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ゴミ溜めVRMMO記録  作者: どうしようもない
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記録.57『未開放領域(リージョン)戦線』

 

「お、らぁッッ!!!!」


 何十体目かの蟹甲羅を両断する。

 船の甲板は生臭さと、プレイヤーの血で地獄絵図と化し、所々に踏み潰された臓物と思わしき何かが散乱している。


 しかし、それは仕方が無い事と言える。

 俺達が相手取る魔物は〔カニバルクラブ〕。言ってしまえば、食人カニだ。戦闘力に不安がある奴らは軒並み食われ、今や俺達の周りをふよふよと浮遊する海上霊魂になっているだろう。


 更に厄介なことに、このカニ連中は”食ったプレイヤーのスキルを幾つか引き継ぐ”と来た。ダメージを受けた瞬間、即時に回復を挟む《瞬間治癒》やら身体を硬化させる《硬質化》を食ったカニは恐ろしいまでの変貌を遂げる。


「ちょ、待って!待って!美味くない!味しないから!や、やめてっ―――」


 直ぐ近くで命乞いとバリモシャと食われる音がする。

 プレイヤーが食われた瞬間、辺りの連中がこぞって武器を持ち、カニをリンチにする。獲物を喰らっている時が、最も安全にリンチに出来る時間だ。


 俺も急いで混ざっておこぼれにあやかろうとする。

 その結果出来上がったのは、カニだった何かとプレイヤーだった何かの残骸…。俺達はそれを足蹴にして海へと落とした。


「合掌…」


 誰かがそう言うと、皆が手を合わせて目を瞑った。

 俺達は日本人だ。感謝の心を忘れるな。ネテロ会長にはなれずとも、心だけはネテロ会長だ。


 暫くして目を開けると、俺の後ろにいた奴がカニの鋏でちょん切られていた。


 …あーあ、合掌なんかしてっからだぞ。

 そろそろこのチキンレースやめようぜ?誰だよ、合掌しよって言い始めた奴。


 俺達は再び、カニとカニに食われたプレイヤーをリンチにして海へと投棄する。

 気付けば、二桁いた乗員は一桁にまで減少していた。俺とラミミ、プロペラを除いたら五人しか生き残ってねぇ。


 おい、一回帰るべきじゃねぇのか?

 次の襲撃、この人数じゃ生き残れねぇぞ。合掌システムも撤廃しろ。意味がない。人の生き死ににそんな感傷的になるなや。これはゲームだぞ。所詮死んだ奴らは今も俺達を見つめている。パンチラを、胸チラを、脇チラを、そしてへそチラを期待して留まってる奴らばっかだろう。


 俺の言葉を聞いて、ラミミが自分の服装を確認する。

 安心しろよ、お前の服装は鉄壁だ。どっからどう頑張ってもラッキーチラリズムは訪れねぇ。次からはもっと遊び心を出していこうな。


 二号船の船長を自称する白髭の男がパイプを咥えながら言う。


もほることはゆ(戻る事は)ふひゃれはい。(許されない)ふふめ(進め)ふぁれらの(我らの)ほーひをひんひて(勝利を信じて)


 ………。

 船長を含めない七人のプレイヤーが静かに顔を見合わせて頷き合う。

 プロペラが風魔法を使って、船長を甲板に叩き落とす。すぐさまラミミが巨槌で四肢を(ひしゃ)げ潰す。


「え?え?」


 俺達は、困惑する船長を持ってそのまま海へと投げ入れた。


 ざぱーん!

 勢いよく水飛沫があがる。

 四肢がなくなった船長は、溺死よりも先に失血死で死に至る。言葉などいらなかった。配慮など必要なかった。


 甲板に転がったパイプが、波揺れで海へと滑り落ちた。

 俺達は悪くない。正しい事をしたんだ。



 海上に浮かぶ一つの船……。

 密閉殺人事件、発生…!犯人は、一体誰なんだ!?




