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日常の破壊者  作者: ファミ・ローⅦ世
1st~日常の破壊者~
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2/202

事件当日~はじまり~

「そのテロ事件は早朝の東京都内から始まりました。

この日は36の都道府県で発売が決まった地域活性化チケットの発売日で、

申請のあった飲食店や小売店で利用でき、最大2万円で5000円得をするクーポン券となっていました。

購入は百貨店やコンビニとなっていたが、百貨店よりもコンビニのほうが早く購入できるとあって、

コンビニに多くの人が購入に訪れていました。」

4月上旬

カーテン越しに心地良い春の日差しが差し込む部屋にけたたましくスマホの着信音が鳴り響く。

『今日から東京都をはじめとした36の都道府県で地域活性化チケットの販売が始まります。この地域活性化チケットは発行された都道府県の経済の活性化を目的とし、協力店舗・企業などでの買い物やサービスが割引になるクーポン券となっています』

テレビをつけっ放しにして寝落ちした部屋の主である加藤フミは寝ぼけ眼で起きだすとスマホに出た。


「もしもし~?」


フミが電話に出ると声の主ですぐに眠気が醒めた。


『あ。フミちゃん、ごめん。寝てた?店長だけど?』


声の主は勤め先であるコンビニ、ファミリーメイト浜松町香坂オフィス店の店長の山内だった。

東京のビジネス街である浜松町にあるオフィスビル、香坂オフィスビルの1階に店を構えている。


「あ、てんちょー?どうしたんですか?」


『休みのところ申し訳ない。急に棚橋さんが遅れてくるみたいで・・・朝のピークと納品だけでいいから、出られないかな?』


山内から他店スタッフでいつも3時間程度ヘルプでフミ達が勤務している店舗のシフトに入っているスタッフである棚橋マキがやむを得ない事情で遅れてくるようだ。

マキがいる店舗は恵比寿にあるファミリーメイト恵比寿西口店で、浜松町にある香坂オフィスビル店からは割と遠かった。


「ふぇ?マジですか?棚橋さんが?・・・わかりました」


『申し訳ないね・・・じゃあ、頼むよ』


「はい・・・ちょっと時間はかかります」


『うん。それまで金田さんの時間を延ばしておくよ』


「金田さんにはすぐに行きますって伝えてください!」


深夜の時間帯のシフトに入っている金田がフミが来るまでの時間を稼ぐらしく、フミとしてはあまり待たせないようすぐに向かうことを伝える。


『わかった!助かったー!ありがとう!』


山内は安堵して電話越しに大きなため息をついた。


「でも、珍しいですね。棚橋さんが遅れてくるなんて」


フミは疑問に思ったことを山内にぶつけてみる。

話を続けつつも、軽めの朝食の準備をするため、トースターに食パンを入れる。


『ほら、棚橋さんって元々はうちの系列の別の店舗のスタッフでしょ?そっちで朝の人が逃げたみたいで、その対応で1時間ぐらい遅くなるってさ』


「え?1時間!?だいぶ遅れますね!?」


どうやらコンビニ業界ではよくある時間になっても来ない、もしくは急に休む旨を電話越しに伝えられ、結果として人員不足に陥るケースが系列の店舗で発生したようだ。

移動の時間も含めれば朝のラッシュと納品を山内だけではできず、また、金田は昨日の22時からの出勤から数えて12時間勤務となってしまう。


『まぁ、うちとしては人を借りてる身分だし、そう強くは言えないからね・・・』


