22 皆の思いを一身に背負って
「玖来さん、ちょっとその飲みかけのジュースを一口頂けませんかね」
神代 七が変なことを言うのは日常である。
特に彼氏の玖来 烈火が学校で隣の席にいる時は、授業の合い間にある短い休み時間ごとに言ってくる。
今回の変なポイントは七ちゃんの手元にもペットボトルが存在し、無論まだジュースが残っている点にある。ついでに言わせてもらえば、購入する際に同じものとの注文だったので同じものである。
つまり烈火の持つジュースは七の持つジュースと違いはないのである。
「なに、なんで。炭酸切れたの? 炭酸入りのジュースじゃないぞ?」
「言わせないでください恥ずかしい」
「あー」
唐突な奴だな。いいけど。
烈火は平然の体で飲みかけペットボトルを渡す。
七はそれだけで嬉しそうにはにかむ。
うむ、眼福だ。
――不意に。
たったった、という足音が近づいてくる。なんだと目を向ければひとりの少年がいた。
「リア充爆発しろ!」
たったった、という足音が遠ざかる。
烈火と七はしばらく沈黙。意味が飲み込めずに呆然とする。なんだ今の。
疑問をそのまま口に出す。
「……なんですか今の」
「さあ?」
烈火もわからん。
突如、接近して叫んで去る。
新手の罰ゲームかなにかか。
もはや意味は理解できまい。七は思考を放棄し、別方向に切り込む。
「さっきの方は玖来さんのお知り合いですか?」
「あっ、ああ。あれは同じクラスの小日向 圭だな。一応、友人」
「……玖来さんの友人って、ああいう人しかいないんですか?」
反論したかった。できなかった。
事実はなにより雄弁であった。
「あと……あの方、制服的に見て男性でいいんですか?」
「おれもちょっと自信ない」
凄く中性的な顔立ちな小日向くんであった。




