23 溜まってた
「――――」
神代 七が変なことを言うのは日常である。
特に彼氏の玖来 烈火が学校で隣の席にいる時は、授業の合い間にある短い休み時間ごとに言ってくる。
しかし烈火はちょっと席を外していて、なんと言ったか聞き取れなかった。
少し遠目で眺めていれば、言い終えてからようやく烈火の不在に気付いて慌てだす七。是非とも真正面からこの目に刻んでおきたかった慌てっぷりだ。
烈火は少々早足で席に戻る。
「あっ、玖来さん、どこに行ってたんですか。なにか言ってから離れてくださいよ、いると思って喋りかけちゃったじゃないですか」
「そこらへんは気配で感じとれ」
「玖来さんではないので無理です。で、私を放り出しどこに行ってたんですか」
「小日向、捕まえて来た」
掴んでいた少年を七の前に引っ張りだす。
それは小日向 圭。先ほどの休み時間に烈火と七に通り魔的に叫んだクラスメイトの少年である。
七は理解すると先ほどの不満も放り投げて興味津々の表情となる。
「おお、それはよくやりましたね。どういう意図か聞き出したかったですからね」
「だろ。で、ほら、小日向、なんでまたいきなりあんなことしたんだ?」
ちょっと乱暴気味ではあったけど、小日向はそこには特に文句はないようだ。
むしろ、ここで発言権を与えられたことに燃え立っている。今こそこれまでに積もり積もった鬱憤をノシつけて返してやるよと絶叫する。
「そりゃ君たちが人目はばからずにずっとイチャイチャしてるからでしょ!」
びしぃ! と烈火と七を指差す。
「授業が終わる度に毎度毎度楽しそうに恥ずかしそうに話しててさぁ! きゃっきゃうふふも大概にしてほしいんだよ! たまに喧嘩っぽいことしてもすぐに仲直りしてイチャつくし! 触れ合いも多いし! ハグは人目のないとこでやれ!
それともなにか、彼女いないボクへのあてつけか! 彼氏彼女いないクラスメイト全てへの爆撃か! ここは爆心地なのかなぁ!」
「「え……なんか、ごめん」」
「ほら、またイチャつく! なんでそんなに綺麗にハモるんだ、赤い糸でも繋がってんの? いいなぁ、ボクなんか君たち見てると首くくる用の糸探したくなるのになぁ!」
うがー、と小日向は血を吐くようにまくし立てる。もう鬼気迫ってて怖い。烈火は若干引いた
そんな悪魔にとりつかれたような態度は、しかしそこで停止。小日向は悪魔祓いが終わったかのように落ち着きを取り戻し、一汗かいたと額を拭う。
「ふぅー、あぁすっきりした。ごめんね、烈火くんに神代さん」
けろっとした顔で笑顔を浮かべる小日向。端整な顔立ちな分、笑顔がきらめいている。
「ちょっと言いたいことが山のようにあってさ、うん、こんなぶつけるように言うのはただ不愉快だったと思うけど許してね。ボクは君の友達だし、だから神代さんとの仲は応援してるよ、心から」
たぶん本音で言ってるんだろうなぁ、と思える眩い笑顔である。
じゃあそういうわけで。と言うだけ言って小日向は去っていった。
残ったふたりは、
「あー、ちょっと気をつけるか?」
「……いえ、気をつけてなんとかなる問題でもないですし」
「それもそうか」
全然こたえていないようでした。