「そうですよね・・・お疲れ様です。向かいます」


フミは電話を切り、身支度をしはじめる。

シャワーを浴びた後、ドライヤーで髪を乾かす暇もなく、鞄を手に取り、玄関へと向かう。

『続いてのニュースです。山梨県内でサリンによる無差別殺人が続いてる事件で、新たに4人目の被害者が出ました』

フミは靴を履こうとした矢先、まだテレビがつけっ放しであることに気づき、リモコンでテレビを消した。

自宅を出ると自転車置き場に行き、自転車に乗ると立ち漕ぎで駅へと向かった。


――――――――――――――――――――


同時刻。

スリーセブン有楽町ほしぞらエフエム前店。

有楽町にある全国区のラジオ局である「ほしぞらエフエム」のビルの前にある店舗で、

ラジオ局のスタッフはもちろんのこと、時折、収録や放送の合間に抜けてきた有名人が来店することもある。


「ありがとうございました~。いらっしゃいませ~」


スリーセブンの本部社員である新内マコは急遽、欠員が出た店舗のフォローに入っていた。

ちょうどピークラッシュの時間でごった返しており、レジの前には大勢の客が並んでいた。

それでも、テキパキと客をさばいていると、後ろから肩を叩かれた。


「新内さん、もう大丈夫ですよ」


店長の松尾が指差す方向に代わりに来たスタッフがおり、ちょうど客も途切れた。


「急ですいませんね・・・留学生のビマが出られなくなって・・・」


「いえいえ・・・久々に体を動かせた気がします」


このところ、オフィスワークでずっと机に向かいっぱなしなマコとしては鈍った体を動かせたのでほぼフィットネスに近かった。

新店のヘルプもなく、このところは通常業務がほとんどだった。


「ただ様子を見に来ただけなのに巻き込んでしまって申し訳ない。次の店舗に行くんでしょ?」


「あぁ~・・・そうですね・・・すいませんが、もう行きますね」


「お疲れ様でした。あとは何とかなりそうなので、ご心配なく」


松尾に促され、事務所に置いていた鞄を取ると次の店舗へ向かうため、店を出ようとした。


「あっ。新内さん、これ!持ってって!」


松尾は自身の出身である神奈川県の銘菓、ありあけのハーバーを渡した。


「ありがとうございます!バタバタして申し訳ないんですけど、行きますね!」


マコはありあけのハーバーを受け取ると手を振って近くのコインパーキングへ向かった。

精算を済ませて車を出すと次の訪店先である新橋のスリーセブン新橋一丁目店へと向かった。

ラジオをつけるとたまたまマコのお気に入りのアーティストの曲が流れており、気分も晴れやかにハンドルを握る。

『ここでニュースのお時間です。福岡県を拠点に活動をしている指定暴力団、義藤会が近隣地域で暴動を起こしている問題で、福岡県警の取り締まりにより、義藤会が解散を決定したことを福岡県警本部が発表しました』

曲は割とあっという間に終わり、ニュースを伝える。

『義藤会は何者かに銃火器などの武器を盗まれたとして、近隣の暴力団への攻撃を行っていましたが、福岡県警による家宅捜索で義藤会にはこれ以上、暴動を起こすだけの武力がないことを理由に解散を示唆、これを受け入れるかたちで義藤会は解散を決定したとのことです』

物騒だな、と他人事のようにニュースを流し、車を走らせていると信号に捕まった。

『なお、福岡県警の捜査によると、義藤会が所持していた拳銃やロケット砲など銃器6000丁、手榴弾などの爆発物1トンの行方がわからず、義藤会の関係者から詳しく話を聞く方針となっています』

