決戦! イシャララ討伐
イシャララと再戦です。転移魔法とか、異世界転生者のパーティーにいた流石殿下です!
※新作「異世界物語は面白いけれど、流石に一世代時が過ぎれば現地弟子が台頭する」を準備完了後、投稿いたします。第一章は連日三話更新予定です。合わせてどうぞ。
「で、ボットの転移魔法で元バルジャック王国の宮殿にあった池に飛び込んでここに戻ってきたんだマルン」
二週間後、ミフは冥界にいた。
ほとんどの時間は、装備品の用意とミフやジョーの鍛錬に割いた。
二人ともセンスは悪くないので、最低限戦えるものに成長するまで時間はかからなかった(魔法を初めて使った時は、二人ともはしゃいでいた)。
すっかり忘れていたが、この世界にいた証拠である地面の欠片が役にたった。
イシャララに身体中打ち込まれた釘の重さで沈むといけないからと、それを粉砕してそいつで染め上げた真っ白なブーツを履いていた。
この真っ白な冥界に戻ってきて早々、ミフの目の前には前より絶大に強くなっているイシャララの魔力に影響を受け、黒いオーラをまとう死神マルンの姿があった。
すぐ隣にイシャララもいたが、邪魔されたくないので、ジョーとボットに頑張って貰っている。
急造のコンビだが、息が合っているようでかなり善戦している。
こっちはこっちで頑張らないといけない。
攻撃や言葉に対して、かなり変貌しているマルンには効いておらず、峰打ちで杖をマルンの手から離し、刀を投げ捨てて、取っ組み合いになる。
何とか馬乗りになってマルンの動きを封じ、額越しにずっと追放された後の話を語り続けていた。
「すまない。あの時、助け出せなくて。長い間待たせてしまった。」
再会してから、何回この言葉を言ったのだろうか。
かすれるほど小さなマルンの声が面の奥から聞こえてくるような気がするのに、かなり人魂の記憶に沈み込み、何千万の人の悲鳴を常に聞き続けされているところから引き上げるのは容易でなかった。
死神は、人魂を食らう。
それぞれ全てのものに残留している
「うーん。そんなことしたらだめだよ。というか出来ないよ。」
無視する。あの笑顔のために。黒い闇から見える小さな光をかき集めて叫び続けた。
「戻ってこい!」
骸の面を突き破り、マルンの素顔を引き出した。
「ミ、フ……」
「よし。意識が戻ったな。これから脱出するぞ!」
「で、でも……」
ちらりと横を見た。イシャララは、二人相手と格闘しつつも、こちらを見てきて目があった。
その内、一人が何かで身体を貫かれ、倒れた。
「心配ない。友人達が何とかしっかり倒してくれる」
「う、うん」
フームの杖で、この世界に穴を空けて脱出する。
「頼んだぞ!」
直後に、二人の大きな返事が聞こえた。
「たく。私をイライラさせて。懲りないのかな。同じ奴に斬られたのは二回目だ。」
二人が杖で穴を開け、脱出した穴をイシャララは見ていた。手には大きな気の玉が出来ていた。
「私がこの世界でないと生きていけられないし、出られないとは一言も言っていないぞ。」
「たく。しぶといね。」
後ろからの声の主に右腕を斬られた。イシャララは甲高い悲鳴を上げた。白い世界中に響くほどの。
「本当に神様って単純だね。まるで人間のようでどん欲だな。お前は気持ち悪い性癖の。」
「くっ。お前らと一緒にするな。俺は天下のイシャララ様だ。この愚民ども!」
「本体の面影のない餓鬼がよくうめく。」
ミフがこのイシャララ本体の埃みたいな欠片から集まって出来た、鼻くそみたいな分身に出会う前、この男はやはりミフと同じく爆発によってこの世界に来ていた。
「弱い奴程よく吠えるというものだが、その通りだな。」
「くっ。黙れっ!」
残った左手で、ミフにも行った何千本の釘を生成し始めた。コンマ一秒未満で左腕を切り落としたが。
「アア!!クソッ。イテェ!チクショー!」
「俺が思うに、神様って理想であり、人間であり、単純だと思うんだよ。」
わざと苦しむ時間を男は延ばしている。その顔は笑って楽しんでいるように見えた。
「オマエ!コノヤロー!クッ!」
そんな死神をジョー・サカタは見下ろした。
「俺の答えはこうだ。人間は理想を追い求め、理想に達してもその先を追い求める。そんなことを人間性とも言えるし、追い求める一直線の姿は単純ともくくれる。」
「ガホッグフッゲホゲホ……。」
「お前に対してはあそこまで友達をボコボコにして、理屈ごだごだ付けずにただ単純に、黙ってられるかという単純な俺の感情だ。覚悟しろ。死神。」
ジョーは刀を振り上げた。
「ド…ドッチガ“シニガミ”ダッ!!」
ドン。と棒が地面まで通過し終わったとき、バラバラと積み上げた積み木が一斉に崩れて消滅した。
「おまえは、ただ死を見守るだけの死神(象徴)だろ。」
ジョーはそう口にした。
「大丈夫か。ボット」
「何とか。本当にチート能力使っていないのですか?」
倒れていたボットをジョーは肩で抱え、ゆっくり歩いて行く。
「こんなことは、かなりあったのですか?」
「そうだな。変に力が良い方向へ向く時もあるし、理不尽な目にあったこともある。今回は良かったと信じたい。」
「そうですね。ただ……彼に聞きたいことができました」
「イーゼって奴にか。世界の英雄とか言われている人物がどういうものか、楽しみだな」
「……」
その言葉にボットは黙った。
「それにしてもありがとうな。」
「何ですか? 突然」
「いや。ミフとあの死神を相手にさせて、意識を取り戻したら先に冥界から脱出させる作戦で」
「あれは、ミフさんがそうしないといかない流れでした。ビジネスです。その条件に特に問題はありませんでした」
「良かった。あいつに、これから生きていくために必要なプレゼントをあげたかったんだ」
「プレゼント?」
「あいつは、人間関係の喪失が多い人生だからな。肉親も恋人も……。だから、死神に会いたいっていう願いの実現の手伝いはしたかった。そもそも前の世界では、俺がミフを死に追いやった形だ。」
「似たもの同士ですね。恩はあるとは言え、ミフさんはブノの騒動を最後まで付き合った」
そうかな? 全く違うと思うけどと、ジョーはゲラゲラと笑った。
「俺も、かなりフィクションで合うような理不尽の塊と出会ってきたけどさ。異世界転生者っていう。それこそボットから聞く“世界の英雄”の力の理不尽さは、ずば抜けて凄まじいなって。」
「つまり、何が言いたいんですか?」
「つまり“世界の英雄”の存在に妬いているのだろ? 異世界出身者全体かもしれないけれども。それが親友だとしても、思うことが沢山ある。それは全く間違っていない。だから、コンプレックスを解消するため。中心となってイシャララの討伐。力になりそうな俺たちを誘った。」
「物凄く言いたいことをストレートに言いますね。ジョーは」
「ガチなことは、直接伝えるタイプだ。他が下手くそとも言う。」
二人とも笑みがこぼれた。
「もっと自分にご褒美をあげても良いと思うぞ。」
「そうですね。ジョーみたいな悪い異世界出身の人物に対抗する騎士団でも結成しますか」
「怖っ。勘弁してくれよ……」
二人は、先に脱出した男女の空けた穴を目指した。
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※お知らせです。次の更新分で最終回。完結となります。今しばらくお待ちください。