記録.101『掃き溜めはざーど』
「ヒーロー見参!」
〔サイショ〕の街のPT斡旋所でそんな事を叫ぶ痛い奴を尻目に見ながら、俺はこちらをビクビクと見てくるルーキー共にニコニコと笑顔を張り付けて挨拶をした。
ハァイ、コンニチハー!
壊れた人形みたいな動きで、軽快な挨拶を披露した俺をルーキー共は見てはいけないものを見た様な顔をしながら怯える様に後退っていった。
……フン。
俺はそんな連中を他所に、きょろきょろと周囲を見渡す。
―――…ルーキー、ルーキー、ルーキー……。
いつの間にか〔サイショ〕の街に廃人共は寄り付かなくなった。いや、〔サイショ〕の街に居座る必要がなくなったのだ。
今までは〔サイショ〕の街をメイン拠点とし、転移門で〔シンリン〕や〔コウザン〕、〔ミカイ〕へと移動するのが最も効率が良かった。
しかし、時代は変わる…。
牛歩ではあるが新世界の攻略が進みつつある今、仮拠点を無理矢理に設立しながら、新世界の街をどうにか解放した方がいいと、ほとんどの廃人が気付いたのだ。
エビふりゃーは、〔サイショ〕にある【終着駅】のギルドハウスを売る事こそしなかった。奴にとってβ時代と同じあのギルドハウスの場所とギルド本体だけがターミナルの存在を証明するものだからな。
攻略を進める奴は新世界へ。
鍛冶をする奴は〔コウザン〕へ。
料理をする奴は〔シンリン〕へ。
PSを磨きたい奴は〔ムホウ〕へ。
珍しい物が欲しい奴は〔ミカイ〕へ。
そして、ゲームを始めて間もない奴は〔サイショ〕へ。
海外勢がずーっと…本当にずーっと前に確立したであろう基盤を日本のゴミはやっとこさ整えた。
まぁ、だからと言って何が変わるというわけではない。少なくとも、廃人共は…。
「あ、あれ…ごみ溜めさんでしょ…?なんでここに…?」
「お、おいっ…!もっと小さい声で話せ…!あの人、妙なとこで勘が良いんだ…!」
〔サイショ〕の街は、実質的にルーキー共専用の街となった。
廃人のいない平和で穏やかな本来の姿……。そこにゴミ共のせいで勝手に悪名轟いちゃった系プレイヤーのルート君が現れりゃ、当然奴らは警戒する。
だが、そんな事御構い無しに俺はずかずかとアウェー感漂う〔サイショ〕の街を突き進んだ。
そらそうさ。
なーんで俺がルーキー共に気を使わにゃならねぇ?そりゃ雑魚がすることだ。確かに俺のレベルは低い。それこそ、ルーキー共と肩を並べてしまうくらいには低いだろうよ。だがな、経験と立ち回りで実力は幾らでも突き放せる。
俺はそこら中にいるルーキー共の視線を全身で感じながら、目的の場所を目指した…。
◇■◇
おーい、おはぎーん!
俺は甲高い声と共に手をぶんぶんと振って、ルーキーと何か話しているおはぎへと走り寄った。
おはぎは〔サイショ〕の街で和菓子屋を営む可愛い可愛い初日勢のプレイヤーだ。廃人じゃないが、奴の菓子作りの腕はパックマンにすら並ぶだろう。
笑顔で近づいていく俺に気付いたのか、おはぎは一瞬はっとしたような表情をした後、直ぐに笑顔を見せて俺に手を振り返そうとした。
しかし、おはぎの直ぐ傍にいたルーキーがおはぎに何かを言った。すると、おはぎは俺に振り返そうとした手を下げてしまった。
しかし、そんなことに対してそれほど興味はない。
おはぎは良い子だからね!ゴミばっかのこの世界で手放しで信用出来るのは、おはぎとピュヒュイ君と杏くらいだ。
よぉ、おはぎん!元気だったー?
