空白
空白という言葉がある。空白、ブランク、何もない事、何もない場所。
空が白いというわけではなく、例えば新聞折り込みのチラシの裏であったり、新調した新しいノートであったり、はたまた無気力に生きる人生であったり。
日常生活の様々な場面場所に空白が存在し、人類の歴史・文化を生きる上で空白とは必要不可欠だと言える。
そう考えると、解答欄に空白があることも決して悪い事では無い。
計算が出来なくとも、計算機を使えば生活には支障はないし、漢字や文法が分からなくとも、今は便利な機器が沢山ある。
18〜年になんとかの乱があっとしても、日本人らしい寛大な心と思い遣りで、過去の事は水に流そうではないか。
英語がいまいちなんともわからなくたって、やはり、私は日本人らしさを大切にしたいと思う。
つまり、筆記試験という1つの査定方法に縛られず、まずは私の人となりを見てほしい。
3年E組 鮎見 進
「あなたはこれを見てどう思うのかしら?」
運動部の叫ぶような掛け声やブラスバンドの意味の分からない一定のリズムで吹く音色なんかがごちゃ混ぜになって聞こえる放課後。夕陽の差す教室。
担当の先生と二人きり。
特に何も嬉しいシチュエーションではない。
これが隣の席の笛吹さんや、卒業した七瀬先輩なら俺の心臓は跳ね上がり半年くらいは有頂天になれた事だろう。
というか妄想してるだけで楽しい。どうしよう。
「無視するなんていい度胸ね、わかりました。もう一年やり直しがしたいのね。」
「い、いえ!違います!少し考え事をしていました!」
「考え事だなんてそれこそ許せないわ。あなたに考える脳なんてないのに。」
「……仰る通りです。」
「ならたし算ひき算からやり直して来なさいな。」
「そこまで能無しじゃねぇよ!」
「あら、日本語が理解できたの?えらいわね。」
「ふざけんな!バーカ!」
「なんて語彙に乏しいのかしら……私の教師としての実力の全てを否定された気分だわ」
「先生ってお冗談がお好きなんですね。」
「あなたの先生になった覚えは無いわ。」
「もしかして冗談じゃなかったの!?」
「誰かしら?あなた、部外者が校内に入ってはダメよ。」
「仮にも生徒にそんな事言っちゃだめだろ!クレーム入るよ!PTAとか出てきちゃうよ!」
「嫌ね。PTAや保護者なんて関係ないわ。私を誰だと思っているの?」
……清々しいくらいのクズですね。外道の鑑です。
この人は担任の先生、薙払 悦子さん。
名前からして根っからのサディストである。
彼女はここら一帯の地主の孫で母親が国会議員で父親が日本有数の大企業の社長。
はっきり言って無敵だ。校内で彼女に物を言う事ができる人はおらず、やりたい放題している。
学校としても巨額の寄付金を彼女の父親から貰っているため何も言えないし、容姿が整っているだけにタチが悪く男性職員達はもはや彼女の奴隷と化していて、生徒たちには学校の女王として恐れられている。
あと付け足すとすれば生粋のクズだ。
それと独身。アラサー。
「もう一度繰り返して言うわよ。あなたこれをどう思うかしら?」
「どうって、嫌だな先生。それを書いたのは僕ですよ。ちょっと頭の悪そうな文だなーとは思わなくもないですけど。」
「何をいってるのかしら。頭の悪そうなではなく正真正銘頭が悪いのよ。あなたの頭には本当に脳みそ詰まってるの?ああ、能無しだったわねあなた。」
「しつこいですよ!」
「えぇ頭の中が空白だものね。問題が解けないのも納得だわ。」




