死神と話す
※人称描写を修正しました。
私は今、何所に向かっているのだろうか。
突然冷たく暗い所に落とされ、沈んでいく。
なぜこうなったのか……。
儀式とか何かで幼さ残る妹と一緒にこの格好にさせられて、森の中にある池の前まで火を手に持った列団が私達を連れて行った。
今はもう到着した所がもうあんなに高いところに見える。
ふと隣では双子の妹が闇の彼方に吸い込まれていく事を確認した。私も底の見えない水に沈んで、ただの泡となることを悟った。
次、自分がいたのはこの真っ白い世界。一瞬どこか分からなかったが、私達を沈めたあいつらがやりたかったこと。世界的に象徴される神と肖られた一人の男の聖書にあったある記述がある仮説を立てた。
その仮説が横切ったとき、この世界についても、私が今から何になるのかを納得した。そこで私は逃げ出したんだ。そのまだ視界に入っていない脅威から、水に浸かって重たい体を奮い立たせて。
ずっと走り続けても、その場所で足踏みしているような、そんな錯覚が全身を固めていき、気づいたときは私の体を闇が飲み込んでいた。
あの時の“あいつ”の顔とは……。
果てしなく大きなあの!
死神は、目を大きく見開いた。
初めはぼんやりと。あのかなり見飽きた白世界が広がっている。
体中が熱く、脇の下や額に汗をかいているのがわかった。
酷い夢だ。
かなり時間が経っている筈なのに、まだ体に覚えている。
あれからの意識は朦朧としている。
体がずっと機械的、同じように動こかされた。視界にいつも蒼い炎の残像が出来るほど捕まえて、あの場所に持って行った。
しかし見る内容は同じでも、こんな欲が満たされず湧きでてこない息苦しい世界でこんなに眠ったのは初めてだ。どこからか涼しい風が吹いてくる。
それは突然、何も満たされない空っぽの心に光が差し込んでくる亀裂が走ったとき、そこから体が吸い出されたように感じた。
「悪い夢を見たか。」
声がした先には、全身の体格に密着した黒い衣服を着た男が団扇で私の方に向けてゆっくりと仰いでいた。その男の目は優しい目で見ていた気がする。
久しぶりの“人間”を見て、不意に涙が流れているのを感じた。
こんな熱いものが吹き出す感情になったのは、彼女にとって、いつぶりだろうか。
抑えつける事が出来ず、ぐるぐると自分の中で回り続け、心が戸惑い続ける。
「えっ。俺何かした?」
当然、彼女の中で何が動いているのかを知るよしも無いので、隣で団扇を扇いでいる黒男も慌てている。
「え……いやいや……私何もしていないよね。」
「…………。」
「寝起き直後だから、顔を見られたくない……とか?」
「………。」
ずっと俯いたままで返事が返ってこない。
これが黒男の動揺をますます助長させる。
何処かでよく遭遇する痛い沈黙の空気に自分が潰されそうになりながらも、声をかけようとする優しい紳士? のような振る舞いをぎこちなく振る舞うのは微笑ましい光景である。
当の本人達はまだ気づいていないが、この錆び付いた沈黙の白世界に二人の間の空気が暖まりつつある。
二人同士の緊張した状態が少し冷静に落ち着いて見れるようになってくると……。
「あの……だからさ……まいったな。」
黒男はとても困っている。
「……ぷっ……ククク……。」
先に頬を緩ませたのは少女の方だった。
「もっと、良いこと言えないの?じじい。」
「むっ。これでもまだ三十五だぞ!そっちこそ人の顔見て泣いたと思ったら急に笑い出して失礼だぞ!」
「いや。三十代だと普通におじさんじゃん。大丈夫。おじさん私の認識は間違っていない。」
「だから、誰がおじさんだと……その通りだよ!」
否定しないのかよ! というツッコミが轟いた後、二人の大きな笑い声がこの世界中に響き渡ったような気がした。
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