そんな事を言いながら、俺は一歩また一歩と近づいていく。しかし……、
「…ぷ、ぷいっ」
――謎の効果音と共に、おはぎは俺からそっぽを向いて顔を合わせようとしなかった…。
……お、おい…。おはぎ…?ど、どうしたんだよ…?反抗期か?思春期か?…まぁ、そういう時期は誰にでもあるよな…。あぁ、俺は理解ってる。
今までにないおはぎの行動パターンに動揺こそしたが、俺は配慮する男…!
そのくらいの事はわきまえているさ。時期が悪かったかな?数日たったらまた来るとするさ…。なぁ、それでいいよな…?
俺は、僅かながらに震える唇でおはぎへと言う。
そっぽを向いたおはぎを、俺は滲んでいく視界の中でずっと見つめていた。
指先が熱い。足先が熱い。侵食する様に身体のあちこちが熱を伴い、それと同時に瞳も酷い熱を患っていく。
…心のどこかで、おかしいと気付いていた。
おはぎは、本当にいい子なんだ。例え思春期や反抗期と言えども、そっぽを向くことなんてありえない。口は交わさずとも、目だけは…その透き通った瞳だけはいつもこちらを見てくれていた。
…ありえないんだ。
おはぎがそっぽを向いて、俺と目を合わせようとしないなんて。
「ヴェ…」
熱い熱い熱い。
身体が熱い。脳味噌が熱い。心臓が熱い。ありとあらゆるすべてが熱い。
「…ヴェ」
滲む視界の中、ちらりとこちらを見るおはぎを認識する。
四肢から燃え上がった炎が、弱い俺を食い尽くそうと広がっていく。
…燃えて、燃えて、燃えて―――。
「ヴェァァァァァアアア――――!!!!!」
そんな叫び声と共に、俺は炎と共に消失した…。
人体発火現象?そんなの日常茶飯事ですよ。
◇■◇
ただ、”〔サイショ〕の街以外にも店を持たないか?”という誘いだけの筈だった。
あの子は、始まりの街にずっと置いておくのはあまりにも惜しい存在だ。ゴミばかりのこの世界で、余りにも貴重な純粋さを伴った存在だ。
だが、戦いの火蓋は切って落とされた。
…あの優しい子に悪い入れ知恵をした誰かがいる。おはぎに何かを言っていたあのルーキーが最有力候補だ。廃人共という線は薄い。奴らは新世界攻略に躍起になっている。
「屠殺してやるさ…!それがお前らの望みというならばなァ……!」
ケキャキャキャ……!
βプレイヤーを舐めるなよ…家畜共が…!改めて思い知らせてやるよ…てめぇらが食物連鎖のピラミッドにすら入れていないってことをなぁ…!
〔ルート:ドクター、ちょっと廃人ネットワーク使うから手伝えや〕
――発動…!β時代の負の遺産…!廃人NetWork…!
◇■◇
「いやー、正直助かりましたよ。新世界攻略の強行軍には到底ついていけないのに、知識が必要と無理矢理に引っ張ってかれていましたからね」
深い溜息と共にドクターは空中で指をすいすいと動かす。
あぁ、そうかい。
そりゃ良かった。俺の呼び出しのお陰で抜け出せたって事なら、その分働いてくれよ。こっちだって安くねぇ情報をてめぇにくれてやってんだ。
「えぇ、えぇ、分かってますルート氏。貴方がいなければ、この情報を得られるのはどれだけ先になっていたかなど考えたくもありません」
ドクターはそう言って、俺に笑いかけると亜空間から青白い光を放つ長方形の板を取り出した。それは不気味に光り輝き、明らかに普通の代物じゃないことを俺の脳裏に訴えかけていた。
おい、ドクター…そいつは…。
俺がその板を指差すと、ドクターは「あぁ」と言いながら――、
「これは転写板というオーパーツです。ゲーム内で自分の見ているサイトを他人と共有し、操作権の分配などを可能にする代物です」
ぺらぺらと包み隠さずに話すドクター。
しかし、何も不思議ではない。俺の渡した情報はそれほどまでに大きい。奴もそれを理解しているからこそ、文句も言わずに俺に付き従う。そして……、
「はい、ルート氏。ネットワーク開いたので、ここで募集をかけてください」
ドクターは落とさないように気を付けながら、転写板を俺に渡す。
俺はそれを受け取り、青白く輝くそれを見るとそこには久方振りに見る廃人ネットワークの姿があった。
「私は情報を二つ貰いましたが、報酬に出す情報は一つで十分でしょう。あの人の存在だけで誰も彼もが食いつく筈ですよ」
…あぁ、分かってる。
勿論、終着駅の連中…特にエビふりゃーには見えない様に細工をさせては貰うがな。
「良い判断です」
ポチポチと転写板を弄る。
そんな俺の横で、ドクターがペストマスクの下からジュースをストローで吸い込んでいた。
―――廃人ネットワーク。
色々と用途はあったが、今となってはその殆どが形骸化。
生き残っているシステムは、プレイヤー間による”トレードシステム”だけだ。
言っちまえば、
求:???
