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結果からしてみると、そもそもこの部屋清掃が必要なほど汚れていなかった。
一応確認はしておいたが、部屋の隅にはもはや不自然な教室と同じロッカーがあり、中には最新式の掃除道具が沢山入っていた。
そしてロッカーの横には全自動掃除機もちょこんと可愛らしく待機しており、定期的にこのロボットが掃除しているようだった。
そう、俺はは手持ち無沙汰になってしまった。
となるとやはり、気になるのはこの部屋。
正確にはこの部屋の持ち主であるが、薙払先生は生徒からは女王と呼ばれ、教師たちからは魔王と恐れられている。
仮にも外見だけは美しい女性だ。
有り体言えば、すごく気になる。
具体的に何が気になるかというといつも座っているであろう椅子やソファが特に……ではなく、先生はああ見えて私生活を全く表に出さない。
いつも、スーツを着てビシッとしているし、休みの日に何をしているかなんて誰も知らない。
というか学校の外で見た人なんて居ない。
いくら秘密主義者であっても、流石にあり得ないと言わざるを得ないほど、彼女はあのキャラクターを突き通しているのだ。
そして今、唯一と言っていいであろう彼女の私生活を目の当たりにしている。
気にならない訳がないのだ。
決して彼女のお尻とかが頭の中に浮かんでいるわけではない。断じてない。
「しっかし、本当お金持ちなんだなぁ。」
自分の家とは比べ物にならない家具たちを見てそう呟いてしまう。
落ち着いて部屋の中を見渡してみると、棚がいくつかあり、置物だったり、本だったり、中には食器やグラスが入っていた。
事務所ともリビングとも言える、なんともチグハグな部屋と化していた。
唯一資料室らしいところといえば、この内の本棚であろう。
まぁ、隣には鷹の置物があったり、様々な種類のグラスが入っていたりするが。
1番興味が湧いたものでもあった。
はっきり言ってあの先生は本なんて読まないと思っていた。いや、思わされていたのだろうか。
不思議なことにこれらの背表紙には何も書かれておらず、パッと見ただけでは何の本なのかわからないようになっていた。
その中の一冊を手にとって見たものの、それは英語で書かれていた。
英語は苦手では無いが嫌いなので、諦めて別の物を手にとってみたが、次はスペイン語で書かれていた。
スペイン語は英語よりも嫌いなのでまた、別の一冊をとって見たが、ミミズのような文字で書かれていた。
アラビア語?いや知らないけれども。
どうにか、先生の読んだであろう本を知りたい。
それが自分の使命であるかのように感じた僕は、意地になって本棚をしらみ潰しに漁っていった。
かろうじて判明したものは、おそらく聖書と有名作家の小説であった。
恐らくというのは、一つは十字架が描かれていたから判明したのと、もう一つはゲーテだとかいうのは何処かで聞いた事があったからか、作家名のところだけ読めた。
わかったのはそれだけだ、タイトルなんて読めていない。
案外、あの彼女は学があるのかもしれない。と一人驚きを胸に更なる物色を行おうと思っていたところだった。
がちゃ、と扉が開く音が聞こえた。
「あら?清掃を奴隷に命じた筈なのだけど、何勝手に部屋を漁っているのかしら泥棒さん?」
髪を手で払いながら、相変わらず不遜な態度で僕を罵倒しようとする先生であった。
「せ、先生?俺、あ、いや僕は泥棒じゃないですよ?」
「ならば何故、元より部屋が散らかっているのかしら?」
あ、そういえばムキになって全部一旦棚から降ろしたんだった。
っていうかちょっと不味いかもしれない。
少し怒ってない?いつもニヤニヤしながら罵倒して来る先生だが、今回は真顔なんだけど。ヤバくない?
「あの、一つだけ言ってもいいですか?」
「貴方に発言する権利があると思ってるの?ナメてるの?」
「スイマセン!」
「謝罪が一つなんて、やっぱりナメてる。そんな貴方の成績オール1。」
「そんなぁ!!!」
「もう決まったわ。」
淡々と告げ、人の皮を被った悪魔が微笑んだ。




