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〜Past Glory〜  作者: パイナップルの妖精
第六章「黒兎伝」
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二話「父と娘」




 妨害屋は魔界都市ならではの職業だ。

 殺し屋や傭兵、賞金稼ぎたちから蛇蝎の如く嫌われているが、一部の者たちから重宝されている。


 デスシティで戦闘職に就いている者は、端的に言ってバケモノだ。

 彼らと戦い、時間を稼げる妨害屋は、雇い主にとって最後の切り札となり得た。


 黒い兎のフードを深く被り、目的地まで跳躍する黒兎。

 高層ビルの側面を疾走し、滑空車の群れの上を八艘跳びの要領で渡る。


 時間帯は夜──魔界都市が最も栄える時間帯だ。


 向かう場所は西区、闇市場近くの路地裏。

 日雇いの用心棒らが時間を稼いでいるというが、長くは保たないだろう。


 黒兎は疾く駆けた。

 その手に、ミスリル銀製の長棒を携えながら──



 ◆◆



「ひぃぃッ」


 暴力団の組長は思わず尻餅をつく。

 用心棒たちを容易く殺していく褐色肌の美丈夫、大和。

 灰色の三白眼が獲物を捉える。


「無駄な時間稼ぎなんてすんな。潔く死ねよ」

「ば、馬鹿を言うな! こんな所で死んでたまるか!」

「死ねにはいい日だろう? なぁ? 死ねよ。楽に殺してやるからこっちに来い」

「ひ、ひぃぃッ!!」


 取り巻きの構成員も、用心棒たちも、恐怖で震え上がる。


 世界最強の殺し屋、大和。

 理不尽の権化。意思を持った災害。


 対峙することが間違っている。

 戦っていい相手ではない。


 用心棒たちは堪らず逃げ出す。

 構成員たちも我先にと走りだした


「ま、待てお前ら!! 私を置いていくな!!」

「終わりだな」


 大和は手を伸ばす。

 組長の顔がバラバラになる直前──ミスリル銀製の長棒が指を弾いた。


 恐る恐る目をあける組長。

 少女の背が映った。


「二分、時間を稼ぎます。その間に逃げてください」

「……誰だ、お前は……っ。私の味方なのか?」

「無駄な問答をしている暇はありません。早く」


 組長は大和を一瞥すると、形振りかまわず逃げだす。

 路地裏を出て闇タクシーを無理やり止めた。


 大和は黒兎(こくと)を見ると、形のいい眉をへの字にする。


「こら、パパの仕事を邪魔するんじゃない」

「こちらもお仕事なのですよ。短い間ですが、お手合わせ願います。パパ……じゃなかった、お父さん」

「……ったく、しょーがねーな」


 大和は額をおさえる。

 その顔は殺し屋のものではなく父親のものだった。


「相手してやる、かかってこい」

「はい、よろしくお願いします」


 黒兎は頭を下げると、ミスリル銀製の長棒を槍のように振り回した。



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― 新着の感想 ―
[一言] リメイク後一番の衝撃>パパ呼び
[一言] これは稽古をねだる娘と忙しいけれど応じる父親
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