出:???
ってやつだ。
「俺はこれを出すから、誰かこれをくれよ」っていう古から続けられてきた古典的かつ合理的なトレード手段。
俺は廃人共の戦力を求めた。
そして、俺が差し出すものはただ一つ…―――”ターミナルの情報”。
求心の象徴、我らがリーダー、今は亡き者とばかり思われているターミナルが製品版に存在するその証拠と根拠。それが俺の出すものだ。
奴は何時まで経っても消えぬ象徴だ。それを求める奴はごまんといる。だから―――、
「―――話を、聞かせてくれまいか」
ガシャン、ガシャン…―――。
そんな重苦しい鎧の音と共に現れた大柄な男を、俺もドクターも誰も責めやしないのだ。
「よぉ、随分と久しぶりじゃねぇか…―――”鉱石卿”」
おにぎりを勢いよく口に放り込んで、俺は目の前の奴へとそう言うのだった……。
あの…、頬にご飯粒ついてますよ…。
◇■◇
―――鉱石卿。
βの歪んだ傑物でありながら、ララ専用の鉱石掘りにして、己もまた生粋の鉱石愛好家。
巨大な体躯と、肌をほんの少しも見せない強固な黒い鎧が奴のトレードマークだった。それは今でも変わらないようで、相も変わらず暑苦しい格好をしてやがる。
ドクターと鉱石卿の覆面ズが俺の隣で座り込んで、ちゅーちゅーとストローでジュースを口に運んでいる。俺はそんな連中を視界の端っこに入れながら、三個目のおにぎりをパクついた。
「あ、ダストっちずるい~!私にもちょうだ~い!」
そんな俺の横で、いつの間にか現れた狐面がおにぎりを寄こせと駄々をこねる。
俺はそんな奴の肩を笑顔で叩く。
うんうん、そっかそっか。このおにぎりが欲しいか。
でもね狐面、頼むにはそれ相応の頼み方ってやつがあるんだ。子供みたいに駄々をこねるだけでどうにかなるフェーズはとっくに終わってんだ。
ゲームソフトが欲しいからって親に駄々をこねて買ってもらった事があるか?そりゃないぜ。コネ得っつー意識を子供に植え付けさせちゃいけねぇからこそ、親は頑なに買ってやらねぇもんさ。なぁ、分かるか?分かるだろう?
話しの途中で俺の手からおにぎりを奪い取った狐面が、頬一杯にお米を詰めてうんうんと頷いている。
…はんっ、まぁ良いさ。
右耳から左耳へと俺の言葉が流れていくこいつに、これ以上話したところで始まらねぇ。
俺はおにぎりを頬張る狐面に冷たい視線を送りながら、こちらに向かってくる一人のプレイヤーを視界に入れた。
……俺が廃人ネットワークのトレードにて欲した要項は確かに”戦力”だ。だが、勿論条件は付けさせてもらった。なにせターミナルの情報だ。それ相応の条件を付けても文句はないだろう。俺は計二つの条件を提示した。片方に合致していればトレードは成立だ。一つは”二つ名持ち”である事…そして、もう一つは―――
「本当にその情報は本物なんだろうな…」
――”〈従魔士〉である事”。
大きな狼と共に現れた廃人テイマー君を見て、俺は立ち上がる。
ドクターに鉱石卿、狐面にテイマー…。
狐面こそ消えてほしい要素ではあるが、粗方必要な面子は揃った。
よーし、それじゃあ……
「―――ルーキー狩りじゃー!!!!」
俺の言葉に、ドクターと狐面が沸き上がり、鉱石卿とテイマーは静かに肩を竦ませるのだった…。
ルーキー君達の血は何色かな!?