えっ?!と思わず声が出るほどニュースになっていた暴力団が銃器を持っていたことにマコは驚いた。

その直後、信号が変わり、青になったので再び車を走らせた。


――――――――――――――――――――


同時刻

オーソン丸の内カタダビル店


「オーナー、おはようございますー」


関西訛りで東村メナはオーナーの岡村に挨拶する。メナは関西出身で5年前に体育大学に通うために上京してきた。

大学を卒業後、居心地の良さと同じく店の従業員である柳田陽一郎やなぎだ よういちろうと交際しだしたこともあり、店に残り続けることになった。


「おぉ。おはよう。すまへんなぁ・・・犬伏のやつが体調を崩してもうて・・・まぁ、きばっていこうや!」


メナと同じく関西出身の岡村も関西訛りで挨拶を返す。

岡村は発注とシフトの作成のために出勤してきたらしく、店長机の上にスマホを立てかけてネットのニュース配信を流しながら仕事をしていた。


「俺もある程度、シフトを書いたら出るから、それまでよろしゅうな。まぁ、ラッシュまでは何とか間に合わせるから」


「はい!」


岡村に元気よく返事しながら制服を羽織る。

その姿はどこか楽しそうでウキウキしながら、Tシャツの上から制服を着た。


「・・・でも、せっかくの休みやったんやろ?ええの?」


「えへ。この時間、彼氏と一緒やから・・・」


「そうか!そういえば、柳田と一緒のシフトか!」


顔を赤らめながら恥ずかしそうにメナが答え、岡村はチラッとシフトを確認するとこの日は本来、病欠で休みとなった犬伏と柳田であった。


「陽一郎と一緒やから・・・いっぱい話せるのが嬉しくて・・・」


メナは恥ずかしそうにモジモジしながら岡村に応える。岡村は嬉しそうに笑う。


「・・・うん。そろそろ時間やで。俺もはよ終わらせて出るから、頼むで」


「はい!」


メナが売り場に出ると、岡村は監視カメラのモニターを見ながら、シフトを書き始める。


『・・・次はお天気です。恵比寿のお天気カメラの映像をご覧いただきながら、関東の天気予報です』


スマホのニュース配信アプリが恵比寿のビルからの景色を映しながら関東地方の週間天気予報を伝える。

東京は1週間晴れが続くらしく、岡村は次の休みに家族とどこかへ行き、忙しくなるゴールデンウィーク前の家族サービスをしようと考えた。

ニュース配信アプリで映し出されている恵比寿も平日らしく通勤通学の人でごった返している。

ある程度、シフトを書き上げた岡村はふと監視カメラを見ると客が多くなっていくのがわかり、すぐに売り場に出た。

柳田が朝の外清掃に出ており、店の前の掃き掃除に出ている。


「メナちゃん、そろそろゴミ箱の中身、ほかしといてや」


「はい!」


メナは一杯になっているゴミ箱を開け、ゴミ袋を取り替えた。

やたらと重いように感じたが、よく見るとマナーの悪い客が弁当のゴミと空き缶を一緒に袋に入れており、いまさら仕分けるのも手間がかかるのでそのままゴミ庫へ持って行くことにした。


「・・・遠くで花火でもやってるんかな?・・・」


メナはふと遠くで大きな爆発音のような音がしたのを聞いて手を止めた。

岡村のスマホのニュース配信アプリの天気予報の映像では恵比寿で起きていた異変を映し出していた。


『・・・何か火事でしょうか?・・・ビルから煙が出ていますね・・・』


キャスターが映像の異変に気づき、恵比寿の映像をそのままにしていた矢先、轟音が鳴り響いた。


――――――――――――――――――――


同時刻。

ファミリーメイト浜松町香坂オフィス店

香坂オフィスビルの1階に面しているためか、上のテナントの会社の会社員でごった返していた。

この日は地域活性化チケットの販売開始やゴールデンウィーク1か月前とあって出勤前にチケットを購入する客が多く、発券で時間がかかっていた。


「うわっ!地震?!」


地面が揺れた感覚がし、金田は思わず声をあげてしまった。同じく揺れを感じた客もかなり驚いた様子だ。


「最近、多いですからね・・・何でしたっけ?南海トラフでしたっけ?・・・」


地震が多い関東で、たまに出る話題で金田も何度か耳にしている。

ようやく金田が受け付けていた地域活性化チケットが発券され、チケット用の封筒に入れて客に渡した。

だが、再び、地域活性化チケットの受付をする羽目になり、スキャンをするとエラーが出た。


「金田くん、ごめん!俺が受け付けていた」


山内が申し訳なさそうに金田の方を向く。

ファミリーメイトのレジのシステム上、チケット発券などは店舗内の1つのレジが受け付けると、他のレジは連動してチケットの発券が出来なくなるのだった。


「こんなレジシステムでよくぞこんな商材を扱うことになったよな・・・」


オーナーの天野も大きなため息をつき、金田が終わったタイミングで発券を受け付けた。

ふと山内が外を見ると店の前の横断歩道の向こうにフミがいるのが見えた。


「・・・ようやくフミちゃんが来たようだ・・・金田くん、そろそろあがっても大丈夫だよ」


山内は金田に伝え、金田もフミが来たら退勤しようと考えていた。


――――――――――――――――――――


「間に合った!そろそろ着きそう!」


信号に捕まっていたフミは青信号に切り替わったタイミングで横断歩道を渡ろうとした。

その瞬間、地鳴りのような音と振動、風に舞って飛んできた土埃が目に入りそうになり、思わず目を閉じて歩くのを止めた。


「何?地震?」


最近、多いな、と思いながら、まだ青信号の横断歩道を渡ろうとした時、目の前の自分が勤める店の中で爆発が起きた。

フミの目線ではスローモーションで流れ、ガラスの破片が混じった爆煙が眼前へと迫ってきた。

声を出すまもなく、再び目を閉じたところでフミは自分の体が浮く感覚がした。

しばらくして皮膚に痛みが走り、目を開けると眼前に広がっていたのは自分が勤める店舗が燃え盛る光景だった。


「いや・・・」


これは夢であって欲しいと願うが、皮膚に走る痛みが現実であることを教え、ガラス片が袖を切り裂き、腕の皮膚を切っていた。

腕からは血が流れているものの、手は動くのでそこまで深い傷ではないようだ。


「そんな・・・」


口を動かしていくと何かの液体が流れていく感覚がしたため、その液体に触れてみると真っ赤な自分の血液であった。

そして、遠くでパトカーや消防車のサイレンが鳴り響く。


「いやああああああああ!!!!」


ようやく何が起きたかを理解したフミは恐怖のあまり、断末魔をあげた。

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