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85/85

第85話 久世志乃

三日後。


三崎物産。


夕方。


久世。


来る。


今日は。


書類。


持っていない。


鞄。


小さい。


「どうした」


私。


久世。


立ったまま。


「組織を離れます」


私は。


少し。


待つ。


「決めた?」


「はい」


前。


保留。


だった。


今日は。


違う。


「本当に?」


「辞めます、と言って辞められる場所ではありません」


「じゃあ」


「でも、私は離れます」


言い直した。


強い。


「何が変わった」


久世。


窓。


見る。


外。


夕方。


普通の車。


普通の人。


「分からないまま、あそこにいるのが嫌になりました」


「分からないから?」


「はい」


私は。


少し。


笑う。


「俺は逆だな」


「知っています」


「分からないなら、止まる」


「私は」


久世。


私を見る。


「分からないなら、見に行きたい」


はっきり。


言う。


今まで。


一番。


久世らしい。


いや。


今。


そう思った。


「危ないぞ」


「知っています」


「客人」


「怖いです」


即答。


「向こう」


「見たいです」


「組織」


「戻るかもしれません」


「離れるのに?」


「必要なら」


「矛盾してない?」


「しています」


久世。


少し。


笑う。


「矛盾してても、私の判断です」


私は。


何も。


言えない。


主任。


思い出す。


正しいから。


ではなく。


自分で。


決める。


久世も。


同じ。


でも。


やり方。


違う。


「俺の補佐」


「嫌です」


「即答」


「あなたの補佐だったのは仕事です」


「そうだった」


「これからは」


久世。


少し。


考える。


「自分で見ます」


「何を」


「向こう」


「それだけ?」


「分かりません」


いい。


答え。


「榊には」


「話しました」


「何て」


「危ないからやめろ、と」


「珍しい」


「そのあと、勝手にしろ、と」


「榊らしい」


久世。


笑う。


少し。


軽い。


「主任は」


「知っています」


「止めた?」


「はい」


「で」


「止まりませんでした」


「華あるな」


「何です?」


「いや」


言わない。


窓。


少し。


風。


カーテン。


動く。


久世。


見る。


私。


「風が祝ってる、とか」


久世。


すぐ。


首。


振る。


「思いません」


「なぜ」


「そんなに親切じゃない」


私は。


笑う。


「覚えてる」


「部下の言葉くらい」


久世。


少し。


眉。


上げる。


「もう部下じゃありません」


「面倒だな」


「知ってます」


二人。


笑う。


それで。


よかった。


でも。


私。


一つ。


聞く。


「なんで、そこまで見たい」


久世。


笑い。


消える。


「怖いからです」


「怖いのに?」


「怖いから」


間。


「知らないままだと、もっと怖い」


私は。


分かる。


でも。


同じではない。


私は。


分からないものを。


分からないまま。


置く。


久世は。


分からないものへ。


近づく。


それ。


危うい。


でも。


強い。


「止めない」


私。


久世。


頷く。


「知っています」


「でも」


「はい」


「困ったら言え」


久世。


小さく。


笑う。


「それ、課長ですね」


「課長だよ」


「もう部下じゃないです」


「関係ない」


久世。


鞄。


持つ。


帰る。


ドア。


前。


止まる。


振り返る。


「富樫さん」


「何」


「分からないから行かないあなたと、分からないから見に行く私は、たぶん違います」


私は。


頷く。


「違うな」


久世。


「それでいいです」


ドア。


閉まる。


部屋。


少し。


静か。


私は。


窓。


見る。


風。


まだ。


ある。


意味。


付けない。


それでも。


久世の言葉だけは。


残った。


分からないから行かないあなたと、分からないから見に行く私は、たぶん違います。


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