◇■◇
わーい、混沌だぁ。
血飛沫が舞い、悲鳴が至る場所から聞こえてくる。
悲鳴が上がる方を見れば大きな狼が、歯で牙で体躯であらゆる武器を活用してルーキー達を追い込んでいた。
そして、また悲鳴が上がる方を見れば赤黒い影の怪物達がルーキーを追い立てていた。
俺はそいつらから逃げる様に走るルーキー共の波をさくようにスキップで逆行していた。恐怖に染まったルーキーの慌てようはやはり面白い。恐怖から脇目もふらずに街の出口と転移門へと殺到するのだ。別に戦闘状態っつー訳じゃないからログアウトすりゃいいだろうに殆どの連中はそれに気付けない……あぁ、いや、まぁここに自分の家を持ってる奴なら家財を守ろうと動く奴もいるから、そういう奴は分かっていてもログアウトできないんだろう。
そう、例えば……。
「お前とか、な。―――おはぎちゃんよぉ」
「……ご、ごみ溜めさん…」
あわあわと必死に杖の様なものを振るっている素朴な少女…おはぎへと俺はそう言うのだった。
◇■◇
従魔と影でルーキー共はみーんな逃げた。
まぁ、結局逃げた先には特殊な霧を撒くドクターにピッケルぶんぶん鉱石卿、暴れたい盛りの狐面と本体は雑魚のテイマーがいる。結局ルーキー諸君は無力化され、惨殺される運命にあんだよ。
「お、おはぎさんっ…!早く逃げ、にげなきゃ…!この人の話を聞いちゃいけない…!」
揺れる瞳で俺を見つめるおはぎの肩に手を置き、必死に揺すっているルーキーが焦った様に捲し立てる。
おいおい、酷い言い草じゃねぇか。
話聞いてくれなきゃ泣いちゃうぜ?ただでさえ、掲示板で俺は口から生まれた男だのなんだの言われてんだ。そんなやつから長所とってどうするよ。
「あ、貴方は…ッ…!」
「わ、私は大丈夫…大丈夫ですから…」
ルーキーが何かを言おうとした瞬間、おはぎが手でそれを収める様にジェスチャーをしながら、割り込んでくる。
そして、くるりとおはぎはこちらを向き、てくてくと歩み寄ってくる。
「良いですか?ハウモさん。よく聞いていてくださいね」
少し怒ったような口調で、おはぎは自分の瞳に俺の顔を映しながらそう言った。ハウモ、とは恐らく後ろにいるルーキーの名なのだろう。
俺はそんな事を考えながら、真剣な表情を浮かべるおはぎの顔を見ていた。俺だって空気は読める。おはぎが何かを必死にしようとしていることは分かるし、それを邪魔するほど無粋な事はしない。
ぎゅうと小さな拳が握られるのが視界の下の方に見えた。そして、
「ごみ溜めさんは、なんでこんなことをしたんですか?」
おはぎは意を決したように、俺にそう聞いた。
……あー、なんでそんな事を聞くかは分かんねぇけどよ…どうやら答えてほしいみたいだな。
…簡単に言っちまえばお前の為だぜ、おはぎ。
…まぁ、おはぎがてめぇらルーキーに何か悪い事を吹き込まれた可能性があるから、っていう枕詞が最初に入るけどな…。
俺は心の中でそう呟いた。だが、情報っつーのは何も一から十まで話す必要なんてどこにもありゃしねぇのさ…クケケ…。
「聞きましたか!ハウモさんっ!ほら、やっぱりごみ溜めさんは悪い人じゃないですよっ!」
俺の言葉を聞いたおはぎは、ぱぁっと嬉しそうな笑みと共に後ろにいるルーキーへとそう言った。しかし、それを聞いたハウモとかいうルーキーは顔を歪ませて、信じられないものを見るような目線をおはぎと俺に向けた。
「な、何を言っているんですか…。この人は〔サイショ〕にこんな化け物を放って、転移門や街の出口に廃人プレイヤーを配置して初心者を倒す奴ですよ…!」
