特定~マシンガンレイン~
ここに一本の動画がある。
再生すると、コンビニの店舗内で怒号が飛び交うダイジェスト映像が飛び込んできた。
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動画内では上下黒の動きやすい服装の男、戦部圭亮がカスタマーハラスメントをしたであろうコンビニ客に自らのした行為を咎めていた。
「あなたのやってることは立派なカスタマーハラスメントだって言ってんだよ!!!」
「だから、お前には関係ないだろ!!」
次の場面ではコンビニ客が逃走を図るシーンに切り替わり、戦部が「待てゴルァ!!!」と追いかけ、地面に叩きつけて取り押さえていた。
そして、すぐに黒地のバックに声明ととれる文言を大きく映し出していた。
"
全てのカスタマーハラスメント客に告ぐ
イクサch 戦部圭亮が
お前たちを駆逐する
"
そして、タイトルバックが大きく映し出された後、この"民間公安系YouTuber"という活動に賛同したという事業所―ネパール料理の店・ダニャバーの店舗画像やメニューの写真などが紹介された。
「この活動にご賛同いただいた那覇市壺屋、ネパール料理の店・ダニャバーさんの提供でお送りいたします。ご支援いただき、ありがとうございます。詳しい内容は概要欄までよろしくお願いします」
概要欄にはその事業所のSNSのリンクが貼ってあったのだった。――――
動画は戦部がコンビニをパトロールするところから始まった。
ただし、場所は国際通りではなく那覇市の繁華街である松山地区だった。
戦部自身が動画に映っている事から撮影担当のスタッフも同行して、主にライブ配信アプリを使ってパトロールし、後にそれをアーカイブとしてYouTube等の動画サイトにアップする事になっている。
まず戦部が立ち寄ったのは松山の中央部であるオーソン那覇松山店だった。
店をグルっと一周したところで戦部はエナジードリンクを1本買い、店の外でしばらく待機する。
10分ほど経ったところで、何もない事から次の店へと向かう。
裏手の路地に入るとスリーセブン松山2丁目店に入り、同じく店をグルッと一周してスリーセブンのホットスナックであるセブチキを買うと同じく店の外でしばらく待機して10分ほどして再び、店を後にする。
ファミリーメイト那覇松山店でも同様の行動を繰り返す。
「今日はテロの影響でか、国際通りが封鎖されていまして・・・松山にいますが、皮肉なことにすごく平和ですね」
戦部は笑いながら、立ち寄った先で購入したエナジードリンクを飲みながら最初の店であるオーソン那覇松山店に戻っていた。
流石に二週目は店内には入らず、店の前でたむろしながらレジを見る事になっている。
おおよそのコンビニは入り口からレジの様子を見る事が出来るため、そこからトラブルが発生するのかどうかを監視できるのだった。
「僕の動画のリスナーさんならわかるけど、カスハラはおおよそレジで起きるからね。ここからでも十分」
と戦部は撮影担当と談笑しながらずっとレジを見ていたが、何も起きないようなので先ほどの順番通りに移動する。
スリーセブン松山2丁目店の前に再び来ると同じように入口からレジの様子を伺う。
するとキャッチの男がタバコをポイ捨てしたのですかさず戦部は「ポイ捨てはダメでしょ」と注意すると、案の定、キャッチから罵声を浴びられた。
「あぁ?関係ねぇだろ!」
「わかるだろ。タバコポイ捨てはダメだって。当たり前だろ」
状況を確認するため、一旦、レジの方向を撮影しながら様子を伺う。
「こっちは毎日来てるんだからさぁ、見逃してもらってんの。後であいつらが掃除するからいいでしょ。マニュアル通りに仕事するのがあいつらの仕事なんだから」
どうせポイ捨てしても掃除してくれるから、と言い訳をするキャッチの言動を戦部は「これは立派なカスハラなんだよ」とカスハラである事を確認。
だが、キャッチは「カスハラなわけないじゃん。これはあいつらがやる仕事」とカスハラである事を頑として認めない。
レジから出てきた本部社員らしきスーツの男がキャッチの肩を叩いて声をかけた。
「どうかされました?」
「あぁ?」
お前は何だ?と言わんばかりにキャッチは本部社員を睨みつけたが、一旦、怯んでも「どうかされました?と訊いてるんですよ」ともう一度質問する。
すると、「そこにいる変な奴が、ポイ捨てを注意した」とズレた返答をしてきたので「左様ですか・・・」とこれはちょっと面倒くさいと考えた本部社員はすごすごと去ろうとした。
「本部の人?」と戦部は質問をしてきたので、「そうですけど・・・そこのお客さんと何かトラブルでもあったかなって思ったんですが、そこまで大したトラブルじゃなさそうですね」と店の中に戻ろうとしていた。
本部社員は面倒くさいな、という態度を滲ませ、キャッチも「ほら、本部の人もこう言ってるから、お前に関係ないじゃん」とその場から去ろうとした。
「逃げんなよ。タバコ拾って捨ててねぇだろ。こっちはタバコのポイ捨てを注意したんだよ、さっきからさぁ!」
怒りを滲ませながら男の退路を塞ぐ。
「だから、お前に関係ないって言ってんだろ!?あぁ?!退けよ!!」
キャッチもスイッチが入ったのか、大きな声で戦部を威嚇し始めた。
その間に撮影担当が従業員から話を訊いており、「付近によくポイ捨てをしていて困っていたそうです」と戦部に報告する。
「お前、やってる事、カスタマーハラスメントじゃん。なぁ?」
「は??」
「お前さ、人の迷惑考えないのかよ?」
「俺は毎日、この店に金を落としているんだから、これくらいいいだろって言ったんだよ!本部の社員もいいって言ってんだからさぁ!!」
「さっきからお前さ、自分が責任を負う事から逃げてん?・・・」
「だから、お前は関係ないだろ!!退けよ!!」
戦部の話を遮るように怒鳴ったキャッチはタトゥーだらけの右腕で「退け」と空を掻いた。
それでも引くことなく戦部は「あなたのやってることは立派なカスタマーハラスメントだって言ってんだよ!!!」と男に吠える。
「だから、お前には関係ないだろ!!」
キャッチは強行突破しようと戦部を突き飛ばし、戦部は受け身を取ってすぐさま店を出たキャッチを追い始めた。
「待てゴルァ!!!」
戦部が思った以上に立ち上がるのが早かったためか、キャッチは驚きつつも殴りかかろうとしたところで戦部にその場で地面に叩きつけられた。
「お前、カスタマーハラスメントをやったよな?あぁ!?」
戦部に取り押さえられてもなお、男は「関係ないだろ!!」と言い続けていた。
すでにキャッチやキャバ嬢やホストといった松山で働く人達の野次馬が出来ているが、黒服や全く興味のない通行人は素通りするだけだった。
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その配信を正恭は見ており、戦部とキャッチが問答をしているのを横目に去る人の群れの中からファミメ泊1丁目店にも現れた人物を見つけていた。
「いた・・・いたぞ!!テロリストは、松山にいるぞ!」
正恭はすぐに野次馬の群れの中にいた1人を指差していた。
背格好はほぼ同じであるが、ほんの一瞬である上に拡大したせいもあってか、画質も荒かった。
「わかりづらいな・・・」
和己はこれでは本当にテロリストかどうかわからないと言うと、「では、"ウィドー"を使いましょうか」と澤北は提案した。――――――




