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ゴミ溜めVRMMO記録  作者: どうしようもない
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記録.2『プライド革命』

 

 〔Congratulations!〕

 〔《ナイフ》Lv.2→Lv.4〕

 〔《疾風》Lv.2→Lv.3〕

 〔《鋭い嗅覚》Lv.1→Lv.2〕

 〔《気配察知》Lv.1→Lv.2〕

 〔魔物「モナモナ」から《水耐性》を獲得〕

 〔魔物「ブブス」から《敵対知覚》を獲得〕 

 〔《敵対知覚》Lv.1→Lv.2〕

 〔魔物「ヘルパー」から《自然治癒促進》を獲得〕

 〔プレイヤー「すねっけ」から《遠目》を獲得〕

 〔《遠目》Lv.1→Lv.2〕

 〔魔物「這いずり蛙」から《隠密》を獲得〕 

 〔《隠密》Lv.1→Lv.2〕



『ルート』Lv.1

 〔Set(セット)Skill(スキル)

 《ナイフ》Lv.4

 《疾風》Lv.3

 《落下の心得》Lv.2

 《鋭い嗅覚》Lv.2

 《気配察知》Lv.2

 《敵対知覚》Lv.2

 《遠目》Lv.2

 《隠密》Lv.2

 《自然治癒促進》Lv.1

 《水耐性》Lv.1


 〔storage(ストレージ)Skill(スキル)



「こんなもんか」


 ナイフの血を地面へと飛ばしてそう言った。

 かなりの数、魔物もプレイヤーも狩った。俺は一応はβプレイヤーだ。そこらのルーキーに負ける程落ちちゃいない。

 ただ最も効率が良く、しかも格上に勝てる可能性がある初期ビルドがナイフ疾風降下だっただけであとはそこら辺の連中を狩れば欲しいスキルは補える。


 いいゲームじゃないか。

 本当にゴミの掃き溜めみたいなゲームだ。


 さて、粗方アイテムも集まったし、スキルも集まった。このゲームはPvP、PKを推奨しているきらいがある。だからと言って、街にプレイヤーキラーが入れないなんてことはない。さっさと安全な街に入って装備を整えたいところだ。


 Lvが上がり、効果が300%から306%になった《疾風》を発動して、街への移動を始める。ルーキー共が蜘蛛の子を散らすように俺から離れていく中で、たった一人だけ俺の前に立ち塞がる奴がいる。それは―――、


「遊ぼうよー、ダストくぅん…!」


「プロペラ野郎…」


 俺と同じβ組の正式プレイヤー名『空の人』だった。

 奴はうざい。ただただうざい。

 あまりのうざさにβ連中のほとんどから相手にされない可哀そうな奴だ。当時の俺はそれを知らずに、こいつに絡んじまった。そのせいでこうして懐かれたのだ。しかし、こんな奴にかまっているほど俺は暇じゃねぇ。


「どけや、プロペラ」


「空の人って呼んでくれよぉ、ダストくん」


 俺とプロペラの視線が絡み、一瞬ばちりと火花が散る。

 俺がナイフを持ち、プロペラが竹トンボを握る。


 プロペラの両手が原始的な炎を起こすかのごとき動作で超速に動く。その瞬間、その手から竹トンボが中空へと飛び出す。


「わーい」


 プロペラはその竹とんぼを追いかけ、そのまま俺の横を通り抜けていった。無邪気なあの子を俺は止める事など出来ない……


 俺はその後何事もなく、街へと到着した。


 このゲームの運営は気が利いていないので、街に名前なんてものはない。

 その為、街が見つかる度にプレイヤーが名前を勝手につけるのだ。この街はβ時代に既に発見されており、名前のみは製品版に引き継がれたため、既に命名権は誰の手にもない。


 そして、この街の名前は「サイショ」。

 この名前を付けたプレイヤーは正直気が狂っていると思うし、結局受け入れてしまった俺たちも俺たちだった。


 ランダムスポーンで街を引いたプレイヤーが多いのか、それともスポーンしてすぐに街を目指したのかは分からないが、予想以上のプレイヤーの多さに俺はドン引きした。


 しかし、ポーションやら武器やら防具などの必要なものを買い揃える必要がある。

 俺はごみごみとした露店通りを物色しながら、練り歩き始めた…。


 ◇■◇


 ポーションやら、食料は値切りに値切って確保した。PKでぼろ儲けした金はまだ余っている。そうなりゃあとは防具と武器に突っ込むだけだ。


 幸いにも、俺にはβ時代の伝がある。

 β時代と場所が変わっていなければ奴はそこにいるはずだ。目的の露店へと俺は向かった。





「よぉ、元気ぃ?」


 薄暗い路地裏、別名〔闇市〕。

 そこに一人の幼女が体育座りで座り込んでいる。

 その幼女の周りにはこれでもかというほどの武器が乱雑に置かれており、一本取ってもばれないんじゃね?と考えてしまうほどに不用心だった。


「あ、るーと。またひいきにしてくれるのか?さんきゅーな」


 幼女だからか呂律がうまく回らないようで、舌足らずな会話になる。

 しかしこの幼女、こと戦闘に関してはβ組でも十本の指に入るレベルのキチガイバトルジャンキーだ。下手にフレンドにでもなってみりゃ、バトルジャンキー直伝の戦闘知識延々お披露目パーティーにご招待。だからこそ、俺はこいつに名前を聞かない。こいつに名乗られた日には最後、凄惨な最期しか待っていないのだから…。


 その為、一歩引いた関係が最も良いのだ。


「ナイフある?いいやつ。予算こんくらいね、防具もついでにあったら適当に」


 俺はゾロみたく良い武器を手にとってもそれが良い武器とは理解できないので、結局他人任せの武器チョイスになる。

 この幼女は昔、武器を見れば、声が聞こえるみたいな主人公染みたやべーことを言っていたが、そりゃもうスキルの域だ。一個人のプレイヤーが持ってていい力じゃねえ。


 ガサゴソとパンツ丸出しで武器を漁る幼女を前にしばらく待つと、普通っぽいナイフを持った幼女がトトロのかんたみたいな感じでナイフを渡してきた。


 俺は気圧されながらそれを受け取り、その性能を確かめる。



≪血のナイフ≫

 幼女の血を吸ったナイフ。

 このナイフを使い、敵を倒すと、その経験がこのナイフを打った者にも入る。

 敵の血を吸い、己の治癒を促す。



 色々と言いたいことを抑えた。

 前半部はふざけたことばかりだが、ゲーム序盤も序盤のくせに敵を斬れば、こっちが回復する上位武器みたいな効果が付随されている。


 ちらと幼女を見ると、ドヤ顔が見て伺えた。

 仕方ないので金を払うことにしたが、なんと持ち金全部持っていかれた。防具を買う金すら残っちゃいない。


 流石の俺もこれには憤慨。

 指をさし、怒鳴り散らかそうとすると、


「ご、ごめんなさい……なぐ、なぐらないで…いたくしないで…し、しっぱいしないから……ご、ごめんなさい…」


 闇市にいる連中が目を丸くしてこちらを見てくる。

 そりゃそうだ。こいつはゲーム販売初日からβ組っつーアドバンテージを最大限生かして、闇市の頭を張っているレベルの幼女だ。


 それを泣かせたとなったら事件も事件だ。

 俺はすぐさまフォローに入る。


「あー。よちよち、ごめんねぇ。怖かったねぇ。もうしないからねぇ。飴ちゃん食べる?ほらいちごあじぃ~!」


 矜持など遥か彼方に捨てたのだ。



 プライドなきゴミ、爆誕…!


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