5ー12
風で靡く銀の髪。
回顧するは、円卓の間で相対する一人の女性。長い栗色の髪、つぶらな瞳、しかし魔物を前にすれば果敢として立ち向かう円卓の魔術師が一人。
「ロウィーナはヴォーティガーンのことをよく知っていた。俺にアイツとの遣り取りを楽しそうに話していて……いつの間に仲良くしていたのか、そのことすら俺は知らなかった」
少し離れて歩き続ける二人。
歩調を合わせ、互いの表情は見えないまま話が進んでいく。
消えない過去に耽る。
その結末は、どうしたって変わらない。
「円卓の歴史上初の女性魔術師、ロウィーナ。彼女は同じ円卓の魔術師……トリスタンに殺された。どうして殺したのか。その理由を明らかにする前にヴォーティガーンは牢の見張りを手にかけ、トリスタンを殺し、そしてーー俺に殺された」
一息吐けば、静寂。
ありのまま起こった出来事を読み上げるかのように話すマーリン。自分がいまどのような顔をしているのか彼には分からない。
「円卓を滅ぼす。そう口にしたアイツを止めるには、もうそれしかないと思い込んだ。復讐を果たした筈なのに、どうしてそんな考えに及んだのか、それすらも考えずに俺は殺した。……守りたかった故郷は守れなくて、家族のように過ごした友もこの手で殺めた。リアの言っていた通りだ。俺は生きていて誰とも分かり合えたことがない。ひとの心が分からない、人間のフリをした化物。それが、マーリンという魔術師ーー」
足を止める。
二つの足音が止む。
村の外れで、立ち止まる子供と女性。
振り返る少年。
黙って話を聞いていた彼女の目からは、一筋の涙。
拭うことなく、頬を伝って乾いた地面に落ちる。
「さっきはありがとう、カナメ。マーリンはマーリンって、言ってくれて嬉しかった」
代わりに泣いてくれている気がして、彼は思わず笑みを溢す。
「俺は、いままでひとの気持ちに向き合ってこなかったからな。だからカナメ。これからは思ってることを言葉にしてほしい。俺はきっと、気付くことができないから」
頷くカナメ。近くにあった背もたれのない腰掛けに向かって「座ろう」と少年は促す。互いに腰をおろして「暗い話をした」と彼は言う。
「いま話してくれたのは」
僅かに嗄れたカナメの声。
「さっきの人に、出会ったから?」
「……ああ、そうだ。きっとリアに出会ってなければ、このことは黙ってたと思う。……失望したか?」
「……どうして?」
「友の命より、職務を選んだこと」
「絶対にしない」
強く言い切ったカナメの言葉に、顔をあげる少年。
「しないよ。だってわたしは、マーリンに救われたんだから。だから何を言われても失望なんてしない。わたしはマーリンのことを、」
「…………」
「……そ、尊敬、してるから!」
「……そうか」




