかさばらない。
「あ、ミキュアさーん! すいません、遅くなったっす」
少し待っていると、アレンが走ってやってきた。む、なんだこいつ、これは……香水の匂いか? アレンから女物の香水らしき匂いをかなり強く感じる。女の所にでも行っていたのだろうか。
ああ。つーかあれだ。認識スキルの五感強化のせいだ。匂いが普段より強く感じてしまうので鼻がつらい。俺は五感強化をマニュアル設定に変えて視覚、聴覚、触覚、だけを強化する。嗅覚と味覚はこいつから匂う香水臭を強く感じてしまって実に不愉快だからな。
「じゃあさっそく行くぞ。おい、もう少しこっちこい。転移石起動」
「は、はいっす!」
こうして俺とアレンの黒蟲討伐の依頼が始まった。冒険者生活の始まりだ。
美也「!。なにやらお兄ちゃん×ハーフ獣人の危ない気配が! さ、させないッ、お兄ちゃんのやおい穴は私が守る!
てゆーかお兄ちゃんやっぱり私を探す気無かったし……。あ、因みに私は今、中央大陸の西の方でお兄ちゃんの親友の明日香君とあと二人の計4人パーティーで冒険をしています!」
明日香「幹也妹はすぐに見つかったけど幹也本人は見つからないな…。ランキングにも載ってないみたいだし、どこで何してるんだろう…。」




