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ゴミ溜めVRMMO記録  作者: どうしようもない
41/115

記録.41『制裁』

 

「よぉ」


 そう言って、捕縛された俺とドクターの前にエビふりゃーは冷然と俺達を見下す様に現れた。


 よぉ、最強廃人様。

 気分はどうだ?

 俺たちゃ最高だぜ。なにせ、女の尻に敷かれているんだ。こんな良い事無いだろ?お前もそう言ってたよな?エビふりゃー。


 笑みを崩さず、俺は奴にそう言った。

 今、俺とドクターの立場は圧倒的に下だ。ここで更に下手に出りゃ、どんな事をされるか分かったもんじゃねぇ。せめて、口だけは一丁前にしないとやばい。


 俺の言葉にエビふりゃーは冷ややかな目線をやめ、少し笑いながら言った。


「ああ、そうだな」


 ああ、そうだろうそうだろう。

 お前が、力に囚われる前はずっとそんな馬鹿げた話をしたもんな。



 俺と、お前と、――――ターミナルでよ。



 俺が一人のプレイヤー名を出した瞬間、エビふりゃーの気配は爆発的に殺意が増し、射殺す勢いで俺を睨み付けた。


 おいおい、昔ながらの友達にその視線は無しにしようぜ?

 悪かった、悪かったよ。もう言わねぇよ。アイツの話はよ。それでいいだろ?な?



「ああ、そうだな。俺も別にお前らに用があるわけじゃない」


 ……?

 エビ野郎…てめぇ何言ってやがる…?

 てめぇの武器は俺が持っている。俺達がお前に用がなくても、てめぇは俺達に用があるはずだ。お前の愛剣を持っているんだから。


 そんな言葉を発した俺を、エビふりゃーは再度冷ややかな目で見た。

 そして、リップクリームを取り出し、唇に塗りながらこう言った。


「お前たち…いや、ルート、お前は特に制裁が必要だ。だから今回、ある人達を呼んだ」


 ある人達…?

 てめぇ何を考えていやがる…?


 俺の怯えた表情を見て、エビふりゃーは笑いながら、その()()()()を呼んだ。そこに現れたのは……、


「やぁ、ルート、ドクター、元気かい?」


 ラ、ラックくぅん!


「ラック氏ー!」


 その人は、”不死身の聖人”ラックその人だった。


 俺は無性に嬉しくなる。

 ラック君!貴方が俺の指導をしてくれるのか!俺頑張るよ!ラック君の指導なら俺きっと更生できる!任せてよ!自分を律するの得意なんだ!


 俺は、ラック君の姿を見て饒舌になる。

 ラック君は忙しい。β組の良心達は、日夜廃人共が犯した事件の後処理に回るからだ。そんな貴重な良心の一人、ラック君が俺とドクターを指導してくれるなんて、一体いくら金を払えばいいんだ!


 ああ、嬉しい、嬉しいな♪


 俺がランラン気分で浮かれ出す。

 そんな気持ちが良い俺を、突然ドクターが引き攣った様な声色で呼んだ。


「る、ルート氏!ルート氏っ!」


 ああ?

 どうしたんだよドクター。今から楽しみで寝られねぇってか?お菓子は三百円までって約束を破ったか心配か?安心しろよ、家から持ってきたお菓子はそこにゃ入らねぇよ。先生もバナナになってねぇ。安心しな。


「な、なに言ってるんです…!あ、あれ!あれ見てください…!」


 んー?

 てめぇはさっきから何焦って………あ、ああ…あああああ!!



「ああ、ルート。勿論だが、お前の担当はラック君じゃないぞ」


 エビふりゃーの言葉が聞こえる。

 霞む様に、俺の視界がぼやけていく。

 涙が、ぼろぼろと頬に垂れていっているのが分かる。俺は、この地獄に救いを求めたかった。


 エビふりゃーの後ろを歩いてくる女がいる。

 銀髪の長い髪に、真っ赤な瞳、口元には豪快な笑みが張り付いている……。


 や、奴は…!奴は…!


「久しぶりだなぁ!掃き溜め!ドクター!」



 β組の良心…『ドラ子』…!



