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主人公は真っ白な世界に転移した

ここから本文です。よろしくお願いします。

※人称描写を修正しました

「えっ。ここ何処?」

 黒男は立ち尽くした。

 目の前には、バケツごと塗料を流し込んだような世界が広がっている。

 少し前の記憶を辿ると、爆発に巻き込まれ、光に包まれて絶対召されたな実感。

 現世とはお別れだと覚悟したことの記憶。

 と、サラリと壮絶な最後を遂げていることも思い出し、驚いている。


 短く切った黒髪に東洋人特有の肌と瞳。

 そして全身を覆う、防弾仕様の黒い戦闘スーツ。

 両手に工業作業用手袋。右手首には黄色い輪っか。

 左手首には腕時計を着けている。

 歳は見た目、二十歳前後(実年齢30代)で、芯の通った好青年である(本人談)。

 そんな雰囲気。

 そして背中には刀が一本背負っていた。



 見た目、外国人が大好きな忍者もどきのコスプレをした黒男(そのまんまと言ってはいけない)は、少し混乱しつつ、ずれている頭をフル回転させて取りあえず答えを出した。


「ここって、地獄? 冥界……ということか…。」

 死んだ。という感覚は残っていた。

 ということは、死後の世界に初めて来たことを自覚する。

 ここまでは疑心暗鬼なれど、普通の答え。


「閻魔大王とかハーデス、アヌピスに会えるということ!ヤッホー!」

 こんなに早くプラス思考に事を進める一直線の単純な野郎である。

「どちらかと言えば、ネット小説みたいに異世界転生するときに、神様からの説明を聞く感じの時か。知らないけど」

 この時は、彼はなぜかご機嫌だった。

 身につけている格好も趣味に合うモノだし、記憶にある異世界物のお約束に近いからそうだと思った。


 半分は合っていたが、その時は知る由もない。


「よし。手がかりはある筈だ。この不気味なくらいまで真っ白い世界の何処かに。」

 白い絵の具で満たされている。と思えるほど地も空も白で埋め尽くされている。





 もう一度自らに男は言い聞かせた。

 色が無い世界にいた。

 おかげで異世界から来た異物…もとい俺の姿がよく目立つ。

 そして他の存在も目立つ訳で、遠くにある黒い点を見つける。

 他に身に着けて落ちているものがないか足元を確認し、走り始めた。


 ただ白いだけで他にこれといった物体がない世界だ。

 自分の場所と遠くの場所との遠近感が取りにくい。

 しかも、白で光がよく反射するのでとても目が疲れる。

 スマホのナイトモード(みたいなもの)があれば良いが、そういう能力は備わっていないようだ。

 走り続けている筈なのにランニングマシンみたいにその場に止まりながら、足踏みしているような錯覚を度々おこした。

 それに、全速力で走る有酸素運動を続けているはずなのに、息が苦しくならず脚が疲れないのも不気味だ。

 この感覚のギャップが、何度も精神からくる体のダルさを感じた。


  なるほど。

  これがチート能力というものだ。

  恐らく身体能力強化系。早く慣れなければ。

  神様にまだ説明されて貰っていないけど。

  だが、この状況が続くのは辛い。

  このように分かることを箇条書きにして、頭に浮かべていった。

 それでも、ただひたすら目の前の小さな黒い点に向かって十時間走り続けた。



 黒い点が数百メートルまで近づいたとき、その姿をしっかりと確認することが出来た。

 頭から黒いパーカー。

 黒いヒラヒラの白レースの入るスカート。

 フードを被る全身が、一つの黒いバラのような異様な雰囲気を出していた。

 後ろからだとよく確認出来ないが、先に銀光りする棒の様なものを持っているのも確認できた。


  間違いない。“死神”だ。断定!

  こんな“白だらけのよく分からない世界”で!

  たぶん死んだと思う俺の目の前に!

  “全身黒衣装で何か長いもの持っている奴”は死神に違いない。

  フードの中には骸があって、黒い布を翻しながら全身を手に持った鉞で一気に首を刎ねる。 

 

 と、自分の頭に入っている死神のイメージを整理した。


  これから何をするか考えてみた。

 曰くやる時はしっかりしますと言わんばかりに黒男はシリアスモードで考えているようだ。



  待てよ。

  あれが死神だったら俺は普通にやられるよな。あいつ神だし。

  普通は、死への門をつかさどる番人的な存在だよな。

  今まで神話ネタはゲームの中だけで、元ネタとかあまり興味なかったけど、こんな訳の分らない。

  目が痛くなる白世界でごく普通の存在がいるわけない。

  というか、命が獲られるよな。今生きているのか分からない状態だが。

  もう既に詰んでいるようなサバイバルモード?


  だったらどうする。このままストーカーを続けるのは限界がある。

  刑事の親友から教わった尾行の手順を実践しているが、さっと姿を隠せるような建物もない。

  気づかれるのは、時間の問題だ。



「誰?」

 近づき過ぎたことに後悔した。

 頭に項目を並べすぎたのがいけなかった。


 目と鼻の先でフードの中の骸がこちらの顔をのぞき込んでいた。

 黒い衣に包まれている体は自分と同じくらいの体格で、顔の二つ対になっている穴の奥には紅い炎が一つずつ。それは俺の体の像を燃え尽くす勢いだった。


 固まってその場を動けない男の体に、頭から腹まで一閃の光が入る。



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