37 最初にして最大、常にあり続ける脅威
「今日は玖来さん家にお泊りです!」
神代 七が変なことを言うのは日常である。
特に彼氏の玖来 烈火の部屋にいる時は、およそ変なことを言わない日はない。
デートを終えて帰宅して早々に七の無茶振りが迸る。烈火は少し難しそうな顔をする。
「そういうことはせめてもっと早く言え」
一応、家族に了承得るからちょっと待て。
それだけ言い残してさっさと両親の元へ。台所仕事中の母親発見。声をかける。
「母さん、彼女がうちに泊まるって」
「駄目、絶対駄目!」
「……お前には聞いてないって」
ちなみに断固反対の態度をとっているのは母親ではなく妹である。居間にいるくせによくこっちの話に混ざるなよ。
で、茶々は置いておいて。
「ええ、別に構わないけど。夕食は外で済ませたのよね?」
「ああ。だからまあ風呂だけ貸してくれれば後は部屋で篭ってるよ」
「そう……孫は早いからね?」
「当たり前だ!」
なんてこと言う母親だ。
「甥も姪も一生涯いらないからねお兄ちゃん!」
「一生はちょっと確約できないわ」
この母親にしてこの娘ありな発言はしなくていいから。
こんな家族に囲まれて、よく烈火は真っ当に育ったもんだ。
自称真っ当な烈火に試練は続く。母親は懇々と諭すように息子へと告げる。
「でもあんな可愛らしい子を捕まえたんだから、絶対逃がしちゃ駄目よ烈火。あんたは硬派気取ってるへたれなんだから、これを逃したら一生独り身になりそうで母さん怖いわ」
「大丈夫、お母さん! お兄ちゃんにはあたしがいるから!」
「それは最終手段だからねぇ」
「どういう意味だ!?」
いやまさかだよね? そんなわけないよね? まさか実の母親が実の兄妹になんぞ思い描いてないよね?
妹は訳知り顔で烈火の肩を優しく叩く。
「兄ちゃん心配しないで、倫理観なんてくだらないもののせいでお兄ちゃんを独りにさせないよ!」
「倫理観はくだらなくないからな!?」
七は七で対応が面倒ではあったが、やはり最悪なのはいつでも家族である。
そう確信した烈火でした。