 さ、最悪だ…!

 良心の中でもトップクラスにやばいタイプの奴が来ちまった!良心なら、優しいアフターケアをしてくれよぉ…!なんでよりによってドラ子なんだよぉ…!


 俺は更に激しく涙を流す。

 そんな俺を見て、ドラ子は笑い、ラック君はおろおろと心配そうな目線を向けた。

 ドクターが可愛そうな子を見る目を向けてくる。お前は良いなぁ……ラック君でさぁ……

 恨みがましい目を向ける俺をドクターは知らんぷりした。こ、こいつ…


 俺がどうにかドクターに殴りかかろうと模索していると、エビふりゃーは俺達にこう言い放つのだった。


「ちなみに、お前らが奪った剣な。あれただの鉄くずだから。大切な剣を不用心な場所に置いとく訳ないだろ」


 あ…ああ、ああああ……


 あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!


 ◇■◇


「ぜぇっ、ぜぇっ……ぜぇっ…」


 ドラ子は間違いなくβ組の良心だ。


 廃人共が起こした幾つもの事件を単独で解決し、その後処理を行っている。

 ラック君の凄さには劣るものの、良心と呼ぶには十分すぎるほどの活躍を為している。



 しかし、この女は些か暴力気質なところがある。


 確かに、こいつはβの良心だ。

 良心ではあるが、同時に闇を孕んでいる。乱暴すぎる解決方法が、良心と呼ぶべきかをせめぎ合わせる。

 その為、いつもこいつには決まって”女神”と呼ばれるプレイヤーが傍にいた。β組の良心の一人だ。


 ラック君と同等、またはそれ以上に温和で優しい子だ。彼女がドラ子の手綱を握っていた。なのに、なのになんで……



「オラァ!もっと足動かせや!」


 なんでいないんですか……手綱の握り役…。


 俺は泣き言を吐きながら、海辺を走った。

 腰には紐が巻かれており、紐の先には大きな鉱石が括りつけられている。え、円堂守じゃねぇんだぞ……。


 俺は超次元サッカーの様な特訓をさせられている。


 ひたすら走る。走る。走る。

 泣き言を言っても、立たされ、こん棒で身体中をしばき回された後に再び走らされる。


「遅いんだよ!お前はよぉ!」


 は、浜辺でやるから…足が上手く踏ん張れないだろーが……ッ!!

 まずよぉ、てめぇの指導は前時代的すぎるんだよ…!罰走受けてる気分だわ!いや、罰走で間違いはないんだろうがさ。こんな仕打ちずっと受けたら俺引退するぞ?ああ?


「もっと熱くなれよ!!」


 うるせぇよ!

 熱いよ!体中が熱いよ!なんで冬なのにわざわざ浜辺でこんな事しなきゃいけねぇんだ!なんでこの辺は雪降ってねぇんだよ!太陽が照り付けて暑苦しいわ!


 松岡〇造みたいな事を言いやがったドラ子に、俺は言い返す。

 俺は腰の紐を外し、ドラ子のおでこにおでこをぶつけ、ガンをつける。


 なぁ、もっと優しくしちゃくれませんかねぇ?

 人には限界あるんすよ。俺の限界は結構すぐそこにあるんすよ。つーかもう限界なんすよ。かれこれ二時間は走りっぱなしですけどね…!


 もういいでしょ?

 なぁ、もういいと思うんだけど。

 そろそろなんか食い行きません???

 満腹数値も減ってきたでしょ、あんたずっと声出してるじゃないすか。ねぇ、行こうよ。ねぇ。ねぇ。


 俺の圧にドラ子は若干後ずさる。

 ドラ子の銀髪が俺の顔に掛かる。

 あああ、うぜぇ!お前よく髪こんな長くて気にならないな、尊敬するよマジで!!!なぁ、やっぱ女子って心持ち違うね!ほんと!!


「お、おお…そうか…」


 最早どこに着地したらいいのか分からない俺の言葉に、ドラ子は少し嬉しそうに頷く。あれ?なんかこいつ押しに弱くね?


