大精霊は穴の中
今日は国民の休日、魔物生誕記念日が重なり世間はお休みモードとなっている。家でダラダラしたり、用事を済ませたりとそれぞれ好きなように過ごすのだが、ここダンジョンブラックコンビニは24時間休みなど訪れない
テッテレー♪ガー
「いらっしゃいませー」
「お手紙をお願いしたいのですが」
鋭い角に白いヒゲを綺麗に伸ばし、一の字を真っ直ぐに瞳の中に描く山羊が、レジで一通の手紙を差し出してくる
今日は、お嬢様は一緒ではないようですね
「どちらにお届けしましょう」
「黒山羊さんへ」
「直接便とらくらくちっちゃい便がありますが」
「直接だとすぐに食べられてしまうので、らくらくちっちゃい便でお願いします」
手紙に書かれた住所を見ると魔王城となっている。祖父への定期的な報告書のようですけど、すぐ食べるとかやはり山羊の本能は止められないようで
「かしこまりました。お預かりします」
「お願いします」
しかし、お嬢様がいないと真面目で誠実な執事のようで。チラチラとトイレの方を見るのはやはりハエの本能でしょうか
テッテレー♪ガー
「ありがとうございましたー」
「さて」
手紙にはしっかりと封書がされているが、らくらくちっちゃい便は少し日数を要するため、雨風破損防止の袋へと入れる
「妖精さん、お願いします」
トーテムポールをコツコツ叩くと小さな妖精がパタパタと出てくる
それを眼鏡をクイクイあげながら、下から覗き込む小さいおじさんをガードし、手紙を渡すとまたトーテムポールの中へと入っていった
テッテレー♪ガー
「いらっしゃいませー」
「店員さーんあっそびにきたよー」
「遊びなら帰ってください」
異世界転生者が、スキップで入ってくる。しかし、休みの日にまでここにくるとか他に何もする事がないのでしょうか
「え?なに、その同情する目」
「いえ」
「ねーねー店員さん、前から思ってたんだけどさー、あのトーテムポールって何?」
「何とは?」
異世界転生者がガーゴイルを肩車しながら、トーテムポールへと近づく
「中にちっちゃい人が住んでんでしょー?中どうなってるの?」
「あんまり顔を近づけると刺されますよ」
「え?」
インディアンが槍を異世界転生者の目に向けている。デュクシッ
「ぎゃぼっ!!え、あ、今、一瞬中に青年とおじさんがインディアンに追いかけられてるのが視えたけど」
「気のせいです」
トーテムポールの中は、それぞれの住処へと繋がっている。いわばプライベート空間の為、あまり覗いてはいけない
「えぇ〜じゃあ、下の方は?」
「あまり人の家を詮索するのはマナー違反ですよ」
「なんか、ハゲたおっちゃんがピンクの部屋で片足上げてタイツ履いてんだけど」
ちっちゃいおじさんはからかうのが好きですからね
「で、ここはと・・うわっ!なん?え?」
「どうしましたか?」
妖精の部屋を覗き込んだ異世界転生者が、後ろに仰け反る
「え?や、いや何か除いたら目と目が合ったんだけど」
「あぁ、あの方は覗きが趣味ですから」
「?あの方って?」
「精霊王です」
しかし、休日だというのに覗きに時間をかけるとか羨ましい限りの休日ですね。トーテムポールの先には雑誌コーナーしか見えないのに何が楽しいのでしょう
「ほーん、それでこっちの穴は?」
精霊王にまったく興味のない異世界転生者もある意味すごいですね
「小人さんですね」
「あぁ、小人ねーあいつら俺のセカイでも写真とか動画とかよく写り込んでるけど目立ちたがりやだよねー」
小人にもあまり興味がないようですね。こういう方の家に限って、住み着いてたりするんですよね
「って、あれ?なんかこの部屋みたことある。あれ?俺の部「そろそろ仕事の邪魔はやめてあげてください」」
「ねーねー店員さん、これって俺の世界にも荷物ってとどけられるの?」
「届けられますけど、中身の保証はできませんよ」
「えーやっぱここにくるのに休日学校までいくのダルくてさー、帰りはこっちから自分を荷物として家まで運んでくれたら楽なのにって」
らくらくちっちゃい便に何させようとしてるんですか
「胴体と頭と別々に運んでいいのでしたら、以前デュラハンさんが利用してましたね」
「それは絵面的に元の世界では戻るん?」
「保証はできません」
しかし、ガーゴイルさんも大分おおきくなりましたし、運ぶのは大変そうですね。はたから見たら子供サイズで、しっぽにリボンがついたぬいぐるみを抱きかかえる青年ってヤバそうですし
「ガーゴイルさんだけなら送れますが」
「えーやだやだー!ガーちゃんと離れたくないー」
異世界転生者はしぶしぶ自動ドアから帰っていった
テッテレー♪ガー
「ありがとうございましたー」




