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少年のマーリン  作者: 相澤カナデ
第7話 アラディアの死闘 中編

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7ー3



「おおっとー!? エリオット選手の刺突が突然出てきた土壁に防がれたー!」


 ーーこの魔術は、まさか。

 驚きで動きが止まるエリオット。

 これは昨日に少年が試合をしたレイ・フィールドの魔術。土は半円球の形を作り上げ、中の様子が見えないようになっている。

 術師は本来一つの系統に絞って魔術に身を投じるというのに、この少年は予選から今に至るまで様々な術を駆使し圧倒的な才能を観客に魅せていた。

 空中に浮くことから始まり、火力ある炎、見えない斬撃、そして対戦相手の魔術をいとも容易く模倣する若き才覚。正直、嫉妬で狂いそうだとエリオットは少年の実力を心から認めていた。

 だからこそ勝ちたい。

 勝って自身の価値を証明したい。

 刀剣に魔力を集中し威力を引き上げている最中、半円の一部が崩れる。人が出入りできる程の穴から現れたのは少年ーー否、恰幅の良いゴーレムがエリオットに向かって思い切り突進してきた。


「中から出てきたのは何とゴーレム! さあエリオット選手、どう対応するのか!」


 思惑は見えている。

 ゴーレムで時間を稼ぎ、土壁に身を隠してる間に少年は魔術を練るという作戦だろう。


「シッ!」


 渾身の突きを土塊に放つエリオット。

 しかしゴーレムの身体には明確な変化。瞬時に全身を鉱石で纏い、刺突を殺しては勢いのままエリオットにぶつかってきた。

 衝撃で背後の結界まで押される。


「がっ」


 痛みから声が漏れる。ゴーレムと結界に挟まれ息が苦しいエリオットだが、剣だけは手離さずに勝機を掬う。

 挟まれながらも刀身をゴーレムに当てたエリオット。勢いはつけなくていい、この距離ならば触れるだけでいいと己が魔術を信じる。

 それは十年の重み。

 研鑽の末に辿り着き、繰り出されるは、


剣威たる一閃(レイ・エルドラ)!」


 眩い光が会場を支配する中、鉱石は粉々に砕け、吹き飛ばされた土塊は機能停止し、地面に横たわる。

 遠距離の刺突に、触れるだけでも致命傷の刀身。

 光輝たる剣威に死角はない。

 実況と観客の盛り上がりを耳にしながら、土壁に向けての刺突を素早く行う。威力を最大限に高めたそれは容易に土壁を破壊し、


 ()()()()()()()ことを目にして、エリオットの思考が停止する。


「こっちだ」


 声のした方へ目を向けたときにはもう遅い。腹部に衝撃が走っては再び背中と結界がぶつかる。呼吸ができないほどの痛み、だがまだ剣は握ってーー

 ゴーレムによる、怒涛の殴打。

 凡そ魔術師の戦いらしくない光景に、実況も観客も唖然としていた。


「ぁ……」


 膝から崩れ落ち、剣を手離す。

 光輝たる剣威が、解ける。

 痛みと困惑の中で術式を維持することがエリオットにはできなかった。


「なにが、どう、なって……」


 意識を失う直前、ゴーレムが瓦解し、()()()()()()()のは銀髪の少年だった。

 ……そうかと、ひとりでに納得するエリオット。

 土壁が半円の形を象っていたのには意味があった。それは観客からも中の様子を見えなくする為。客の反応でエリオットがゴーレムの正体を察することないよう、少年は会場にいる全員を騙していた。

 試合中、土壁の中には術式を展開しようとしている少年を想像してばかりだったエリオット。動きを停めたゴーレムには見向きもせず、焦って刺突をし、隙を見せてしまった。

 勝負は決した。

 敗北を認め、目を閉じる。


「二回戦第一試合! 勝者、マァァーリィィーンッ!」


 ーー見事だ。

 声に出して賛辞の声を掛けたかったが、その前にエリオットの意識は途切れた。



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