 俺は笑みを浮かべる。

 この女…昔と比べて押しにめちゃくちゃ弱くなっていやがる…。


 どういうことだ…?なんでこんなに……ハッ!


 俺は理解する。

 ”女神”だ。そういえば、こいつにはいつも”女神”が傍にいた。

 ドラ子の暴力的な暴走を止める為に、最終的な判断は基本女神が行っていた。


 そこから導き出される衝撃の事実…!

 こいつ…!自立しきっていない!女神に依存し過ぎた結果だ…!


 くけけ…!

 こりゃ使える…!使えるぜぇ…!


「飯さっさと食い行こうぜ。な、美味しい店知ってるからさ」


「あ、ああ」




 生まれながらの詐欺師…。


 ◇■◇


「おっちゃん、枝豆とー鶏皮ポン酢とー…」


 がやがやと賑わう居酒屋で、俺とドラ子は飯を食うことにした。

 どんどん注文していいぞ。今回は俺の奢りだ。好きなもん食え。


 俺がそう言っても、ドラ子は中々注文しようとしない。


 そこで気付く…。

 ははぁん…。こいつ、知り合いの中じゃ大声出せるが、知らない奴ばっかのとこじゃ、途端にダメになる内弁慶タイプだ。ラミミと似てはいるが、根本が少し違う内弁慶だ。


 ほれ、何食いたい?

 言ってみ、頼んでやっからさ。


「しゃ、しゃけ…」


 あいあい、鮭ね。

 お前、さけじゃなくてしゃけって言う派か。可愛いかよ。


「さーせん!鮭の塩焼き二切れ!あとほうれん草のバター炒めとジンジャーエールも一つ!」


「あいよ」


 近くの店員がメモを取って、厨房に張り付けに行く。

 声を大にした俺を見て、ドラ子はパクパクと水を欲しがる魚の様に口を開閉している。どうした?一応ジンジャーエール頼んでやったが…もしかして苦手だったか?昔好きって言ってなかったか?好み変わっちまったか?だったら悪いことしちまったな。


 俺が注文をキャンセルしようと店員を再び呼ぼうとする。


 しかし、ドラ子がそれを止めた。


「い!いや!いい!好き!好きだから!」


 あ、そうなの。

 んじゃまぁ、いいか。


「よく覚えてたな、って驚い、たんだ…」


 途切れ途切れで言葉を紡ぐドラ子。

 俺を散々罵った口はどこへやら。普通の女の子になってやがる。


 そりゃ覚えてるだろ。

 記憶力舐めんなよ。脳みその皺幾つあると思ってんだ。お前と出会った時の事から今の今までしっかり覚えてるぞ。他の奴らだってな。


 俺は鼻を高くしてそう言った。

 ドラ子はそんな俺を見て、感嘆の声を上げる。ちょろい…ちょろすぎやしないか…?


 俺は、あまりのチョロイン化に些かの動揺を覚える。

 世間知らずとまではいかないが、中身が別人だと言われても信じるレベルでドラ子は大人しくなっている。


 め、女神の奴…一体どれだけ依存させてたんだよ…

 俺は、良心の中でも一、二を争う温厚さを持つ女神に恐怖を覚えた。


 それと同時に、俺は内弁慶気質なドラ子に母性を感じとる。

 くっ!収まれ…俺のマザーエモーション…!


 内なる母性は爆発しそうになる一歩手前で抑え込まれる。

 苦しそうな俺を見て、ドラ子が心配そうにこちらを見る。こ、こいつ…顔だけはやっぱ可愛い…!クソっ、スーパーゲームが…!顔面偏差値をもっと下げろ…純情な少年心を持つ俺には、心臓に悪い時があるぞ…!


 そこから暫くして、続々と頼んでいた食べ物が店員よって運ばれてくる。


 俺は、ドラ子をちらちらと見て、少し控えめに言った。


「食うか」


 そんな俺の言葉に、ドラ子も恥ずかしそうに答えた。


「…うん」




 初々しいカップルか何かですか?


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当作品はゴミ共の命によってモチベーションが賄われています。
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