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ゴミ溜めVRMMO記録  作者: どうしようもない
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記録.39『エビふりゃーと言う男』

 

「いい加減次のステップへ行かせろ」


 ラミミは遺跡帰りの俺に、そう言った。

 俺についてきた抹茶が、コタツで眠るボロに抱き着く。そして、そのまま寝室に運んでいった。アイツ…いつの間に俺の家の間取りを覚えやがった…?一度も招いた覚えはねぇぞ…。


 俺が抹茶に戦々恐々としている中、ラミミは小さな背丈で俺に迫る。


 俺は両手を上げて、赤い髪を揺らすラミミへと言った。


 分かった分かった。

 連れてってやるよ。アイツも強くなった自分をもっと知りたい筈だ。丁度良いだろ。


「強く…?遺跡に入って一時間で帰ってきた連中が何を言っている?」


 あー、あー、そうでしたねぇ。

 あっちは時間が圧縮されているんでしたねー。すいませんね、気ぃ使えなくて!ええ!


 俺は亜空間からコートと手袋を取り出し、ラミミへと投げた。


 勘違いするなよ。

 それは元々、ララにあげる予定だったやつだ。あげようとした日におニューの防寒具を自慢されちまって、渡すに渡せなかったんだ。

 だから、決しててめぇの為じゃねぇ。良かったな、ラミミ。お前が幼女体形でよぉ!


「な、なんだこいつは…」


 もこもことしたライトブラウンのコートと手袋を受け取ったラミミは、俺を心底気持ち悪そうな目で見つめた。んだよその目は。ああ?地味に高いんだぞ。感謝しろや。コートについてるもこもこ部分、レア素材なんだぞ。おい。


 俺は小っちゃいラミミの頭に、おでこをぶっつけてガンつく。

 幼女染みた小さい身長のせいで、俺はお辞儀しているみたいになる。


 俺の顔を、至近距離で見たラミミは少し戸惑いながら、礼を述べた。


「…ありがとう」


 お礼出来て偉いでちゅねぇぇぇぇぇえええええ!!!!!

 俺はガンつけたまま、奴の顔の前でそう言った。


 唾がびたびたについたラミミは俺の頭を持って、地面へと思いきり叩き付けた―――。



 ――――。

 家全体がとんでもない衝撃によって、勢い良く揺れる。




 お、れい……でき、て…え、ら…い…でちゅ……ね…。


 ◇■◇


「よぉ」


 俺はさっきぶりのエビふりゃーに挨拶をする。

 奴は珍しく自分のギルドハウスでペンを握っていた。なんで、そんなに手ぇ絆創膏ついてんの?


 俺は、何故か机の上に置いてある裁縫道具を気にしながら聞いた。


 どうしたよ?

 てめぇが戦ってないなんて珍しいじゃねぇか。やっぱ遺跡行ったから疲れたか?


 俺が茶化すようにそう言うと、エビふりゃーはペンをくるくると回しながら俺の方を向いて言う。


「遺跡でのことを記録に残しといてるんだ。文ちゃんと明ちゃんから詳しく聞いた。お前も聞いただろ?遺跡での記憶は一日経つと消える」


 ああ、そうだな。

 俺達はてっきり《文明知覚》を持っていないと、記憶の保持は出来ないと思っていたが、どうやら遺跡から死なずに脱出する事でも記憶の保持は可能らしいな。

 んじゃ、《文明知覚》持ちの他の連中も記録を残しといてあるのか?


 そう聞くと、エビふりゃーは暗い顔をした。


「遺跡で死んだ奴はやっぱり記憶がなかった。んで、どうやら俺達が遺跡に行っていた間にだるい事が起きていたらしい」


 ああ?だるいことぉ?

 遺跡に行ってたつってもこっちじゃ一時間しか経ってないらしいぞ。どんなことが起きてたっていうんだよ。


「遺跡で死んだ《文明知覚》持ちが、リスキルされた」


 ああ?リスキルぅ?

 わざわざ牢屋に行ってまでやる事か?んで、そいつらには会いに行ったのか?


「いや、既に釈放されていた。賄賂でもしたんだろう」


 随分と用意周到じゃねぇか。

 でも、一体全体なんでリスキルなんてしやがったんだ?殺すことに何の意味がある?アイテムやら金が欲しかったか?んなら、ルーキーで事足りるだろ。


「…記憶が、無くなっていた」


 …あ?