 真実はいつも一つ。

 しかし、その真実が正しいとは限らない。


 ◇■◇


 船長が謎の死を遂げてすぐ、俺達は新たな問題に直面する。


「面舵取れる奴いる?」


 船長は、腐っても船長だった。

 ここにいる誰もが船の操作など知り得なかったのだ。とりあえず適当にみんなやってみたが、全然上手く進まない。下手したら戻ってこられなくなる。


 プロペラがメッセージで他の船の連中と連絡を取り、座標を特定することで助かる目途は立ったものの、問題は俺達がどう生き残るかだ。

 甲板を見るとカニに付け加え、タコまでもが侵入している。


 おい、これどうすんだ。

 俺が隣のやつの脇腹にチョップを入れながら聞くと、そいつは嫌そうな顔をしながら言った。


「どうするもなにも、やるしかないだろ。いつまでもここにいたって、いつかは到達されて一網打尽だ」


 はぁ。

 くそが、やっぱそうなるか。おい、ラミミ、準備は大丈夫か。タコには掴まるなよ。R18展開にされても助けるのが遅くなるかもしれねぇぞ。


「自分の心配をしろ」


 万夫不当を体現するかのような返答をするラミミ。

 随分と自信があるじゃねぇの?ええ?

 俺の目の前にいるのは、エビふりゃーに泣かされた幼女だ。しかし、こうして隣立つとやはり化け物だという事を実感する。


 ルーキーでありながら、廃人クラスの戦闘力を持つだけの事はある。

 それでもやはり、それを実感する度に陽炎の様に付き従うのは、エビふりゃーの凄さだ。奴の底知れない戦闘力、戦略…全てがパラメーターMAXのチートキャラだ。


 ゲームを加速させる加速因子(イレギュラー)の名は伊達じゃない。


 ナイフを取り出し、血液腕を成形する。

 他の連中もそれぞれの武器を取り、海魔蠢く甲板へと向かって行った。

 正直、ここに留まって奴らが奮闘する様を見ていたい。しかし、今や、俺と奴らは運命共同体…ゾッとしない関係だ。


 俺は思い切り跳躍し、携えた血液腕を思い切り犇めく魔物共にぶつけるのだった……。


 ◇■◇


 皆さん、いかがお過ごしでしょうか。


 私は元気です。

 手足一つも欠けていない健康体でございます。


 ところで、空をご覧ください。

 地平線の果てまで一つの雲も見えない、完璧な快晴でございます。こんな日にはピクニックでも出かけたいですね。


 がぼッ…!がぼぼっ!!

 ……失礼…、少々痰が絡まっているようでして…。



 〔ラミミ:どこ居る〕

 〔ラミミ:床いる〕

 〔ラミミ:どこ射る〕

 〔空の人:ふぁいとー〕

 〔ラミミ:どこいる〕



 …重ね重ね失礼…。

 それにしても、空が綺麗だ。

 そう、なんというか……空が綺麗だ。


 が、ぼぼぼぼぼぼぼぼぼ!!!!!!

 ちょ、ガッ…!ぼぼぼっ…!

 ぼ、ボーちゃんに、ボーちゃんになっちゃう…!



 酷く青い空、窒息しかける喉、きつく締め付ける触手…。

 豪華クルージングではなく、俺はタコの触手に絡め取られて海を進んでいた。

 海上に顔を出しては、再び沈むの繰り返し…やる事と言ったら空を見るくらい…。


 俺が海中恐怖症じゃなくて良かったな。深い海っつーのを怖がる奴も結構いんだぞ。

 おい、聞いてんのか。タコ助が。俺の独り言にタコは一切の反応を示さない。くそが、てめーいつか絶対タコ焼きにしてやるからな。



 ………タコと共に海を渡り続けて、暫く経った頃、ようやくタコが止まり、俺は投げ捨てられた。


「ぶべっ」


 身体が地面に打ち付けられ、二転三転とバウンドする。

 幸い、地面が砂だったこともあり、ダメージは少なかった。おらぁ!タコ助がぁ!てめぇ殺してやるッ!!ずーっと俺を荒波打ち付けやがって!美味しく食べてやるからこっち来いやぁ!


 立ち上がり、俺が来た方向を向くと、そこにもうタコはいなかった。

 あるのはだだっ広い青い海のみ……。


「……スゥ―……や、やばくね?」


 状況の把握に至って、俺は自分の危機的状況にようやく気付く。

 だ、誰かー!誰かタスケテー!

