25 neko
「わぁ、にゃんこだ、にゃんころだぁ!」
神代 七が変なことを言うのは日常である。
特に彼氏の玖来 烈火と一緒に登校している時は、会話の中にすぐに放り込んでくる。
通学路の道端で我が物顔で歩く猫が発見されると、七はテンション上がっちゃって言語野が猫に変質してしまったようだ。
とはいえ不用意に近寄れば物凄い勢いで逃げ出すのが猫である。七は近寄らずに目を輝かせていた。
一方で烈火はあっさり近づきとっ捕まえる。無駄な運動神経の発揮シーンである。
「ゲット。三味線にしようぜ」
「玖来さん以前、猫派って言ってませんでしたっけ」
「冗句だから」
「猫派がですか?」
「三味線がだ!」
言い合いつつも、七は烈火の捕まえた猫にちょっかいをかける。
恐る恐る頭を撫でて、目を細める様に悦に入る。
「可愛いにゃあ。可愛いにゃあ」
「ナー」
七ちゃんもヤバイくらい可愛いけどね。
可愛い猫プラス可愛い七ちゃんとか、烈火的には天国なんだが。
時よ止まれ、お前たちは可愛い。
こんな時のための文明の利器。
「よし、ちょっとこの幸福に満ち溢れた瞬間を切り取るために写真を撮る」
「なんか女子っぽい発想ですね玖来さん」
「まあ、写メなんて前、七ちゃんの寝顔撮って以来久々に使うな」
「えっ、なに勝手に人の寝顔撮ってんですか、あんた」
「今は置いとけ。ほら、猫が逃げないように持って」
「ちょっ……うわ、猫ちゃん落ち着いて」
ケータイを構えるために猫を七に手渡す。すると猫は暴れてしまってするりと七の手から離れる。逃げ出した。
写真を撮ろうと構えていた烈火は沈痛な面持ちになった。幸せというのは一瞬で奪われるものなのだと悟った。
天国から追放された堕天使の心地で烈火はぼそりと一言。
「……下手」
「ねっ、猫持つのに上手い下手とかあるんですか」
「あるよ。おれが抱えてた時は逃げなかっただろ?」
「ぐぅ」
そんなテクがあるとは、今度教えて欲しい。切実に。
「仕方ない。今度、七ちゃんが猫耳つけてにゃーと言うところを撮らせてくれたら教えてやろう」
「しません」
と言いつつ、ちょっとやってみてもいいかなぁ、と思う七ちゃんでありました。