「《文明知覚》持ちのうちの遺跡帰りプレイヤーが叫びながら死んだらしい。『記憶は無くなっていない、エビふりゃーに伝えろ』とな。そして、死んだ。記憶は、無くなっていた…」


 ……なるほど。

 新情報追加だな。


 俺とエビふりゃーは、いつになく真剣に語りあう。


 喋り続ける俺の服が、突然強く引っ張られる。

 俺が後ろを向くと、そこには顔を赤くして俺を睨み付けるラミミの姿があった。


 やべ、そういや俺こいつの為にエビふりゃーに会いに来たんじゃん。

 俺は当初の目的を思い出す。そして、あたかも最初からそのつもりでしたよ、という体を装ってこれ以上ラミミを刺激しない様にした。


「あ、そうそう。エビふりゃー、息抜きにこいつと戦ってやってくれねぇか?」


 そう言って、俺は後ろに隠れたまんまのラミミを指さす。

 ラミミは、もこもこのコートを深く着て、自分の顔が見れない様にしている。


 ちょっ…この子は…!

 それ辞めなさい!なんで今更緊張してんの!お前から言ったんでしょうが!戦いたいって!


 俺はコートの中に隠れるラミミを必死に出そうとする。

 しかし、突然発揮した人見知りは治らない。こ、こいつ…!最近ずっと家にいたせいで内弁慶になってやがる…!ふ、ふざけやがって…!面倒臭い性格盛るんじゃねぇぞワレェ!!


 俺とラミミが戦闘していると、後ろのエビふりゃーが笑いながら言うのだった。


「いいぞ、戦おう」


 エビふりゃーは机の横に立て掛けてあった剣を握る。

 そして、掛けてあった真っ黒なコートを着て、外へと歩いていくのだった。



 見ろ…あれがお前が超えようとしている男の背中だ…。


「………んー」


 歩いていく男の背中には”滅”の文字が確かに刺繍されていた。




 ユニークスキル(隙の糸)に引っ張られ過ぎた者の末路。


 ◇■◇


 街中で戦闘行為を行えば、牢屋行きになる。

 その為、プレイヤー同士が戦う時は街の外で行うのが普通だ。


 ラミミは巨槌を取り出し、ぶんぶんと振るう。

 エビふりゃーはそんなラミミを見て、「すごく…大きいですね…」と若干引いていた。そういえば、こいつはララの大剣を見た時もそんな反応をしていた。


 まぁ、廃人からすりゃ巨大な武器っつーのは非効率の塊みたいなもんだしな。上手に扱えれば、ララみたいに化けるが、普通はそう簡単に扱えるもんじゃねぇ。それを知っているからこそ、エビふりゃーはビビる。