 俺を救ってくれー!!ラミミー!プロペラ―!船長ー!!


 プライドなどとうに捨てた。

 俺は恥も外面も無く、海へ向かって叫んだ。だ、ダメだ……。



 俺は絶望した。

 ここで俺の命は潰えるんだ……。くそぅ…こんな事になるなら、もっと自由奔放に生きるんだった……人の顔色ばかり見る人生だったな…今度は搾取される側じゃなくて、搾取する側のプレイヤーになりたい……!



 …ん?いや、待てよ…。


 …そうじゃん、メッセージ使えばいいじゃん。

 遭難したという事実のせいで忘れかけていたが、俺はなんでもござれのプレイヤーだ。最悪死ねばいいし、メッセージで連絡も取れる。ヘルプコールを送れば、正確な座標を送ることだってできるじゃねぇか。


 混乱のあまり、プレイヤー特権の存在を忘れちまってたな。

 俺は、すぐさまフレンドリストから手当たり次第メッセージを送信する。反応がまちまちあるが、どれもおかしい……


 〔繧ィ繝薙:繧翫c繝シ?壹◎繧後←縺難シ溘ヰ繧ー縺」縺ヲ繧薙□縺代←〕

 〔繝ゥ繝溘Α:壹ヵ繝ャ繝ウ繝峨す繧ケ繝?Β縺後″縺ョ縺?@縺ヲ縺ェ縺?シ〕

 〔空の莠コ:たすけ縺ヲ〕

 〔繝ゥ繝ゥ:壹◆縺ョ縺励◎縺〕


 も、文字化けしてやがる…!

 一体どういうことだ?ま、まさか…『未開放領域』っつーことか…?ここが?じょ、冗談だろ…?



『未開放領域』。

 β時代は当たり前だった要素だ。

 今のSoul・Learning・Onlineでは、海外連中が俺達よりもずーっと先に進んでいるから、未開の地でもフレンドシステムが機能する。


 しかし、海外勢すらも到達しえない…世界で未だ誰も足を踏み入れていない場所に至っては、システムが一部停止するのだ。

 システム復旧の条件は幾つかあるが、



 ・五百人以上のプレイヤーが未開放領域に足を踏み入れ、一時間が経過する。

 ・未開放領域で街を発見し、命名する。

 ・一体、ボスを倒す



 この何れかが達成できれば、システムは即時復旧する。

 しかし、今の俺にとって最も簡単な人海戦術の達成は不可能だ。だからと言って、死んで戻るのはあまりにも惜しい…!それに未開放領域を放置して逃げ帰ったとなれば、何を言われるか分かったもんじゃねぇ。


 ど、どうする…!

 恐らく、日本サーバーにおいて初めての未開放領域(リージョン)戦線だ。下手をかましたら何を言われるか分からない。だからといって逃げ帰る事も許されない。四面楚歌…背水の陣…後には引けない…。


 や、やるしか…やるしかねぇ…!

 決意を固め、立ち上がる。目の前に広がるのは鬱蒼とした密林だ。ナイフを持ち、その密林の中へと入ろうとしたその時…!


「ぶふ」


 突然、浜辺から人の声が聞こえた。こ、この声は…ま、まさか…!

 俺は走って、その声がした方へと走る。

 そこには、サメに下半身を飲み込まれたマーメイドが転がっていた…。


 そして、そのマーメイドの正体は…!



「…ぷ、プロペラくぅん!!!!」


 真っ青な顔で口から水を吹く、プロペラその人がそこにはいた。


 日本が誇るよだかと(ごみ)による未開放領域(リージョン)戦線、開幕……!!

『未開放領域』

 Soul・Learning・Onlineは世界サーバーが存在し、全ての進捗がリアルタイムで更新される。

 その為、国ごとにサーバーは違えど、別の国のプレイヤー達が解放した領域においては全てのサーバーで『解放済領域』として処理され、同期が為される。

 街の発見、ボスの討伐、遺失の欠片の使用、ダンジョン踏破等、サーバー独立進捗においては同期されない。



評価有難うございます!

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当作品はゴミ共の命によってモチベーションが賄われています。
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