表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〜Past Glory〜  作者: パイナップルの妖精
外伝「天使伝」
28/58

一話「天使」




 天使。

 この単語を聞いて、何を想像するだろうか? 


 無垢なる存在。

 神の御使い。

 汚れを知らぬ者たち。

 天界の住民。


 昨今、様々な姿で描かれる神秘の代名詞。

 彼女たちの真実を知る者は少ない。


 天使は、「神」が創造した最古のアンドロイドである。


 超常の権能で製造された高次元霊体。

 世界の秩序を護り、時に「天罰」という名の災害を齎す戦略兵器。

 それが、天使という存在だ。


 しかし、彼女たちは神話の時代に絶滅している。

 当時の英雄たちによって殆ど破壊されたからだ。


 だが彼女たちの……否、唯一神の呪詛(怒り)は、原罪として残り続けていた。



 ◆◆



「天使病?」


 大衆酒場ゲートのカウンターで、褐色肌の美丈夫が首を傾げる。


「そうだ」


 反対側にいる金髪の偉丈夫が頷く。

 美丈夫、大和はグラスにラム酒を注ぎながら言った。


「久々に聞いたぜ。ここ最近聞かなかったんだがな」

「人類史が進んでいる証だろう。いい意味でも、悪い意味でも」

「そうだな」


 偉丈夫、ネメアの言葉に大和は相槌をうつ。


 天使病。

 七つの大罪を犯した者を呪い、醜悪な怪物に変えてしまう不治の病。

 裏の世界では黒死病(ペスト)と並ぶとまで言われているバイオハザードだ。


「ならアイツらが動き出すんじゃないか?」

「天使殺戮士か?」

「そう」


 天使殺戮士。

 キリスト教の一派、プロテスタントの最高戦力。

 天使病の患者を狩る、死の外科医たちだ。


「天使病ならアイツらがどうにかするだろ」

「意味もなく話すと思うか? 依頼だよ」

「マジで?」

「マジだ」


 大和はあからさま嫌そうな顔をする。


「他を当たってくれ」

「諦めろ」

「ヤダ」


 そっぽを向く大和に、ネメアはため息を吐く。

 まるで王族に宛てられるような豪勢な手紙を出した。


「読め」

「ヤダ」

「読むんだ」

「……あーあー、まったくよー」


 諦めた大和は手紙を取って内容を確認する。

 しばらくすると、ふむふむと顎を擦った。


「なるほどねぇ、それで俺に依頼したってワケか」

「天使殺戮士の現トップはレオンだ。アイツが意味もなくお前を頼るとは思えない」

「面倒な事になってるみてぇだな。……これはしゃーねぇか」


 ネメアに手紙を返すと、ラムを口に含む。

 そして言った。


「しばらくこの店にいる」

「どうした」

「あっちがエージェントを送ってくるらしい」

「……天使殺戮士か?」

「YES」


 もうすぐ魔人たちがやってくる。



 ◆◆



 世界の果てに存在する魔界都市は犯罪者の楽園だ。

 あらゆる犯罪を肯定し、あらゆる悪徳を容認する。


 人外の隠れ家という一面を持つこの都には様々な種族がいる。

 エルフ、ダークエルフ、ゴブリン、オーク、ドワーフ、ドラゴン。

 他にも悪魔、妖怪、魔獣、吸血鬼、アマゾネスなど──


 どんな存在も受け入れる。

 だから自然も人間以外の者たちがやってくる。


 ここは闇の楽園。

 神魔霊獣の極楽浄土だ。


 中央区、花の大通りではヤクザたちが銃撃戦を繰り広げていた。

 エルフが自慢の強弓でアンドロイドを撃ち抜き、アンドロイドが仕返しにレーザーライフルを放つ。


 その様子を、薄く笑いながら眺めている一人の青年がいた。

 黒鉄の長棒で肩をとんとんと叩いている。


 その背に抱えているのは身長を優に超える巨大な棺桶(かんおけ)だった。

 人を収めるにはあまりにも大き過ぎる。


 ふと、オークの集団が巨大な棺桶にぶつかった。

 余所見をしていたのだろう。


 一人のオークが尻餅を付いた。

 周りの者たちは驚愕する。

 

 オークは屈強な種族だ。

 身長2メートル、体重300キロを平均とする彼らに尻餅を付かせるなどただごとではない。


「……こんのッ」


 オークたちの額に青筋が立つ。

 彼らは自分たちに恥をかかせた存在を許さない。


 しかし、一瞬で怒気を失った。

 振り返った青年があまりにも美しかったからだ。


 まるで新雪のような白い肌。

 鼻梁は高すぎず低すぎず、絶妙なラインを描いている。

 長めのまつ毛はえもいわれぬ色気を放っていた。


 鋭利な双眸。長身痩躯の肉体。

 赤茶色の髪はある程度の長さで整えられており、耳元のピアスが若々しさを象徴している。

 服装は黒色のレザーコートに皮のパンツ。


 絶世の美青年にオークたちは放心していた。

 ただただ見惚れていた。


「わりぃ、余所見してた。大丈夫か?」

「あ、ああ……こっちこそすまねぇ」


 青年は屈託のない笑みを返す。


「よかった。じゃ、俺はもういくから」


 手を振り、その場を後にする。


 少しすると中央区でも有名な大衆酒場にたどり着いた。

 青年は細い顎をさする。


「ここか」


 彼の名は斬魔(ざんま)

 唯一神教の一派、プロテスタントが誇る最高戦力。

 対天使病のプロフェッショナル。人智を逸脱した魔人たち。

 天使殺戮士である。



 新たな物語がはじまる。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