 お互いの準備が整い、俺が合図をした瞬間に、仕合は始まる。


 ―――。

 静寂の時間が流れる。

 俺はいっそ何も言わないで過ぎる時間を待とうかと考えたが、後が怖いので素直に合図をする。


「はじめ~」


 緩い声と共にラミミが雪を蹴る。

 巨槌を思い切り振るい、エビふりゃーにぶち当てた。


 巨大な武器は小細工が出来ない。

 それは巨大故の”振り回される”という切っても切り離せないものがあるからだ。


 しかし、それと同時に相手も小細工が出来ない。

 相手するものがデカすぎるからだ。


 巨大な武器というのはそれだけで強力だ。

 さっきも言ったが…なにせ、デカい。PSの差が出にくい。だから、エビふりゃーはビビる。圧倒的なPSを持つ奴にとってPSで差が出にくいというのは厄介だからだ。


 しかし、どこまでもエビふりゃーという男は怪物だった。

 奴はラミミの巨槌をたった一本の剣で受け流した。衝撃を受けながらも、それを圧倒的な体幹とPSで上手に流すのだ。


 一度でも避ければエビふりゃーは攻撃を始める。そして、そこから敵は何も出来なくなるというのがお決まりだ。そこにどう対抗するのかが、ラミミの肝となる。


 エビふりゃーは、その流れのまま剣を水の如く流し、ラミミの首筋を狙う。


 しかし、ラミミは持ち前の小柄な体躯を活かす。

 巨槌を持ち上げる時間はない。

 ならば、とラミミは迫りくる刃を避ける様に柄を持った手で思い切り空中に飛び上る。小柄で筋力だけは馬鹿みたいにある奴だからこそできる芸当だ。


 しかし、エビふりゃーはそれにすら対応する。

 飛び上ったラミミを最初から狙っていたかのように剣筋はぐにゃりと曲がり、ラミミを捉えた。


 流石のラミミも空中にいたならば、何も出来ない。咄嗟に腕と足を前に出し、致命傷を躱しはするものの、大きくダメージを喰らう。


 エビふりゃーはそこから攻めるかと思いきや、一歩二歩とバックステップを踏み、最初の位置へと戻っていった。


 いったいなぜ…?

 俺が疑問に思っていると、エビふりゃーは静かに言った。


「次は本気だ」


 こ、この男…!

 舐めプしてやがった!剣についた血を振って払い、ラミミを見据えるエビふりゃー。


 ラミミはそんな挑発染みた言動に少しも動揺せずに再び巨槌の柄を握った。

 そして、お互いが構える―――。




 一秒、五秒、十秒、三十秒…。

 一分が過ぎた辺りで俺が口を挟もうとした。その時―――、



「しぃ―――ッッ!!」


 エビふりゃーの口から声が漏れる。

 俺がラミミを見た時、もうそこに見慣れたラミミはいなかった。



「どうだった?勉強になったか?」


 エビふりゃーは剣を振る。そして、ニカッと俺の方を向いて笑った。

 笑顔を見せるエビふりゃーの後ろには、見るも無残な肉片になったラミミだったものが転がっていた……。


 ◇■◇


「え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛」


 お~、よちよち…

 怖かったねぇ…辛かったねぇ…痛かったねぇ…嫌だったねぇ…

 俺はありとあらゆる言葉を投げかけて、優しく抱擁をする。胸が熱い。様々な液体がべっとりと服に付いた感覚がする。


 しかし、流石の俺もここで怒るほど鬼にはなれなかった。



 大きな声で赤い髪を揺らしながら泣く幼女。

 リスポーンした教会で泣き喚き続けるラミミを、俺は優しく撫でた。


 大丈夫。

 あんたは強いよぉ。あんな奴相手にしちゃいけなかったんよぉ。人が人ならざるものを倒すには相応の代償がいる。無策で倒せるほど簡単じゃあ無かったんだねぇ。


 言い聞かせるように言う。


「ひぐっ…えぐっ…」


 幼女が泣く姿は俺の心を締め付ける。

 いや、別に誰が泣いてても心締め付けるけどね。幼女が泣いてると、より一層締め付けるよねってだけだから。ロリコンとか言うのやめてもらっていいすか?


 俺は周りの視線を気にしながら、赤い髪を梳かすように撫でた。

 ここは、リスポーン地点だ。そこで泣いてる奴がいりゃあ、気になるし、からかいたくなる。


 しかし、そんな気持ちで近付いてきた奴を俺は射殺す勢いで睨み付けた。


 おんどりゃ、殺したろかい。ああん?てめぇもう一歩こっから近づいてみせぃ。おめぇの首晒しもんにして街に置いといちゃるからな。ああ?分かったらとっとと去らんかいゴラァ。


「ひぐっ…う、ええええ!」


 あー、よちよち。

 ラミミちゃんは凄いよぉ!

 ラミミちゃんは可愛いよぉ!だいじょーぶ!悪い奴はぜーんぶママがやっつけてあげるからねぇ……そうだ!歌!歌うたってあげようね!もうすぐクリスマスだから、歌もクリスマス仕様にしようねぇ!


 それ!じんっぐるべーるじんっぐるべーるすっずがぁなるぅ~、森に林に―――





 幼女をあやす一般不審者男性の図。

遺跡の外での記憶のルール

・《文明知覚》持ち、又は遺跡からの脱出により、一日記憶の保持が可能。一日経過後は緩やかに記憶が消える

・《文明知覚》持ちが死んだ場合も、記憶は保持される。しかし、遺跡での記憶を保持した状態で死んだ場合、記憶は消失する

・記憶があるうちに記録に残すことは可能

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当作品はゴミ共の命によってモチベーションが賄われています。
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