フレンドメッセージでそういうことを聞いたのか、俺の言葉からそれを理解したのか。ルーキーは顔を青くしたまんま、俺とおはぎの顔を視線で行ったり来たりしている。
「ごみ溜めさんは、よくやり方を間違えちゃいますし…で、でも誰かの為にいつも必死ですよ!」
おはぎが右手の指と左手の指をくっつけ合いながら、嬉しそうにそう言った。
しかし、そんなおはぎとは裏腹にルーキーは身体全体を震わせながら、一歩二歩と後退っていく。
おはぎはそんなルーキーに小首を傾げながらも、再び俺の方を向くとぷりぷりと頬を膨らませた。
「ごみ溜めさんっ!誰かの為…わ、私の為…とかそういうので人様に迷惑をかけちゃ駄目なんですよ!」
SAN値と心の渇望が潤っていくのが分かる。
この子の純粋さが中毒症状となって俺を蝕んでいくのがよく分かる。
ぺろりんの優しさと、猫埜の陽キャ力と、杏の健気さと、ピュヒュイ君の膝小僧と、おはぎの純粋さが俺を動かすガソリンだ。
…うんうん。ごめんねぇ。
おじいちゃん、おはぎちゃんが大事すぎて、悪い人に捕まっちゃってるんじゃないかって不安になっちゃったの。もうしないよぉ、約束するからねぇ。
おはぎはうんうんと俺の言葉に頷いて、顔を若干赤らめながら嬉しそうにはにかんだ。
俺はそんな彼女の手を取って、
なぁ、おはぎん、俺はやり方を間違えちまった。
だからさ、死んじまったルーキー共に謝りに行こうと思うんだ。それを隣で見ていてくれないか?もうきっと、道を間違えないからさ。
輝く瞳と真剣な表情でそう言った俺を見て、おはぎは握られた手をぎゅっと握り返した。そして、笑顔を残した真剣な表情でこくりと頷くと、俺と一緒に教会がある方へと歩き出した。
…そういやさ、なんで最初「ぷいっ」とかいう謎の効果音出しながら俺のこと無視したん?
「あ、あれは…皆さんがごみ溜めさんとあんまり関わらない方がいいって言うから…表沙汰であんまり話しちゃ駄目かなと思って…」
あぁ、なるほど。
…にしてもおはぎんよぉ、流石にありゃ無理があるぜ。お陰で俺は天の光に焼き尽くされちまったじゃねぇか。
「廃人の皆さんも偶にいきなり燃えますけど、あれ一体何ですか?」
さぁな。
俺も他の廃人共も正直よく分かってねぇんだ。ゴミみたいな運営だからな。俺達に隠してある仕様っつーのは無限にあるらしいし、それの一つだろうよ。お前もいつかいきなり燃えちまうかもしれねーぞ。
「……く、狂ってる…」
俺とおはぎが話に花を咲かせている中、そんな酷く小さな声が背後から聞こえた。
俺は、おはぎに気付かれない様にちらりを後ろを向く。するとそこには尻餅をついて、真っ青な顔色で身体を震わせるルーキーの姿があった。
そして、そのルーキーの更に後ろには黒い鎧を纏ったピッケルを持つ男が―――、
「――…感性は人それぞれだ。君も、私も、彼女らも」
そんな酷く冷たい声と共に、ルーキーの頭にピッケルが振るわれた……――。
狂気は伝播する…!ひぇぇ…
〔廃人NetWork〕
β時代に構築された連絡網。別名、βNetWork。
製品版初期の頃まではトレードシステム以外も機能していたが、ルーキーが廃人抜きでボスを倒したこと(記録.15『ルーキー達の逆襲』)により、機能を停止。トレードシステムのみが生き残る事となった。
トレードシステムは、求める条件に合致した者にのみトレード内容を表示させるなどの詳細設定が可能であり、今回はその設定を使用した。トレードが完了したトレード内容は即座に消去される。




